表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
78/111

こどもの日に動物園ですか!?その4

 ※クリスマスの日に子どもの日の話を書いてます。

 

 女の子達に連れられて辿りついたのは、公園にあるような三~四人用の屋根付きで机と椅子がセットの休憩場所。


 通路よりも少し奥まった場所にあるそこは、周りを木で囲まれていることもあってパッと見では人目に付きずらい。


 さらに三人が私を囲うように立ち、通路への逃げ道を塞いでいる。


 ……うん。嫌な予感しかしないね!?


 で、でも!ここは動物園でうちの学校とは違うから暴力沙汰にはならないよね!?


 暴言とか精神攻撃なら受け流す自信があるよ!


 あれ?自分でいっててなんだか泣けてきた。


「あんた、アレンとどういう関係なの?」

 

 モデルが顔をしかめて私に問う。


 『アレン』? 

 誰ですか、それ?


 名前的に外国の人だよね?

 私、国外に知り合いなんていないよ?

 

 なんか面倒な勘違いをされているみたい……。


「すみません。私、アレンさんと会ったことないです。だから他の方を当たった方がいいと思いますよ」


 女の子達は何いってんだ、こいつというような顔をした。


「とぼけるのもいい加減にしなさいよ!さっきまで一緒にいたでしょ!」


 さっきまで一緒にいたのは蓬ちゃんですが?


 ……ってことじゃないのはわかってる。

 多分、向井様達のことなんだろう。


 でも向井様達の中で『アレン』って呼ばれている人なんていないし……。


 やっぱり人違いだよね。


「いえ。私にアレンっていう名前の知り合いなんていません」


 愛想笑いを浮かべながら逃げ道を探す。


 見知らぬ他人に巻きこまれるなんて面倒はごめんです。


 正面突破は無理そうだ。

 途中で捕まりそう。


 木の中を突っ切るのは服を汚して葉山様に怒られそうだし……。


「なんで!なんであんたみたいな女がアレンの側にいるのよ!」


 ええっ!?

 知らないっていってるのにキレられた!?

 なんて理不尽!?


 なんとなく気づいてたけど、やっぱり修羅場っぽい!?

 

 『アレン』さんってどんだけモテるの!?


 激怒するモデルさんと冷たい目で私を睨む美人さん二人。


 あれー?なんか私が悪いみたいな雰囲気になってませんか?


 気のせいじゃない?

 そうですか……。


 もう三人を置いて今すぐお土産屋さんに戻りたい。


 このまま時間が過ぎたら、待つのに焦れた向井様が私を置いて帰りそうだし。


 あーもう!

 私達が話してるのは日本語だよね?

 なんでこうも伝わらないかな?


 私は話が通じないイライラと、向井様に置いてかれる心配が積もってだんだんヤケになった。


 息を吸って思っていることを言葉にした。


「だから知らないといってるじゃないですか。そもそも名乗りもしないで人を連れ出して、挙句に知らないというのに問い詰めて怒るなんておかしいと思わないんですか?あなたの常識はどうなってるんです?あなた何様ですか?」


 なんということでしょう!

 あんなに美人だったモデルさんが泣く子も黙るような真っ赤な鬼へと変わったのです!


 匠の技じゃなくて私のせいだけどね!


 ど、ど、どうしょう!?

 火に油どころか、灯油かけた!?

 

「あんたこそ何様のつもりよ!ブスのくせにアレンと一緒にいるんじゃないわよ!あの人の隣にはわたしみたいな可愛い子じゃないと立ったらいけないのよ!」


 ブスの件は否定したい。


 だって葉山様が用意してくだった服とメイクのおかげで、今の私の顔面偏差値は一気に普通より上くらいに上がってる(当社比)。


 すっぴんでブスといわれたら納得できるけど、今いわれたら葉山様の技術を否定されているようでかなり嫌だ。


 葉山様のメイク技術は神がかっているから。


 でもこのタイミングていうとナルシストみたい。


 それに目の前のモデルさんは可愛いけど、自分でいうのはちょっと引く。 

 

 どんだけ自分に自信があるんだろう?


「そうですか。そんなに自信があるのなら私に構わずアレンさんに直接アピールされてはどうですか?」


 またまた思わずいってしまった。


「なんで!なんで!マナじゃなくてあんたなのよ!」

 

 知りませんよ!

 あ、マナって名前だったんですか。


 マナさんは距離を詰めながら手を振り上げて、私の顔へ振り下ろそうとした。


 手を開いていたから多分、来るのは平手。


 数発ビンタされて開放されるなら受けてもいいかな?


 いい加減この人達に付き合うのもうんざりしてきたし。


 ビンタなら音こそ派手だけど、実際のダメージは顔が赤くなるくらいで痛みは割りとすぐに収まる。


 顔が赤いのはどこかにぶつけたことにすればいい。


 だから好きなだけやればいいよ。

 それで気が済むなら。


 しかし固く目を閉じた私の耳に届いたのは一人の男の声だった。


「アンタ、バカなの?何受け止めようとしてんのよ。避けるなり反撃するなりしなさいよ」


 気怠けで独特な喋り方と過激な言葉。


 そんな風に声をかける人を私は一人しか知らない。


 目を開けると想像通り、葉山様が三人の後ろに立っていた。


 時間が止まったような気がした。


 なんで葉山様がここにいるの?


