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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校イベントといえば文化祭ですか!? その2

 『文武祭』とはなにか。


 それは清駿高校の文化祭と体育祭のことである。


 清駿高校の少し変わっていて、体育大会と文化祭が3日にかけて行われる。


 具体的には、1日目と2日目が文化祭、3日目が体育大会となっている。

 

 名前は演劇や合唱など文化祭の『文』と、リレーや団体競技など体育祭の『武』、そして校訓の『文武両道』という意味から来ているそう。


 まさに名前の通りだと思う。


 神野寺さんとお互いに自己紹介をした後、校内を案内してもらった。


 一歩、中へ足を踏み出すと、そこは学校とは別の世界のようだった。


 屋台のようにずらりと並んでいるのは、焼きそばやわたあめなど生徒の出し物。

 

 どこもお祭りの出店に負けないくらいにクオリティが高い。


 なによりそれを売る生徒達の熱気がすさまじい。


 中学校の文化祭とは比べ物にならないくらいに、皆が真剣に参加している。


「す、すごいですね……」


 小学生の作文みたいな感想しかでない。


「そうだね。うちの学校は団結力があるというか、ノリがいいというか、何事にも全力で取り組む人が多いんだよ」


 特に学校行事には積極的だね、と神野寺さんは苦笑した。


 なるほど。清駿高校の生徒は勉強ができる頭のいい人ってだけじゃないんだ。

 

「まあ授業中に寝たりするくせに、学校行事や部活には積極的に参加する長澤さんみたいな例外もいるけどね」


 神野寺さんは芝居かかった動きで肩をすくめた。


「優等生の分厚い猫を被る陰険腹黒ストーカー野郎にいわれたくねえよ」


 聞き覚えのある声の方に振り替える。


 視線の先にいたのはやっぱり葉ちゃんだった。


 遊ぶ時の私服とは違って、あんまり見たことのない清駿高校の制服姿は少し新鮮だ。


 今日も髪をポニーテールにまとめている。


 でも、なぜか不機嫌そう。

 

 神野寺さんに私達を、迎えに行かせるくらいだから、仲がいいと思ったんだけど違うの?


「僕は別に長澤さんと違って猫を被っているつもりはないよ。ただ優等生の方がいろいろと便利なだけだよ」


「やっぱり腹黒なんじゃねえかよ。なおたん、こんなやつのどこがいいんだ?なんか弱みでも握られてるのか?」

 

 葉ちゃんは不機嫌そうな顔のまま、後ろを振り返った。

 

「確かに陸は腹黒なところがあるけど弱みなんて握られてないよ?」


 葉ちゃんの影になって気がつかなかったけど、私と同じくらいの身長の人が立っていた。


 全体的に細くて華奢な感じがする。


 丸くて大きな目と小さな顔もあって、小動物みたいで庇護欲をそそられる可愛い人だ。


 やや高い位置で結ばれたツインテールがすごく似合ってる。


 清駿高校の制服を着てるし、葉ちゃんと仲がいいみたいだから同じ学校の友達かな?

 

「へえ……奈緒は俺のことそんな風に思ってたんだ。知らなかったな」


 ひんやりとしたオーラが神野寺さんの背後から漏れ出している幻覚が見えた。


「な、なによ!本当のことじゃない!それに意地悪だし!」

   

 そう感じたのは私だけじゃなかったらしい。


 奈緒さんはびくりと肩を揺らしたものの、強気にいいかえした。


 その姿は蛇ににらまれた蛙……。


 いや、大型犬に立ち向かうチワワか、肉食動物に追い詰められる兎みたい。


「ふうん。奈緒はそんなに俺にいじめられたいんだね。わかった。後でたっぷりナカセテあげるよ」


 神野寺さんはご機嫌に笑った。

 でも、目は全く笑ってない。


 後、なかせるってどういう意味なんですか!?


 そこを|kwsk(詳しく)!


