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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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トラブルメーカー?

 正義視点。

 ※ナイフは素手で折れませんので、絶対に真似しないでください。


 いつの間にかブックマークが80件を超えてました!


 最近は更新不定期にも関わらず、お読みいただきありがとうございます!


 これからも憩と拓哉達と寛をよろしくお願いいたします!

 今朝は転校生が来るから、みんなが浮かれていた。


 でもその転校生が教室に入ってきた瞬間に静かになった。


 転校生の名前を思い出すよりも早く憩の席に近づく。


 いつもなら止めるのに、まるで生き別れた人に会うような必死さを感じて止められなかった。


 さらに憩の手を握って告白をした。


 憩は顔を真っ青にして、震えた声で誰かを尋ねた。


 転校生こと筧寛はそんな憩にショックを受けたようで、泣きそうな顔をする。


 しばらく話して誰かわかった憩は困ったような顔をしていたけど、嬉しそうだった。


 言葉も砕けていて、あだ名で呼ぶほどで、俺達に向けるものとは違う雰囲気だ。


 多分、筧は憩にとって一番の友達なんだと思う。


 でも筧が憩に向けるのは友達としてじゃなくて、もっと別のどす黒いドロドロしたもののような気がする。


 それに気づいているのは俺だけじゃなくて他にもいると思う。


 どうしたらいいのかなんて浮かばなくて、そのまま様子を見ることにした。


 昼休みにはいつも通りに教室へやって来た涼とどちらと一緒にお昼ご飯を食べるかで喧嘩してた。


 みんなで一緒に食べればいいのに、二人とも譲らず、憩は怒って教室を出て行ってしまった。


 そしたら筧は表情を消して何かブツブツいった後に、涼の首を掴んで近くの机に叩きつけた。


 涼は軽いけど誰でもが片手で持ち上げられるほどじゃない。


 筧は見た目よりもずっと力があるようだ。


 さらにそのままボールペンを掴んで振り下ろそうとしたから、俺は止めようと思った。


 でも俺が間に入るよりも先に拓哉が動いた。


 拓哉は言葉ではいわないけど、友達とか仲間だって思った人が困っていたらちゃんと助ける。


 蓮のおかけでそれ以上のことはなく、無事に昼休みは終わった。


 その時、俺は不思議に思ったことがある。


 いつもなら涼が誰かに傷つけられていたら、病院送りにするくらいには許さなかったのに、筧に対してそこまでの怒りがわかない。


 なんでだろって考えて気づいた。


 筧が憩の一番の友達だからだ。


 筧を病行く送りにしたら、きっと憩は俺を嫌いになる。

 

 嫌いにまでならなくても、悲しそうな顔をして離れていくと思う。


 どんな理由があったって一番の友達を傷つけられたら誰だっていい気にはならない。


 それは友達を傷つけた相手に対しても同じこと。


 せっかく憩が俺の名前を遠慮なく呼んでくれるくらい仲良くなったのにそれじゃ意味がない。


 放課後。

 憩が教室を去った後に筧の前に立って声をかけた。  


「待って」


 聞こえなかったように筧は立ち上がる。


「待って」


 そのまま目の前を通りすぎて憩の後を追うように教室を出て行こうとしたから、腕を掴んで止める。


 筧は掴まれた腕を振り払って俺を見上げた。


「君に使う時間はない。俺の時間は憩ちゃんのためにあって邪魔するなら君も消すよ?」


 憩に向けていた表情が嘘のように何の感情のない筧の顔。

 目は暗闇みたいに底が見えない。


「昼の涼の分」


 俺は大きく振りかぶって、でも骨折しないように力加減して筧の顔に一発だけ拳を埋めた。


 筧は漫画みたいに飛ばされて、教室の後ろのロッカーに背中からぶつかる。


 大きな音に教室中の視線が集まった。


 そんな中、筧はゆっくりと立ちあがる。

 

 大した衝撃はないと思う。

 少なくとも昼間の動きを見ても、動けなくなるほどじゃないってわかってる。


 だから立ち上がってきたことに対して驚かなった。

 

「君も俺と憩ちゃんの邪魔するつもり?」


 ゆらりと揺れる乱れた前髪の隙間から覗く両目には殺意があった。


 鋭く刺すような視線ではなくて、じわりとまとわりつくような視線に理性よりも先に本能が危険を察知する。


「全部、全部、全部全部全部、憩ちゃんだけを残して、消えればいいのに」


 怨嗟の声とともに距離を詰めて突き出されたそれを右に避ければ、風を切る音がした。


 きらりと光を反射するそれはバタフライナイフだ。


 なんのためらいもなく俺の後をついて来るように右上へ薙ぐ。


 狙いは頸動脈かな?

