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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第三章  高校3年生5月
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こどもの日に動物園ですか!?その3

 蓬ちゃんにメロメロな高槻。

 動物が怯える件は四分一様が気配を消して、距離をとることで解決した。


 気配を消せるなんて……うん。

 四分一様に関してはもう何も驚かない気がする。


 ふれあいコーナーでは薺ちゃんと菘ちゃんがモルモットとうさぎに大興奮していた。


 歓声をあげながら追いかける二人は誰もが想像する子どもの姿で、見ていてすごく和んだ。


 蓬ちゃんは近くにいたモルモットを葉山様に捕まえてもらって抱っこした。

 

 緊張しながらも優しい手つきで撫でる蓬ちゃんにモルモットも安心したのか大人しくされるがまま。


 その姿に嬉しそうに笑った蓬ちゃんの笑顔に心臓が撃ち抜かれたような衝撃が走った。

 

 さすが葉山様の妹君!

 天使と見間違えるような可憐さ!


 可愛すぎて不審者に誘拐されないか不安になるレベルです!


 しばらく触れ合った後は園内のレストランで昼食をとった。

 ファミレスと同じようなメニューで、味はそれなり、値段は少し割り高だ。


 値段に代えられない思い出っていう付加価値がついているからしかたないかもしれない。


 その後に蓬ちゃんのリクエストでお土産屋さんを見ていくことになった。


 正に子どもから大人まで様々な商品が並んでいる。


 向井様達はそれぞれ好きなように商品を見て周っていた。

 

 家族に何か買って帰ろうかな。

 癒詩が関元様と出かけたことを知ったら拗ねそうだし。


 あ、このゴリラが野球のバットを持ってるキーホルダー可愛い! 

 癒詩はこれにして、両親は無難にクッキーにしよう。


 買いたい物が決まり、周りを見ていると蓬ちゃんがある商品の前で立ち止まっていた。


 視線の先にあったのは男性用のアクセサリー。


 ははん。これはつまりお兄ちゃんかお父さんへのプレゼントってやつかな?

 

 蓬ちゃんはお兄ちゃん思いのいい子なんだなあ。

 この優しさを癒詩に見習ってほしい。

 

 じっと商品を見定めていた蓬ちゃんはブレスレットを一つ手に取って、値段を見る。

 それから少し悩んでから悲しそうな顔をして元の場所へと戻した。

 

 あれ?買うと思ったんだけどどうかしたのかな?


「蓬ちゃん、どうかしたんですか?」


「あ、えっと……なんでもない」


 近づいて声をかけるとびっくりしたように顔をあげて、私だとわかるとそらされた。


 朝会ったばかりだとはいえ、さすがにちょっとショック。

 

 半日近くが経ってるけど、蓬ちゃんは薺ちゃんや菘ちゃんと違って葉山様の側から離れず、私から距離を取っているような気がする。 

  

 向井様達とは普通に話してたから人見知りとは違うみたいだし……。


 これはもしやあれか!?

 私にお兄ちゃんをとられたくないっていう嫉妬ですか!?


 うわあああ!可愛い!?

 ほんとに葉山様の妹君ですか!?


 葉山様が私なんかを相手にするわけないのに!


 うーん……どうやって誤解を解こう。


 まずは私のことを知ってもらうことからかな。


「今日は葉山さ……お兄さんが誘ってくれてんですよ。でも服とか色々準備してくださったのに、忘れてて怒られてしまいました」 

 

「ふうん」

 

 気のない返事だけどちゃんと聞いてくれてる。


「お兄さんはあまり学校に来られなくて今まで話したこともなかったんです。それがちょっとしたきっかけで話すようになって、それからお兄さんのことを知りました」


 そう。葉山様達と話すようになってたった三カ月くらいしかたってない。


 だから私は葉山様の声すら知らなかった。

 知っているのは噂ばかり。


「こういってはなんですが、お兄さんは口は悪くて意地悪です。何度かでこピンをされたりしました。でも私が困っている時に助けてくれた優しい人です」


 蓬ちゃんはびっくりした顔で私を見上げていた。


 厳しいことをいわれるけど、それは多分、昼前の言葉みたいに相手のことを思っていっていることもあると思う。

 

「私はそんなお兄さんを尊敬できる“友達”だと思っています。蓬ちゃんにとってお兄さんはどんな存在ですか?」 


 視線を合わせて微笑むと、蓬ちゃんはやや目を泳がせて口を開いた。


「……きょうはれんおにいちゃんのおたんじょうびなの。だからプレゼントかいたかったの。でも、でもね、おかねがたりなくてプレゼントかえなくて」


 蓬ちゃんは言葉を詰まらせてくしゃりと顔を歪める。

 あ、この顔は癒詩が泣く直前のと同じだ。


 お兄ちゃんにプレゼントを買うっていうのでも、可愛すぎて鼻血が出そうなのに、買えなくて泣きそうな顔をするなんてもう吐血もんです!