「なおたん、こんな腹黒変態野郎は焼却炉にぶちこんで俺達と楽しもうぜ?」


 葉ちゃんは奈緒さんを庇うように前に立った。


「長澤さん、約束が違うよ。その人達を案内する代わりに俺に奈緒を渡すって話だったよね。ついさっきもう忘れたの?」


「どう考えてもこんな腹黒野郎よりも俺達と回った方がずっと楽しいだろ」


「先生に信頼されてる俺のおかげでお友達が校内に入れたのにそんなことをいうの?君って何様のつもりなの?」


「ハッ!先生はお前の本性を見抜けてないだけだろ。いっちゃんを連れてきたことは感謝する。けどそれとこれとは話が別だろ」


「うわあ、長澤さんにお礼をいわれるなんて明日は台風が来るね。理解力がないの?そういう交換条件だよ」


「お前こそ理解力あるのか?俺はなおたんがお前と回りたいっていうならっていったんだ。お前よりなおたんの意志が最優先事項だ」


 す、すごい舌戦……。

 口喧嘩とか可愛いものじゃなくて、もう言葉と言葉の戦争だよ。


 驚いてか、向井様達もなにもいえない。


「奈緒の意思なんて聞くまでもないよ。ほら奈緒、早く行くよ」


「勝手に決めつけるなよ。なおたん、俺達と回ろうぜ」


 二人から手を差しのべられ、奈緒さんは困ったように2人を交互に見る。


「えっと……私は、今日は、り、陸と回りたいかな……」


 奈緒さんは頬を赤くしてうつむいた。


「素直ないい子にはご褒美をあげるよ」


 神野寺さんはどや顔を見せて、奈緒さんの手を繋いでどこかへと向かう。


 恋人繋ぎなんて熱々ですね。


 これがほんとのリア充か……。


「なおたん!襲われそうになったら叫ぶんたぞ!」


 葉ちゃんはその顔を悔しげににらむ。


「あの……葉ちゃんは神野寺さんとどういう関係なの?」


「他人以上知人未満」

  

 葉ちゃんは真顔で即答した。


 うん。すごくわかりやすいね。

 つまり他人って思いたいほど、嫌いな人なんだ。


「そんなことより久しぶりだないっちゃん達!1人知らない顔があるけどいっちゃんの知り合いか?」


 葉ちゃんとはお花見で会った時以来だ。


 ネットとかではよく話してるけど、実際に会って話すとなんか違うように感じるね。

 

「そうだよ」


「憩ちゃんの彼氏の筧寛です!」


 ゆーくんってば、いきなりなにをいいだすの!?

 

「マジか!こんなイケメンを連れてくるなんていっちゃんやるな!」


 葉ちゃんも悪のりしないで! 


 私に彼氏なんてできるわけがないのは葉ちゃんもわかってるでしょう!?

 

「まあ真偽の方は置いといて。まだ自己紹介してなかったよな?俺の名前は長澤葉だ。よろしくな」


 葉ちゃんは向井様達へ笑いかける。


「なにがよろしくだ!拓也さんに喧嘩売ったくせによくそんなこといえるな!」


 城野様が眉をつり上げて、葉ちゃんを指さした。


 確かにお花見の時、盛大に向井様へ喧嘩を売ったね。


 向井様が手を出さないか冷や冷やしたよ。

 

「あの時は悪かった。いっちゃんがいじめられていると思ってたからさ。この通り謝るから許してよ、りょーちゃん」


 葉ちゃんは真面目な顔をして両手を合わせて、軽く頭を下げた。


 でも、目がいたずらっぽく輝いてるよ!?


「りょ、りょーちゃん!?」


 可愛いあだ名をつけられた城野様は驚いたように目を見開いた。


「他には拓様、みーさん、蓮兄貴、ゆーゆーだな」


 向井様はあきれたように眉をしかめ、関元様は苦笑いをされた。


 葉山様はどうでもよさそうで、ゆーくんは「革命アニメのヒロインみたいだね」とのんびり笑う。


「テメエ!拓也さん達を変なあだ名で呼ぶんじゃねえ!」


 城野様は顔を真っ赤にして、葉ちゃんに怒りをぶつけた。


 気持ちはわからなくもないけど、無駄だと思いますよ。


「別にいいだろ、りょーちゃん。じゃあ時間もないし、さくっと校内案内してやんぜ」


 葉ちゃんは全く気にした風もなく、歩き出した。


「よくねえよ!」

 

 城野様が駆け出して葉ちゃんの隣に並んで怒鳴るも全く効果がない。


 葉ちゃんは友達だと思った人にはあだ名をつけるんだよね。


 1度あだ名をつけられると、もう訂正してくれない。


 でも、りょーちゃんって城野様にぴったりなあだ名だよね。


 なんて思いながら、葉ちゃん達の後をついていった。


 新キャラその2です。


 りょーちゃん、ってあだ名可愛いですよね。

 

 

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