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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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転校生はトラブルメーカーですか!?その2

 ゆーくんとの衝撃的な再会から約四時間が過ぎ、昼休みになった。


 え?その間になにがあったかって?


 ……いろいろあったよ。

 うん。ほんとにいろいろね。


 例えば授業中のこと。 



「ねえ、憩ちゃん。悪いんだけど転校してきたばかりで教科書持ってないから見せてくれない?」


 一時間目開始直前、ゆーくんはそういった。


 確かに転校したばかりなら教科書がそろってないのも仕方ないことなのかもしれない。


 そう思って私はゆーくんの言葉を疑うことなく、教科書を貸すことにした。


「そういうことならしかたないよ。はい、どうぞ」


「ありがとう、憩ちゃん」

 

 ゆーくんは離れていた机をくっつけた。


 机をくっつけないと教科書を置けないからこれは普通のこと。

 

 でもね?

 椅子までくっつける必要はなかったよね!?


 近い!近すぎるよ、ゆーくん!?

 瑞貴ちゃんよりも近いよ!?


 もうくっついちゃてるよね!?


「教科書がよく見えなくて」


 なんて、はにかんだように笑ってたけど、一番後ろの席から黒板の文字が見えるなら、机の上の教科書の文字も見えるよね!?

 

 ゆーくんは遠視じゃないって知ってるよ!?


 異常に近い距離と常に右から感じる視線が気になって全然授業に集中できなかった。



 ほかには授業の合間の休憩時間。


 授業が終わったにも関わらず、机も椅子もそのままで、会っていなかった中学生の頃から今までを根掘り葉掘り聞き出された。


 心配させないようにいじめられていたことを隠そうとした。


 だけど『憩ちゃんは俺に隠し事をするの?』という一言プラス涙目プラス上目遣いのコンボを繰り出されては一溜まりもない。


 もうね、隠し事をすることが大罪のように感じてしまった。


 ゆーくんはどこでそんな技を身に着けたんだろう?


 その技で将来、美男美女を(はべ)らせてそうで末恐ろしいよ!?

 

 ああ、でもゆーくんと美男美女なんて眼福だよね!


 ありだ!全然ありだよ!

 むしろ全力で推奨する!


 ゆーくんにそういうと笑顔が引きつっていた。


 そこでようやくゆーくんが狙っていたわけじゃないってことがわかったから全力で謝った。


 近くの席の関元様達から生暖かい目で見られたのも辛い!


 葉山様や向井様でさえ同情的な目で見ていた。


 そうだよね!

 優しいゆーくんが侍らそうとか考えるわけがないよね!

 

 妄想を爆発させてごめんね!

 


 そんなことがあって今は……保健室にいる。


 え?なんで保健室かって?


 答えはいつも通り昼休み開始直後に城野様が来て、ゆーくんと今にも喧嘩を始めてしまいそうな雰囲気になったから。


 喧嘩の理由はどちらと一緒にお昼ご飯を食べるかである。


 デジャブを感じる…………。


 瑞貴ちゃんの時といい、どうして城野様は一緒じゃダメなんでしょう。


 ゆーくんもゆーくんだ。

 私がいえることじゃないけど、他の人とも仲良くしなきゃダメだと思う。


 小学校の頃みたいに私だけと仲良くするなんて無理に決まってる。


 将来のことを考えてもそうした方がいい。


 そもそもゆーくんなら私と違って性格もいいからすぐに友達とか出来ると思うし。


 それで距離が出来たら寂しいけど仕方ないことだよね。


 二人にそういったら、なぜか泣きそうな顔をされた。


「……憩ちゃんは俺を捨てるの?」


 なんてゆーくんにいわれてちょっっっとキレてしまった。

 

 私の話を全く聞いてくれてないどころか、聞く気すらないってわかったから。


 忘れてたけどゆーくんには昔からそういうところがあった。

 

 自分の思う通りにならないと泣くっていう困った悪癖。


 放置してるとますます悪化して、私がいうことを聞くまで泣き続ける。


 さすがにもう高校生だから泣くことはないみたいだけど、これじゃあまるで私が悪者だ。


「今、捨てるとかそういう話してないよね?私はただゆーくんとも城野様ともお昼を過ごしたかったけど……もういいですよ。二人が勝手にするなら私も勝手にしますから。二人ともついてこないでください!」


 そういい残して、私は教室を出たけど、意外にも二人は追いかけて来なかった。



「……ということがあったんですけど、先生はどう思います?」

 

 加東先生はドン引きした顔で話を聞いていた。


 今の話を聞いたら引くよね。

 高校生が涙目になるなんて。


 豆腐メンタルか!っていいたくなる。

 これも私がいえたことじゃないけど……。


「今さらだけどお前はすごいな」


 今の会話のどこに褒める要素があったんですか?


