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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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転校生はトラブルメーカーですか?その3

 高槻は違和感を覚えた!

 待ちに待った放課後。


 今、教室には解放感が溢れていた。


 昼休みの後からゆーくんの態度が悪化した。

  

 これでもかとくっついていたのにさらにくっつくようになって、トイレにまでついて来ようとした。

 

 いや私の羞恥心とゆーくんの名誉のためにそこは全力で拒否したけど、心の底から残念そうな顔をされて、かなり引いたのはいうまでもない。


 ほんと小学生じゃないんだから。

 ゆーくんは犯罪者にでもなるつもりだろうか?


 もしそうなら相手が私ということが残念過ぎるよ……。


 そんなわけで放課後が待ち遠しかった。

 教科書を鞄に詰める動きが早くなるくらいに。


「ねえ、憩ちゃん。今日の放課後は予定ある?」


「うん。あるよ」


 ゆーくんの質問に反射的に答えてしまったと思った。


 だってゆーくんが信じられないって顔をしている。


 確かに向井様達と知り合いになる前なら、バイトくらいしか用事がなかった。


 でも今は旧音楽室を掃除するっていう大事な任務がある。

 さぼるわけにはいかない。


「あ、もしかしてゆーくんも何か私に用があるの?」


「一緒にプリ撮りに行こうと思ってたんだけど……」


 ゆーくんの顔が歪み、また零れそうなほど目に涙を溜めている。


 一緒にプリとりに行く?

 プリって何?一緒にとりに行くってことは一人ではできないってことだよね?


 ……あ!“プリント”を職員室に“取りに行く”ってこと!?

 そうだよね。まだ転校して初日でどこにどんな教室があるかなんてわからないよね。


 先生にプリントを取りに来るようにいわれて、でもわからなくて不安だったんだね。


「それくらいなら大丈夫だよ」

 

 五分、十分遅くなるくらいなら少し急いで掃除すれば取り戻せる。 


「本当に!?」


 ゆーくんの顔が光り輝かんばかりの笑顔に変わる。

 

 そんなに不安だったんだ。

 気づかなくてごめんね。


「もちろん。職員室はこっちだよ」


 荷物を持って立ち上がってもゆーくんは動かない。


「……憩ちゃん、何か勘違いしてない?俺は職員室には用がないよ?」


「……?なら特別教室の先生の方?」

 

 ゆーくんのいいたいことがわからなくてじっと顔を見返す。

 うーん……。わからない。

 

「プリ撮り行こうっていうのは“プリクラを撮りに行こう”の略だよ。そもそも憩ちゃん、プリクラって知ってる?」 


「さすがにそれくらいは知ってるよ。一回だけ葉ちゃんと撮ったこともあるし」


 葉ちゃんの名前を出すとゆーくんはずいっと身を乗り出す。


「葉ちゃん、ねえ……確か中学の友達だよね?よかったらそのプリクラ見せてくれる?」


 なんだか断れる雰囲気ではなくて、財布の中に入れたプリクラを素直に見せた。


「……なんかシンプルだね」


 ゆーくんのいいたいことはよくわかる。

 

 全て目をつぶっている私と仏頂面の葉ちゃんが写っているそれはスタンプとか装飾が一切ない。


「それは二人でアニメグッズ専門ショップのアニメイクに行った時に、近くのゲーセンでプリクラ機を見つけて撮ったの。葉ちゃんは近くにアニメイクがあるんだから今期のアニメキャラ仕様になっていると思って、でもいざ撮ったら普通のプリクラと変わらなかったから写真ではちょっと不機嫌なんだよ」


 事情を知ったゆーくんは何ともいえない顔になった。

 

 実は私も葉ちゃんと同じことを思ったとはいいづらい。


「そうなんだ。でもいい“思い出”だね」


 ゆーくんがプリクラを私に返す。


 それを受け取ってまじまじと見る。


 ちょっと変なプリクラだけど、確かに葉ちゃんと一緒にプリクラを撮ったっていう思い出の証拠だ。


「じゃあ行こうか、憩ちゃん」


 ゆーくんが椅子から立ち上がる。


「どこに?」


「一緒にプリクラを撮ってくれるんだよね。俺、憩ちゃんとプリ撮るのずっと楽しみにしてたんだ」


 にっこりと今日で何度目になるかわからない、あまーい笑顔が向けられた。


 ああ、そういう笑顔は友達の私ではなくて素敵な恋人さんにプレゼントしてほしい。

 ものすごくもったいない。


「ごめん、ゆーくん。用事があるからプリクラを撮りには行けないよ」


「じゃあ用事が終わるまで教室で待ってるから連絡先教えてくれる?」


 ゆーくんの有無をいわせない笑顔にスマホを取り出す。


 自然な動きでそれを私からとって、連絡先を交換した。 


「はい。これで“いつでも”連絡できるね」


 受け取りながら私は何ともいえないもやもやした気持ちになった。


 連絡先を入れたくれたことじゃない。


 校内で用事があるとはいってないのに、ゆーくんはそうで違いないと確信しているみたいだ。


 ゆーくんの“真新しいスマホが私と同じ機種”だったこともちょっと胸に引っかかった。


 私のスマホは高校入学祝に買ってもらった古い型。

 今ならもっと高性能のスマホだってあるのにどうして同じなんだろう、と思った。


「じゃあ俺はここで待ってるから行ってらっしゃい。憩ちゃんが早く帰ってくれると嬉しいな」


 ゆーくんはまたあの甘い笑顔で私を教室から“送り出した”。

 泣きそうな顔をするでもなく普通に、あれだけくっついていたのに、だ。


 疑問は尽きないけど、ゆーくんがついてこないのは都合がいい(さすがにゆーくんを旧音楽室に連れて行ったらダメだと思う)のは事実で私は素直に教室を後にした。

Q.休日の過ごし方は?


南並歩真「平日で出来ない家事をしたり、妹達と雪彦くんと蛍と一緒に買い物したり公園に行ったりしてるわね。時々新婚と勘違いされることがイライラするわ。私ってそんなに老けて見えるのかしら?」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


南並歩真「恋愛対象なら蛍ね。蛍じゃない男に触られるなんて虫唾が走るわ。想像するだけで気持ち悪くなるくらいよ。あら?蛍、顔が赤いわよ?昨夜は寒かったから風邪でもひいたかしら?家のことは私にまかせて寝てなさい」

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