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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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転校生はトラブルメーカーかな?

 湊視点。

 GW明けの最初のHRは転校生がやって来るということで、皆がどこか浮足立っていた。


 この学校に転校してくるなんてどんな人物なのだろうか。


 少なくともまともな神経をしているとは思えない。

 

 毎日のように暴力沙汰を起こす学校に転校する奴はよほどの物好きか『同類』しかいないだろう。


 高槻さんは前日のバイトの疲れが残っているようで眠そうな顔をしている。


 繊細そうに見えて、その実は驚くほど大胆だ。 


 阿部先生が転校生を教室へ入るように声をかける。


 廊下側前方の扉が開き、転校生が教室へと入ってくる。


 その瞬間、教室内から音が消えた。


 転校生はゆっくりとした足で歩き、黒板の前で止まる。


 拓哉と同じくらいの身長にスラリと長い手足、丸い大きな少しタレてる目。

 どことなく優しそうな甘い顔立ち。


 クラス中から向けられる視線が落ち着かないのか、周囲を見ている。


 突然、一点に視線を止めると、無表情だった顔を輝かせて俺の方へ突進してきた。


 いつでも対処できるように身構える。


 だが彼は俺の隣をすり抜けて、後ろの席に突撃した。


 俺の後ろの席にいるのはただ一人、『高槻さん』だけ。

  

 慌てて振り返った俺の耳に聞こえたのは信じられない言葉だった。

 

「俺の大好きな憩ちゃん!生憩ちゃんだー!やったー!俺超嬉しい!同じクラスってやっぱり俺達は運命で結ばれてんだね!でも会えなかった間俺すごく寂しくてずっと会いたかったんだよ?だからもう二度と離さないからね!ずっとずっと一緒にいよう!」


 彼は机を挟んで高槻さんの目の前に立ち、彼女の手を両手で掴んで、叫ぶようにいったのだ。


 広いとはいえない教室に彼の声が響いた。

 

 一方の高槻さんは恐怖を感じたのか真っ青な顔をして、震えている。

 

「あの……どちら様ですか?」


 高槻さんの声も震えていた。

 友達だと聞いていたけど、人違いか?


 それでも彼は手を離さない。


「憩ちゃん、ひどい。俺のこと忘れちゃった?俺達あんなに一緒にいたのに」


 彼は目を潤ませ、すがりつくような声を出した。

 まるで捨てられた犬だ。


「す、すみません」


 高槻さんはとりあえずといったように頭を下げる。 


 彼は気にしないで、といって笑ったが、高槻さんが目を逸らした一瞬の瞳は雄弁に語っていた。

 

 『二度と逃がしてやるものか』と。

 

「それじゃ改めて自己紹介だね!俺の名前は筧寛。憩ちゃんと同小で小六ん時に引っ越したんだよ」


 彼の自己紹介に心当たりがあったのだろう。

 

 高槻さんはおそるおそる口に出した。 


「……………もしかして、ゆーくん?」


 彼の顔が今までになく輝いた。


「思い出してくれたの!?そうだよ!憩ちゃんの彼氏の寛だよ!」


 さらに彼は満面を笑みのまま爆弾を落とした。


「えっ!?」


 思わず俺達は驚きの声を上げた。


 高槻さんが誰かと付き合っているなんて聞いたことがないし、そういう情報もない。


「違います!彼氏じゃないです!小学校の友達です!」


 案の定、高槻さんは慌てて誰にでもなく否定する。


 そこに先ほどまでの恐怖はない。

 成長して当時と容姿が変わったのかもしれないな。

 

「そんな照れちゃって可愛いなぁ。憩ちゃんは小学生の頃から可愛かったけど今はもっと可愛いね。もっと好きになっちゃった」


 彼は胸焼けしそうなくらいの甘い笑顔を高槻さんに向ける。


 そこに『狂皇』といわれていた姿はなく、とてもじゃないが同一人物には思えない。 


「こいつの目節穴なんじゃねえの?」


 拓哉がぽつりと零した。

  

 それはただの感想か?

 それとも小学生の頃から高槻さんを知っていることに対しての嫉妬か?


 高槻さんも同意するように何度も頷いている。


 いや怒っていいと思うよ?


 拓哉の言葉に彼は手を離して高槻さんを強く胸に抱きしめた。


 小学生の頃からよく抱きしめられていたのか、高槻さんは特に抵抗せずに受け入れる。


 男に対しての危機感が薄いのは彼のせいかもしれない。


「役立たずな目は抉りとって潰そうかな?」

 

 無邪気な声で彼はそういった。

 それが冗談ではないことは目が語っている。


 高槻さんが彼の腕の中から離れ、教室中の雰囲気に驚いていた。


 引きつった顔をしながら教室を見渡して、最後に彼に視線を送る。


 彼は素知らぬふりで首をかしげて誤魔化した。


「筧くん、席についてください」


 阿部先生の言葉で教室がほっとした雰囲気に包まれる。


 彼の雰囲気にのまれていた。


「はい」


 彼は意外にあっさりと高槻さんから離れる。


 油断なく横目に様子を見ていれば右隣の男に話しかけた。


「俺と席を交代してくれる?」


 さっき話しかけた時と違う普通の声。

 だけど、その顔には表情がなかった。


 まるで男が粗大ごみであるように見下ろしていた。


 きっと彼にはそうとしか見えないんだろう。

 

 だから男が嫌といえば容赦なく排除しようとするのが簡単によそうだ出来た。

 

 男は青ざめた顔で激しく上下に頭を振って、荷物を片手に彼へと準備されていた席へと移動した。


 彼はゆっくりとその席に座って、荷物を机の横にかけていう。


「憩ちゃんの隣は俺の特等席だよね」


 そして大変満足そうに微笑んだ。


 高槻さんは引きつった顔を浮かべる。

 

 ただでさえ危険な人物がさらに危険になった。


 前に三浦和貴がいっていた荒れるとはこのことだったらしい。


 予想だにしない嵐の到来に俺は頭が痛くなった。

Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


筧寛「小さくて怖がりででもそこが庇護欲を誘う可愛い子だよ」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


筧寛「さらに可愛くなってて驚いたよ。ちょうど俺の腕の中に納まるくらいなのもいいよね。あと憩ちゃんが魅力的過ぎて近づく虫がいるけどこれからは俺がちゃんと守るよ。小学生の頃みたいにね」

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