 迷いがなくて、潔さすら感じる。


 今度は避けずに刃の側面を握って、力をこめれば、パキンと軽い、金属の折れる音がした。


 他のナイフに比べて強度のないバタフライナイフは素手で簡単に折れるってお父さんが教えてくれた。


 筧は目を丸くしてバタフライナイフから手を離し、俺から距離をとった。


「バタフライナイフとはいえ刃を素手で折るなんて頭がおかしいんじゃない?」


 いきなりまだ人がたくさん残っている教室でバタフライナイフを振り回す筧より、俺の方が常識的だと思う。 


 とりあえずバタフライナイフを畳む。

 柄から折れた刃は危ないからポケットからハンカチを取り出して何重にも巻きつけた。


「世界が筧と憩だけになったら憩は悲しむ」


「……は?」


 何をいっているんだと筧の顔がいってる。


 俺はまた言葉が足りなかったみたいだ。


「憩は優しいから筧にたくさんの人を消させたことを自分のせいだと思う。筧は憩を悲しませたい?」


 筧は迷うように目を泳がせる。


「憩を悲しませるなら憩が許しても俺は許さない。だってそれが友達だから」


 筧が憩のことを好きなのは見ていればわかった。


 でもその好きって気持ちは俺の知る好きじゃなくて、見ててすごく不安定だと思う。


 もしまた憩が筧から離れたら、どんな手を使ってでも引き戻す。

 そんな気がする。


 憩が望むならいい。


 けど望まないなら俺は憩の味方をする。

 

「卒業式までは君が憩ちゃんと仲良くするのを許してあげるよ」


 筧は眉間にシワを寄せて、しぶしぶという雰囲気を隠しもしない。

 

「筧の許可はいらない。卒業しても友達は友達」


 筧の首に筋が浮かぶ。

 ポケットから使い込まれた分厚いサバイバルナイフを取り出した。


 それ、どこで手に入れたんだろ?

 ネットかな?


「憩はこの飴好き。ほわんとした顔で幸せそうに食べる」

 

 いつもポケットに入れているミルク味の口の中で溶ける不思議な飴を、出して筧に見せる。

 

 初めて渡した時はすごく目を輝かせて、ほんとに嬉しそうに受け取って、幸せそうになめてた。


 あの顔を見ると俺も幸せな気分になれるから、二・三日に一回は憩にあげてる。

 

 筧は目にも止まらない速さで距離を詰めて、持っていた飴を奪うとまた離れた。


「……他には?」

 

 警戒心を持ったまま俺を伺う筧は野良猫みたい。

 憩といる時は人懐っこい犬みたいなのに。


 ちょっとおもしろい。


「教えるからそこの椅子に座って」


 筧の前の人の椅子を借りて後ろ向きに座って、自分の席に座るように勧める。


 筧は立ったまま動かない。

 

「教えなくていいの?」

 

 飴を奪ったくらいだからもっと知りたいと思ったのに、そうでもなかったのかな?


 首を傾げたら、やっと筧は動いた。


「……それで?憩ちゃんは他になにが好きなの?」 


 好きな人のことを知りたいっていうのは俺もわかる。

 

 だから俺は隠さずに正直に憩の好きなお菓子を教えた。


 それから俺と筧は憩が来るまで話を続けた。


Q.休日の過ごし方は?


高萩蛍「南さんと同じで平日で出来ない家事をしたり、雪彦達と買い物したり公園に行ったりしてます。時々新婚と勘違いされることもあるけど、南さんの機嫌悪くなるからちょっと困りますね。僕は嬉しかったりするんですけど」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


高萩蛍「特にいませんね。あえていうなら好きになった人がタイプでしょうか?南さんは見た目も中身も魅力的な部分が多いんですよ。僕の彼女なんてもったいないくらいです。南さん、顔が赤いけどどうしたの?え?話を聞いてた?うわあ……恥ずかしすぎる。忘れられないよね。お願いだから蘭ちゃん達にはいわないで!恥ずかしすぎるから!」

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