転校生はトラブルメーカーですか!?その5
不定期更新ですみません!
仕事が忙しく来月まで不定期更新が続きそうです。
「……ん。……ちゃん。ねえ、起きて!憩ちゃん!」
誰かが私を呼んでる。
ぼんやりとしたまま、目を開けると小学生五年生くらいのゆーくんが私を覗きこんでいた。
「やっと起きてくれた。ずっと呼んでたのに憩ちゃんってばひどいよ」
ゆーくんは不機嫌そうに頬を膨らませ、顔を背ける。
うん。ゆーくんはこの頃からあざとかわいいかったんだなあ。
あれ?私達ってもう高校生じゃなかったっけ?
体を起こして周りの風景を見れば、二人でよく遊んだ近所の公園。
私が寝ていたのはベンチでゆーくんはその前に立っていたみたい。
体を起こすと滑り込むように隣に座る。
「僕と憩ちゃんはまだ小学生だよ?」
ゆーくんはきょとんとした顔で首を傾げる。
ああ、そうなんだ。
それより、とゆーくんは距離を詰めた。
「ねえ、憩ちゃん。憩ちゃんはいつまで僕と一緒にいてくれる?」
いつになく真剣な顔でゆーくんはいった。
なんでそんなことをいうのかわからなくて。
でも私はわからないなりに真剣に答えた。
「ずっと一緒だよ。だってゆーくんと私は友達だもん!」
私とは反対にゆーくんの顔は暗くなる。
「……憩ちゃん、友達はずっと一緒にいられないんだよ。特に男の子と女の子はいつか違う友達が出来て仲良くなくなっちゃうんだってお母さんがいってた。僕、憩ちゃんと一緒じゃなくなるのいやだ。ずっとずっと一緒がいい」
ゆーくんがあんまりにも悲しそうな顔と泣きそうな声でいうから、私まで同じ気持ちになる。
確かにゆーくんはかっこいいし、勉強も運動も出来るからすぐに友達が出来るだろう。
でも私は何もできないからゆーくんがいなくなったら一人ぼっちになってしまう。
一人ぼっちは寂しくて、悲しくて、苦しくなるから。
「ゆーくんがいなくなるのいやだ」
泣くのを耐えるために無意識にワンピースを握りしめていた両手をゆーくんはそっと解いて、宝物を触るみたいにそっと引き寄せた。
「憩ちゃんが同じ気持ちで嬉しい。ねえ、憩ちゃん。僕と家族になってよ。そしたらずっと、僕と憩ちゃんがおじいちゃんとおばあちゃんになっても一緒にいられるから」
期待と不安が入り混じった視線を受けながら私は……
けたたましいスマホのアラーム音で強制的に夢の世界から現実に引き戻された。
時刻を見れば、寝る前にセットした通り。
平日の今日は学校だ。
なんか懐かしい夢を見ていた気がするけど、ぼんやりとしか思い出せない。
体を起こして眠気を吹き飛ばすために背伸びをすれば、ぼきぼきと骨の鳴る音がする。
気が済んだらベットから降りて一階へ。
洗面所で顔を洗ってご飯を食べる。
今日は和食でご飯と味噌汁と焼き魚と和え物と漬物。
種類が多いのは癒詩に合わせたメニューだから。
私の倍は軽く食べるのに全く太らないんだから現役運動部の食欲は恐るべし!
その癒詩は部活の朝練ですでに家を出ている。
そうでなくても真っ青な顔で帰ってきてからここ二週間くらいまともな会話をしていない。
理由を聞いても答えてくれない。
翌日に関元様から癒詩のことを聞かれたから事情を知ってみたいだけど、複雑そうな顔をしてやっぱり答えてくれなかった。
うーん。二人は一体何を隠しているんだろう?
珍しく悩みながら食事を終えて、歯磨きをして制服に着替え、学校へ行く準備を済ませて、家を出て鍵をかけた。
「憩ちゃん、おはよう」
声に振り返るとまるでそこにずっといたみたいなタイミングでゆーくんが待っている。
毎朝、幸せそうな笑顔つきで。
「ゆーくん、おはよう。待たせてごめんね」
隣に立って歩き出すとゆーくんも一緒に歩き始める。
これがゆーくんが転校した次の日からで、断ってもゆーくんは少しでも一緒にいたいからといって譲らない。
そのまま学校に行く。
「おはようございます、姐さん!」
校門の前で城野様が駆け寄って挨拶してくれる。
隣にいるゆーくんを毎回無視することには苦笑するしかない。
「おは」
「憩ちゃん、遅刻なんてしたらいけないから早く教室に行こう?」
ゆーくんも目の前にいる城野様を無視するけど。
それだけじゃなくて、直ぐに教室に行こうとするけど。
「姐さんを困らせてないでくださいよ!」
「俺の憩ちゃんを困らせているのは君達の方でしょ?それよりいい加減に馴れ馴れしく話しかけるのやめてくれる?」
お互いに睨み合って、いい争いが始まる。
なんでそこで張り合うかなあ……。
周りの視線が突き刺さる。
校門の前ですみません!
二人のいい争いは四分一様か、関元様が通りかかるまで終わらない。
ちなみに葉山様は傍観者で、向井様は興味なさそうに通り過ぎて行く。
朝から疲れながら教室に行って、授業を受けばあっという間にお昼休み。
城野様がやって来て、一緒にご飯を食べる。
またいい争いになるけど、どうしても二人は私と食べたいらしい。
そこまでして一緒に食べたいといわれると嬉しくなる。
でもおかげで大変気まずい食事である。
昼休みが終わるとまた授業があって、眠気と戦ってる間に放課後。
「憩ちゃん、今日はバイトの日だね」
荷物をまとめ終わると先に済ませたゆーくんに声をかけられる。
向井様達に別れの挨拶をして、教室を後にする。
靴を履き替えて学校に背を向ける。
バイト先までの道のりはゆーくんがいてくれるからか、とても短く感じる。
「今日もバイト頑張ってね!」
応援と笑顔をもらって更衣室へ。
「最近、あの男とよくいるが恋人か?」
途中でヴェルさんと出会い、世間話をしていたら途中でそんなことをいわれた。
「違いますよ。友達です」
「俺にはそうは見えないが……」
「よくいわれますけど、ほんとに違いますからよ」
「……そうか」
ヴェルさんはなぜか納得いかない顔をしていたけど、それ以上なにもいわなかった。
着替えている途中でスマホを忘れているとこに気づいた。
店長にワケを話して、学校へ取りに戻ることにした。
それがまさかあんな結果になるなんて、その時の私は想像もしてなかった。