 こんな、こんな可愛い妹君がいる葉山様が羨ましすぎます!


 ここは蓬ちゃんの笑顔のためにお姉さんが一肌脱ぎましょう!


「お兄さんにプレゼントを買いたかったけどお金が足りなかったんですね。いくら足りなかったんですか?」


「にせんえんくらい」


 二千円くらいなら出せそう。

 でも計算違いしているかもしれないし、一応確認しておこう。


「二千円ですね。プレゼントはどれにしようと思ったんですか?」


「えっと、これ」

 

 蓬ちゃんが手に取って見せてくれたのは白いブレスレットだった。


 商品名はスネークボーンブレスレット。

 ……直訳で蛇の骨のブレスレット。


 しかも本物を使用しているみたい。

 動物園で売っていい物なの?


 でも金運が上がる幸運アイテムらしく、商品棚に人気ナンバー2というポップもあった。


 蛇の骨を黒い革紐でつないだそれはシンプルなデザインで、葉山様にも似合いそうだ。


 値段は三千九百八十円。

 安いのか高いのか今いちよくわからない。


 葉山様なら詳しいと思うけど、今回ばかりは聞くわけにいかない。


「蓬ちゃんはいくら持ってるんですか?」


「にせんえんだよ」 


 蓬ちゃんは賢いです!

 小学一年生で四ケタの計算が出来るなんて!?

 

 それとも私が馬鹿なだけ!?

 

 いやいや落ち着け、私!


「それじゃあ、半分こしましょうか」


「はんぶんこ?」


「そうです。私も友達のお兄さんにプレゼントを贈りたいのでお金を半分出します。それならこのブレスレットを買えますよね?」


 蓬ちゃんの顔が明るくなる。


「いいの!?」


「いいですよ。あ、でもこれは二人だけの秘密ですよ?お兄さんが私がお金を出したって知ったら、受け取ってくれないかもしれませんから」


 まあ前に葉山様へファッション誌を買ったこともあるからその可能性は低いだろうけど、蓬ちゃんが私にお金を使わせたと怒られるかもしれない。


 せっかくの誕生日だから葉山様を怒らせることも、蓬ちゃんが怒られることもはさせたくない。

 誕生日は笑顔で過ごしたいものだから。


「わかった。ふたりのひみつね」


 ちょっと悪戯っぽく笑う蓬ちゃん、プライスレスです!

 守りたい、この笑顔!


 蓬ちゃんに二千円を渡して、会計する。


 予想外の出費だけど、葉山様が入場無料券を持ってたので思ったよりも少ない。


 なんでも知り合いからもらったそう。


 服といい、葉山様って実はお金持ちのパトロンでもいらっしゃるでしょうか?


 いやいや、芸能人じゃない高校生にそんな人いるわけない。


 うん。私の勘違い、勘違い。


「……ちょっとあんた」


 会計が終わった頃を見計らったかのように三人の女の子が目の前に立っていた。


 三人ともおしゃれな美人さんで、特に私に話しかけてきた真ん中の人はモデルみたいだ。


 すらっとした体格とはっきりした顔立ちは見惚れてしまいそう。


 もちろん、こんな綺麗な人達に知り合いはいない。


「えっと、どちら様ですか?」


 当たり前のことを聞いたつもりなのに、なぜか三人に睨まれてしまった。


 ちょっと待って!?

 私が忘れてるだけで知り合いだったとか?


「私を知らないなんて、吐くならもっとまともな嘘を吐きなさいよ!」 


 まさかの知り合いだったパターン!?


 いくら考えても心当たりが全くないんですがそれは?


 そもそも小中学校のクラスメイトとかいわれても、ゆーくんと葉ちゃんしか覚えてませんよ。


「場所を変えるからついてきて」


 返事をする前にガッシリと腕を掴まれ、引きずるように土産屋さんの外へ連れ出された。

 

「蓬ちゃん、お兄さんに私がちょっと外に出てるって伝えててくれますか?」


 引きずられながら、蓬ちゃんへ伝言を頼む。


 蓬ちゃんは小さく頷いた。


 よしこれで急にいなくなったことで迷惑かけるってことはないと思う。

 

 私は目的地につくまでそのまま引きずられた。

Q.休日の過ごし方は?


虎刈り赤さん「また俺も答えるのか?向井さん達とだいたい同じだ。時々ゲーセン行ったりするくらいか」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


虎刈り赤さん「そうだな……笑顔が可愛い人とかいいよな。向井さん違いますよ!高槻のことじゃないっすから!そんな今にも人を殺しそうな目で見ないでください!」

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