 私の言葉は愛さんにかき消された。


「アレンっ!」


 さっきまで鬼みたいな形相から、眉を下げて今にも零れそうなほど目に涙を溜める。


 そして中途半端に振り下ろして止まっていた手を葉山様へ伸ばして駆け寄った。


 ええっ!?

 アレンって葉山様のことだったの!?


 マナさんの変わり身の早さと、葉山様がアレンだということへの驚きに声も出ない。


 しかしさらに驚くことが起こった。


 葉山様は駆け寄ったマナさんをかわして、私の前に立ったのだ。


「一人で勝手に行くんじゃないわよ。あと少し見つかるのが遅かったら迷子センターで呼び出ししてたわ」


 葉山様のマナさん達なんていないみたいな態度に驚いたのは私だけじゃなかった。


「アレン!その人とどういう関係なの!?」


 マナさんが震える声で葉山様に聞く。 


 震えてるのは多分、無視されて悲しかったからだけじゃなくて、マナさんよりも私を優先した怒りと嫉妬もあると思う。


 一瞬だけ私を見た時の目が鬼のようだったし。

 すぐに涙目に戻ったのには驚きを通り越して感心した。


 女は生まれながらにして女優ってほんとだったんだね。

 マナさんなら名女優になれると思う。


 そんなマナさんに対して葉山様はやっぱり容赦がなかった。

 

「アンタ、誰?アタシ、アンタなんか知らないわ」


 一切の同情も感じさせない冷たい声に私の方が同情してしまった。


 どう見ても知り合いにしか思えないのですが!?

 

「前に一緒に仕事をしたマナよ!先週だって一緒の仕事だったじゃない!」


 切ないくらいに一生懸命にいいすがるマナさんと反比例して、葉山様は心の底から嫌そうな顔をした。 

 一緒に仕事をしたってことは二人は同業者ってこと?

 

 バイト先が同じとか?

 でも葉山様がバイトしてるなんて聞いたことないし……。

 

 視線を感じて葉山様を見れば呆れた顔をしていた。

 

「アンタ、まだ気づかないの?」

 

 何のことだかわからずに頭の中にクエスチョンマークが量産される。


 私の態度に葉山様は盛大な溜め息を吐いていった。


「アタシ、ファッションモデルやってんの。その芸名が『アレン』よ」


 へえ、葉山様はモデルをしてるんですね。


 『アレン』ってオシャレな名前です。 

 あ、もしかして本名からとりました?


 ……ん?ちょっと待って。

 モデルの『アレン』?

 

 うぇええええええええ!?


 『アレン』っていえば去年の男性モデル人気ナンバー2と同じ名前だよね!?

 

 ファッション雑誌の表紙を飾ったことも、見開きで特集記事を組んだことも、数えきれないほどあって、日本だけじゃなくて海外でも評価されてるあの人!?

 

 つ、つ、つまり葉山様は超人気モデルってこと!?


 そんな恐れ多い人がなぜうちの学校に通ってるの!?

 それ以前にうちの学校は事務所的にアウトだよね!?


「……アンタは本当に気づいてなかったのね。バカもここまでくればいっそ清々しいわ」


 うぐっ!?

 葉山様の言葉に何も返せない!


 で、でもまさかうちの学校に『アレン』が通ってるなんて普通は思いませんよ!?


 せいぜい葉山様って『アレン』とすごく顔が似てるなあってレベルですよ!?

 私はおかしくないですよね!?


「アンタ以外はとっくに気づいてたわよ」


 『アレン』は身長体重はモデルとして平均的だけど、十代とは思えない妖艶ようえんな色気とオネエ言葉に毒舌っていう独特なキャラクターを売りにしている。


 ……………あれ?どう考えても葉山様だ。


 なんで気づかなかった私!?


「アレンのことを知らないこの女なんてアレンに相応しくない!」 


 マナさんが泣きながら叫んだ。


 衝撃の事実に存在を完全に忘れてた。

 えっとなんの話をしてたっけ?


 ああ、葉山様とどういう関係かとか、相応しくないとかそんな話だ。


 そんなの決まってるじゃないですか。


「あなたに関係ありません」


「アンタに関係ないわよ」


 合わせたわけじゃないのに葉山様と声が揃った。

 

 思わず顔を見合わせてしまって、それがおかしくて、そんな状況じゃないってわかってたのに笑ってしまった。


 葉山様も少しだけ笑ってた。


 そんな私達を見て、マナさんは面白くなかったのだろう。

 

 葉山様へ特大の爆弾を落とした。


「あ、あんたはアレンを“いくらで買った”のよ!?」


 途端に葉山様から漂う雰囲気が春なのにとても冷たい物へと変わった。


Q.休日の過ごし方は?


高槻癒詩「とりあえず部活!部活がない日は自主トレとか野球道具見に行ったりとかしてる!あ!ときどき友達の蘇鉄と遊び行く!」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


高槻癒詩「綺麗系の美人でなんかこう優しさ?みたいなので包んでくれるような人がいい!あと俺が野球バカだから勉強が出来る人!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