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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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ゴシップは真っ赤な嘘ですか!?

 54話の新学期はサバイバルですか!?その2で、出てきた歌手の『new』の複数交際騒動終結への話。

 和貴さんに会った翌日の夜。


 バイトも終わり、夕ご飯も食べ、お風呂にでも入るかと思っていた時だった。


 ドタドタと騒がしく階段を駆け上がる音がしたと思えば、部屋の扉を激しくノックする音が聞こえた。


 私は学習する女である。


 癒詩に至福の時間を邪魔されてから部屋の鍵を有効活用している。


 椅子から立ち上がって、部屋の鍵を開けると予想通り、癒詩が立っていた。


 でもその様子はなにやら焦っているみたいで珍しく息が上がっている。


 まるで隠していた過激なエロ本とAVが母にバレたかのようだ。


「そんなに焦らなくても大丈夫だよ、癒詩。綺麗な年上お姉さん系が好きって私も母様も知ってるから。隠し場所がベットの下だったのはベタで笑えたけどね」


 すると癒詩は耳から首まで真っ赤に染める。


「なんで姉ちゃんと母ちゃんがエロ本の隠し場所知ってんだよ!?だいたいあれは全部俺のじゃないし!ほ、他のやつらから押しつけられただけだから!」


 うん。うん。 

 そんなにいいわけしなくとも大丈夫。


 癒詩にエロ本とAVを買う度胸がないことくらいちゃんとわかってるよ。


 あとバレるのが嫌なら自分で掃除すればいいのに。

   

 思わず生温かい目で見てしまったのは不可抗力。 

 私と違って弟の健全な成長が微笑ましいよ。


「それをいいに来たわけじゃないの!姉ちゃんの好きな歌手が生中継で記者会見してるんだよ!」


 私の好きな歌手?

 それってもしかしてnewさん!?


「嘘!?チャンネルは何!?」


 癒詩と入れ替わるように部屋を出て、リビングへと駆けこむ。


 テレビがあるのはリビングだけ。


 直接カーペットに座って画面を凝視する。


 バイト中に記者会見をすることが決まったのかもしれない。


 そこに映っていたのはnewさんだった。


 銀色の髪は何日もお風呂に入ってないようにぐしゃぐしゃで脂が浮いてる。


 赤い目は乾いた血のような濁った色をしていて、肌は病的なほど青白い。


 マンガやアニメの登場人物に見劣りしない美貌を持っていた数週間前の姿とは似ても似つかない。


 まるで幽霊みたいに生気のない顔をしていた。


 それなのに記者達の詰問は止まらない。


 newさんは何も答えず、ただ虚ろな目でうつむくだけで、とても見ていられるものじゃない。


 これじゃ公開処刑じゃないか!


 憤るものの私の思いが画面の向こうに届くわけもなく、ただ歯がゆい!


 だけどちゃんと彼にの元にも“英雄(ヒーロー)”が現れた。 


 記者会見の会場の扉を乱暴に開け放ち、堂々とした足取りで壁際を歩き、しゃんと背筋の伸びた綺麗な姿勢でnewさんの隣に立つ。


 世界に名を轟かせる大企業『ビームカンパニー』社長『四方山久遠(よもやまくおん)』の登場に、騒がしかった会場が静まり返っている。


 きっと誰もが思ったはずだ。

 