「バカさ加減が」


 褒められてなかった!?


 けなされる要素もわからないんですか!?


「お前にとっては城野も筧も友人なのかもしれないが、二人にとっては他人だろ?だから二人とも他人に友人をとられるような気持ちになったんじゃないのか?」


 それはきっと中学生の頃に葉ちゃんが他の友達と話していた時や、春休みの時に葉ちゃんに対して感じた気持ちと同じだ。

 

 楽しそうで他の人とも仲良しなのが羨ましくて、でもそこに私がいなくて寂しかった。


 私がいなくても葉ちゃんは楽しいんだってそんな当たり前のことを思って。


 どうして気づいてあげられなかったんだろう。


「私ってほんとバカですね……」


 一緒にいなかった先生にいわれてしまうなんて、私は二人のなにを見てたんだろ?


「今に始まったことじゃないだろ?」


 先生はにやりと意地悪く笑う。


 ここは慰めるところなんじゃないんですか!?


 イラッとしたから先生のお弁当から唐揚げをもらった。


「あっ!お前は最後に食べようととっていたやつを!」


「へぇ。先生は美味しいものは後派なんですね。それよりそのお弁当手作りみたいですけど彼女ができたんですか?」


 この唐揚げ美味しいな。


 しっかりと下味がついてて、鶏肉の臭みがなくて醤油の香りがますます食欲をそそう。


 これなら何個でも食べられそう!


 私の視線を感じた先生はお弁当を持ち上げて距離をとった。


 なるほど。なるほど。

 そんなに彼女さんのお弁当が大事ですか。

 

 思わずにやにやしてしまう。


 でも先生から予想外の言葉が出てきた。


「いや阿部先生からだ」


 え?それなんてフラグ!?

 

 思わず身を乗り出すと先生は嫌そうな顔をする。


「その話詳しく」


「教えないぞ」


 そっけなくいわれてしまった。


 ふふふ。いや今は腐腐腐!

 腐女子としては聞かないって選択はない!

 

 この気持ち葉ちゃんもきっとわかってくれるよね!?


「一生に一度の頼みですから!」

 

「お前の一生に一度は軽いな」


 必死に頭を下げたのに先生は切り捨てる。


 静かな探り合いは第三者の介入で中止になった。


「憩ちゃぁあああん!」

 

 扉を壊す勢いで現れたゆーくんはそのまま私に抱きついた。


「ごめん!さっきはほんとにごめん!憩ちゃんが許してくれるならなんでもするから!だから俺を嫌いにならないでぇええぇ!」


 今にも泣きそうな雰囲気でゆーくんはすがりつく。


 ゆーくんに始めてはっきりと自分の意見をいったから動揺しているのかもしれない。


 でもね……?

 そんなに強く抱きしめたら骨が折れるんだけど!?

 

 さっきから骨がミシミシって悲鳴を上げてるんだよ!?


 加東先生に助けを求めて視線を送るとなぜかさらに強く抱きしめられた。


 なぜに!?

 あとそれ以上は内臓が飛び出すから!


「落ち着け、筧!高槻が死にかけてるぞ!」


 先生の言葉にゆーくんはようやく正気に帰って力を緩める。


 先生、ありがとう。

 ちょっと三途の川が見えた気がしたけど。


「あ、あああぁ!?憩ちゃぁあああん!」


 ぐったりとした私にゆーくんは顔を青ざめて、激しく揺さぶる。


 目が回るからやめてぇえええ!


 暴走するゆーくんを止めてくれたのは先生だった。


「落ち着けっていってんだろうが!」


 先生はゆーくんの頭にファイルを叩き落とした。


 それでもゆーくんは私から手を離さずに悶絶する。


 友達思いなのは嬉しいけど、今は離してほしい……。


「大丈夫か、高槻?」


 先生は珍しく真剣に心配してくれた。


 そんだけひどい状態なのか……。


「大丈夫、です……多分……」


 まだ頭がくらくらするけどしばらくすれば落ち着くと思う。


「まあ大丈夫そうだが、きついならいえよ?」


 先生が優しいなんて逆に怖い!?

 なに!?私死ぬの!?


 不安になったけど、その後は何事もなく昼休みが終わった。


 帰り際にゆーくんは先生になにやら耳打ちした。


 途端に先生は顔を強張らせてゆーくんを睨んだ。


 でもゆーくんは何もなかったかのように私の手をとって、教室へと向かう。


「ゆーくん。先生になんていったの?」

 

 ただなんとなく気になって聞いた。


「これからもよろしくお願いいたしますっていったんだよ」


 ゆーくんはなにかを隠したみたいまま笑ってごまかした。 


 多分、私にはいいづらいことだったんだ。


 だから私もわかった振りをして笑った。

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