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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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こどもの日に動物園ですか!?その5

 蓮、ブチ切れ回。

 この雰囲気は前に私がオネエ扱いまたは性的な意味で男扱いした時と同じだ!?


 どうしよう!

 これ以上の修羅場になる前にここから離れよう!


 葉山様とマナさんの関係がよくわからないけど、一方的な物だってことだけはわかった。


 だからこれ以上付き合う必要はない。


「アレンがわたしとデートしてくれるなら一回に三万出すでも五万でも出すよ!」


 始めて会った時からこの人、失礼にもほどがあるよね?


 お金を出すからなに?

  

 いくら注ぎこんだって葉山様の気持ちは買えないよ?


 だって葉山様の気持ちは葉山様だけのもの。

 

 短い付き合いだけど、葉山様がそういう風に考える人を好きになるはずがないって知ってる。


「そんなはした金でアタシが買えると思ってるなんてバカにしてるのかしら?」


 思った通り、葉山様の声も氷みたいに冷え切っていた。

 

 目も冷たいのに笑顔を浮かべている。


 私には今の葉山様が人を見下す美麗な悪魔に見えた。


 やや速足でマナさんに近づくと襟を掴んで持ち上げ、ぐっとキスが出来そうなほど顔を近づけた。

 

「二度と“俺”にテメエの醜い性格がにじみ出た面を見せんじゃねえ」


 葉山様は静かにそういって、投げ捨てるようにマナさんを解放した。


 向井様みたいに大きな声で凄んだわけじゃないのに、恐怖で体がすくんでしまう。


 マナさんはそのまま地面に座りこんで、震える体を抱きしめる。


「行くわよ」

 

 オネエっぽい口調に戻った葉山様はマナさんを一度も見ることなく先に行く。


 慌てて後を追う私を誰も引き止めなかった。


 一度だけ振り返るとマナさんは顔を青ざめていた。


 私は薄情なのかもしれない。

 マナさんに対して特に何も思わなかった。



 

 葉山様は普通に歩いていたのに、私が追いつくには小走りだった。


 これが私と葉山様の足の長さの差か!


 さすが超人気モデル!

 足の長さが日本人離れしてる!


「アタシ、援交してたのよ」


 ぽつりといわれた言葉を理解するのにどのくらい時間がたったのかわからなかった。


 実際には数秒しかたってないんだろうけど、数十分にも数時間にも思えた。

 

 援交ってお金をもらって男女のアレをすることだよね?

 

 まさかと思うけど、さっきのマナさんの言葉がそれを否定する。


「人の口に戸は立てられないわね。中学の頃に一年くらいやって百万以上稼いだかしら」


 言葉が出ない。 

 なんで今、それも私にそんな話をするんだろう?

 

 葉山様は足を止めて振り返ると、ちょっと強引に私の顎をつまんで上を向かせて顔を近づける。


 お互いの息がかかりそうな距離。


「アンタは“俺”をいくらで買う?知り合いだから特別にサービスもしてやろうか?」


 妖艶な色気をだだ漏れにさせた葉山様の綺麗な笑顔が視界いっぱいに映る。


 瞳の奥に見えるのは欲でも、怒りでもない。


「葉山様は後悔してるんですね」


 葉山様の手を払って、一歩後ろに下がる。


 特に抵抗はされなくてあっさりと距離ができた。


「……はあ?」


 葉山様は理解できないという顔をした。


「援交をしていた事情は知りませんが、葉山様は自分を売ったことを後悔しているんです」


 もし、そうじゃないなら今だって援交をしているよね?


 モデルと並行してやればもっと稼げるだろうし。


 でも葉山様はそれをしてない。


 それは後悔しているってことなんじゃない?


「だから葉山様を買おうとする人が嫌いなんでしょう?」


 葉山様は一瞬だけ目を見開いてから、何度目かになる溜め息を吐いた。


「……アンタって意外と人を見てるのね。自分の世界に閉じこもっているんだと思ってたわ」


 葉山様は自嘲の笑みを浮かべる。


「……閉じこもってましたよ。でも向井様達と出会って少し変われたと思います。前ならこうして誰かと一緒に過ごすなんて考えもしなかったんですから」

  

 お花見の時みたいにどんな手を使っても逃げ出そうとしたろう。


 数ヶ月前まで私の世界には家族と葉ちゃんとゆーくんしかいなかった。


 でも今は違う。

 だから私は笑っていった。


「葉山様は一生後悔してくださいね」


「はあ?」


 今度は呆れたような心の底からバカにしたみたいな顔をする。


「一生後悔し続けたら葉山様は二度と援交なんてしないじゃないですか」


 葉山様は理解できないというみたいにぽかんと口を開ける。


 いつも飄々としてて油断も隙もない葉山様の激レアな表情!?


 ガッツリ脳裏に焼きつけなきゃ!


「…………やっぱりアンタはバカね」


 葉山様は振り返って再び歩きだした。


 ええっ!?今いいことをいったみたいな雰囲気じゃなかった!?


「なにぼーっとしてるのよ。余計な時間をとったからさっさと行くわよ」


「あ、はい」


 葉山様はすっかりいつもの調子に戻ってしまった。


 うん。やっぱり葉山様はこうじゃなくちゃね。


 あ、そういえば蓬ちゃんからプレゼントをもらえたのかな?


「葉山様、蓬ちゃんのサプライズはどうでした?」

 

「サプライズ?なんのこと?」


 これはまだ渡してなかったパターンだ!?


 どうしよう!

 バラしちゃったよ!?


 いや、まだ葉山様にプレゼントを準備してるってバレてないはず!


「な、なな、なんでもないです!私が家族へお土産を買ったので蓬ちゃんも買ったのかと勘違いしたんです!ええ、なんでそんな勘違いしちゃったんでしょうね!?」


 目が元気よく泳いでしまうのは不可抗力です!

  

 葉山様が振り返らないのがせめてもの救い!

 

 そのまま前を見続けてください!


「まあいいわ。……詳しいことは蓬に聞くから」


 ぼそっと、とんでもないことをいわれました!?


 バレてはないみたいだけどめちゃくちゃ警戒されてる!?


 蓬ちゃん、私がうかつなせいでごめん!




 その後、無事に合流できて、蓬ちゃんが純粋に無事を喜んでくれた。


 天使の笑顔に良心がガリガリと削られ、先に心の中で謝った。


 プレゼントを渡す時に怒られたらごめんね!

Q.休日の過ごし方は?


長澤葉「撮り溜めたしたアニメ鑑賞に、ビーム動画巡回と神作家比良吉不二介様の新刊チェック、熟成させたBLゲーをするくらいだな」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


長澤葉「恋とかしたことないからわかんないわ。そうだな……声に惹かれると思う。俺、声フェチだから。そうそう!クラスにめちゃくちゃ俺の好みの美声持ちがいる!え?どんな人って?萌え系アニメのメインヒロインの声でもいけそうなくらい可愛い声してる“男”だけど?」

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