 なぜ世界で名を知らぬものはいないとすらいわれる彼が新人歌手の一人に過ぎないnewの記者会見に出てきたのかと。


「この場にお集まりの皆様、並びにファンの皆様、、そして世間の皆様、うちの新人歌手newが多大なご迷惑をおかけしていることを心からお詫び申し上げます」


 四方山社長は深く頭を下げる。


 一早く我に返った記者が会場にいる人間を代表して質問をぶつけた。


「なぜあなたがこの場に?」


 四方山社長は顔を上げ、その質問に答えた。 


「別件の商談で少々遅れてしまいましたが、我が社の歌手の記者会見に社長である私が出るのは当然のことでしょう」


 特例のはずなのに、否定を許さないはっきりとした口調でいわれてしまえば誰も反論することが出来なかった。


「さて私のせいで脱線した話を戻させていただきましょか」


 四方山社長の言葉に静まり返っていた記者が勢いづく。


 そして再びnewに向けられた詰問に野次までが飛ぶ。


 司会者の声も彼らには届かない。  


 また混沌とし始めた会場を静めたのは、四方山社長の言葉だった。


「皆様、聖徳太子という人物をご存知ですか?」


 唐突な四方山社長の言葉に会場の人間は戸惑うのにも気にせず、さらに言葉を重ねる。


「彼は一度に七人もの人の言葉を聞き、そして理解したといわれています。ですが、私はただの人間です。一度に皆様の貴重な意見をお聞きすることはできません」


 つまり質問に答えるから一人ずつ発言してほしいといっていた。


 記者は言葉の意味に気づき、途端に黙ってしまう。


 あれだけ騒がしかった会場が嘘のようだ。


 四方山社長は現れてたった数分で会場を完全に掌握している。


 それも圧倒的な暴力ではなく言葉のみ。

 黙ったのは記者だけではない。


「そ、それでは会見を続けさせていただきます」


 四方山社長の視線に司会者が慌てて自分の仕事に戻る。


「newさんが複数の女性と交際していたことを四方山社長は把握していたんですか!?」


「把握も何も全て事実無根です」


 一瞬だけ会場が静まり、すぐさま盛大な野次が飛び交う。


「証拠は出てるんだぞ!」


「権力で事実をねじ伏せる気か!」


 そんな言葉を受けても四方山社長の態度は崩れなかった。


「では証拠をお見せしましょう」 


 それから先は一方的な展開だった。

 

 記者からの詰問を四方山社長は証拠を添えて論破していく。


「ではなぜnewが肯定も否定もしなかったか?皆様も疑問に思われたことでしょう」


 四方山社長は焦らすように会場中を見渡す。


 確かにnewさんは一度も何も答えていない。

 

 事務所から止められていたと思っていたけど、違ったみたい。


「答えは脅されていたからです」


 え?脅されてた?誰に?


「二人には“秘密”がありました。この事実を知る者は極限られた存在であり、彼らを裏切るような者はいなかった。……ですが、偶然知った人物が事実を悪用し、今回の騒ぎを起こしたのです」


 秘密を握って脅すなんてひどい!

 人として最低だよ!


「まずnewの秘密は彼が『吸血鬼』と呼ばれる存在であることです。混血が進み、物語のような吸血鬼の特徴は減りましたが、力は人のそれをはるかに超えています」


 newさんが吸血鬼!?


 ……でもなんか納得。

 あんなに綺麗な人がただの人間なわけないよね。


 だから過激なファンが多いんだ!

 なるほど、なるほど。


「次にフォールの秘密ですが、彼は俗にいう“性同一性障害”で、身体は女性ですが、精神は男性です」

 

 な、なんだってえ!?

 フォールさんは男で女……いや女で男だったなんて!?


 四方山社長は指を鳴らす。


 壁際に控えていた部下らしい人が辞書のように分厚い紙束を彼に渡した。


「これが彼の診断書です。彼には月に一度の割合で国内外で権威のある精神科医に受診させています。彼が自覚をしたのは幼少期のことで、それからずっと性別の差に苦しんできました。それを受け入れたのはここにいるnewです」


 診断書を机に置くと重みで大きく軋む音がした。


 多分、数年分くらいはあると思う。

 でもフォールさんはそれよりも前から苦しんできたんだ。


 フォールさんは数年前にラジオで、なんでもないみたいに親に勘当されたっていってたけど、あれは性同一性障害のことがあったかもしれない。


 もしそうならフォールさんは両親から自分を認められなかったことになる。


 なんて悲しいことなんだろう。

 性別が違ったってフォールさんはフォールさんなのに。


 フォールさんを受け入れてくれたのは幼い頃からの友達シュガーさんともう一人。


 ファンだった……いや今でもファンの“new”さんだ! 


「ここで公式サイトへ寄せられたファン方の言葉を読ませていただきます」

   

 なんでこのタイミングでファンの言葉が入るの?


『今回、このような騒動が起きたことに大変驚きました。


 しかし、私は全て偽りであると確信しています。

 

 それはnewさんはフォールさんに惹かれ彼を誰よりも愛し、そしてフォールさんもまたnewさんを愛しているからです。


 誰かを愛するのは人間の特権です。

 

 騒動を起こした人物の真意はわかりませんが、人の愛を邪魔するような野暮なことは誰にも許されない悪であり、何もせず二人を見守ることこそが善です。


 誰になんといわれようと私は二人を全力で応援させていただきます。


 なぜなら私は彼らの歌声に魅了された一人のファンだから』


 こ、これって!

 この間、私が勢いでコメントしたやつだ!


 四方山社長はなぜこれをチョイスした!?


 全国生中継されてるとかなんて公開処刑!?


 穴があったら埋まりたぃいいいいい!

 誰か今すぐ埋めてぇえええええ!


「残念ながら名前はわかりませんが、この方の言葉に熱く胸を打たれました。今回の騒動を起こしても二人を信じてくださるファンがいてくださったのだと強く思えました」


 四方山社長はちゃんといいたいことをわかってくれた。

  

 そう。私は二人を信じてるよって伝えたかったんだ。


 まさか全国生中継されるとは思わなかったけど、言葉にしてよかった。


 言葉にしたから伝えることができたんだ。


「今回、このような騒動を起こしたことを深くお詫び申し上げます。しかし、newもフォールも被害者であったことをご理解いただきたく思います」


 四方山社長はもう一度深く頭を下げた。


「……社長、何をいってもいいですか?」


 newさんが口を開いた。


 ややかすれた声だったが、強い意志がこめられていた。


「いいだろう。ただしゴールデンタイムだということを考えた上での発言だ」


「……ありがとうございます」


 数週間ぶりにnewさんが笑顔を浮かべた。


 マイクを片手に持って、開いた手を机に勢いよくついて立ち上がる。  


 勢いがよすぎて机が真っ二つに折れるというハプニングが起きてるのに、四方山社長もnewさんも気にしない。  


 二人とも気にしようよ!?

 会場中の人がドン引きしてるからね!?


「騒動を起こして申し訳ありませんでした!」


 newさんは四方山社長と同じように深く頭を下げる。


 かしこまって聞くから何をいうのかと思った。


ほんとはnewさんも被害者だから、謝る必要はないのにも、有名人って大変だなあ。

 

 なんて思っていたらことごとく裏切られた。

 

「今回の事態になったのは全て僕の“愛情表現不足”からです!」


 ……………………愛情表現不足?

 今までも各所でフォールラブを叫んでましたよね?


 おかげでよくフォールさんに鉄拳制裁を食らって、それでも喜んでましたよね?


 あれで愛情表現不足って……newさんはどこまでヤるつもりなんだろう?


「手始めに結婚します!」


 それ手始めじゃなくてゴールですよ!?

 

「次に子供を作ります!」


 ゴールデンタイムって意味わかってます!? 

 お子様も見てるんですよ!?


 今、全国の茶の間の空気が凍りついてますよ!?  


「髪の毛先から血の一滴、細胞の一つまで僕はフォールを愛してます!」


 ここでヤンデレ!?

 もうnewさんが上級者すぎてついていけない!


 いつからそんな風になってしまったんですか!?


 いや、もともとこういう人だったなあ……。


 ……うん。もうね、責任とってフォールさんが受け入れるしかないと思うんだ。

 

 この人はいろんな意味で他人の手に負えない。

 

 波乱と混沌に満ちた記者会見は一応、嘘だったってことで結論づいた。




 さらに後日に結婚記者会見が行われ、調子に乗りすぎたnewさんがフォールさんに鉄拳制裁をされたのは、また別の話。

Q.三浦和貴の第一印象は?


高槻憩「ワイルドで葉山様とは違う男らしい色気のエロい人ですね」



Q.三浦和貴の現在の印象は?


高槻憩「弟思いの優しい人ですね。あと見た目通りにエロいことが好きな人です。おっぱいの大きさだけで決めるなんて失礼ですよ!大きさだけで判断するものではありません!おっぱいは自由なんです!あ!和貴さん、わらわないでくださいよ!」


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