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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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新学期はサバイバルですか!?その15

 瑞貴ちゃんの兄『和貴』が現れた! 



 「あーな」=「あー、なるほどな」

 六時間目が終わった教室にはゆるやかな雰囲気が流れる。


 ……だったらいいのに。


 今日も朝から向井様の機嫌が最高潮に悪い。


 眉間のシワが一生消えないんじゃないかってくらい深く刻まれてる。


 全身から漂う不機嫌オーラに周りの人達もピリピリと張り詰めた雰囲気になっている。


 葉山様はご帰宅なさってるし、四分一様と城野様はどこかへと行ったきり。


 もうね……この年で胃潰瘍になりそうです。


 こういう時は教室から去るに限る!


 今日は掃除の日だから帰れないけど、ここにいるよりはずっといい。


 そうだ!

 信号機頭さん達とこの間のゲームの続きをしよう!


 そうと決まれば張り切って掃除を終わらせましょう!


 意気揚々と荷物を片手に立ち上がった時。


 スマホをいじっていた関元様が立ち上がり、向井様に何やら耳打ちした。


 耳打ちとか、なんか人に聞かれたくない特別な秘密を話してるみたいで萌える!


 普段ならそう思えたかもしれない。


 でも、その時の関元様の表情はなくて、ただ冷たいと感じた。


 とても、とても、いやな予感がする。


 ちなみに私の嫌な予感の的中率は八割弱だ。


 ……うん。なにも見てない。聞いてない。

 

 さあ!今日も音楽室をピカピカにするよ!


「……おい」


 なにも見てない。聞こえない。


「てめえだ!そこの黒眼鏡チビ!」


「うヒャい!?」


 背後からの怒声に飛び上がる。


 え?私ですか?


 恐る恐る振り返るとそこには般若がおられました。

 

 え?ええ?また無意識になにかやらかしましたか……?


 冷や汗をだらだらかきながら、気合いで向井様と視線を合わせる。


 気を抜くと怖すぎて、高速で目線をそらして、さらに怒らせてしまいそうだから。


「あそこに誰が来ても俺達じゃねえなら絶対に扉を開けるなよ」


 ……なんですか、その幼い子に留守番させる時のような言葉は。


 私をいくつだと思ってますか? 

 それくらいできますよ。


 構えていた分、落差がひどい。

 

 ため息が出るのも仕方ないよね。


「かしこまりました、御主人様。他になにかございませんか?」


 せめてものお返しにと、メイドっぽく話してみた。


 でも、まあ、向井様がこのくらいで動揺するわけが……。


「あー、他は……」


 向井様は私から視線をそらして、口ごもった。


 眉間のシワがさらに二、三本増えている。


 まさかかなり動揺してる!?


「他は何もねえ。いいか?絶対に開けるんじゃねえぞ」


 そんなに念押ししなくても、一度も入れたことないのに……。


「重ね重ねかしこまりました」


 ちょっと皮肉を混ぜてみた。


 意味がわかった関元様は苦笑し、向井様は鼻を鳴す。


 その流れのまま向井様は立ち上がって、歩きだした。


 後ろを関元様が当然のようについて行く。


 く〜っ!

 主人と部下って関係もおいしいよね!


 お二人だけの特別な信頼関係を感じる!


 せっかくだし、私も流れに乗ってみよう!

 

「いってらっしゃいませ、旦那様」


 さっきと呼び方をは少し変えてみた。


 御主人様も萌えるけど、旦那様も同じくらい萌えるよね!


 今度はどんな表情をしてくださるんでしょうか?


 向井様は教室の扉の前で不自然に立ち止まると鋭い視線で私を睨んだ。

 

 大人でも逃げ出したくなる視線に全身が硬直する。


 まさに蛇に、いや虎に睨まれた気分。


 調子に乗ってすみませんでした!

 

 と、今ならジャンピング土下座が出来そうだ。


 睨まれていたのは数秒で興味を失くしたかのように視線を前に戻された。


 息をするのがぐんと楽になる。


 あの視線をずっと受け続けるのは辛いすぎる!

 もはや拷問!?


「……―――――」


 小声で何かをいわれたけど、聞き取れなかった。


 ただ関元様がものすごくびっくりした顔で向井様を見ている。


 いったいなにをいわれたんだろう?


 普通なら「いってくる」とか「待ってろ」だけど……。

 

 あの表情の向井様なら「首を洗って待ってろ」とか「後で覚悟しとけよ」しか考えられない!


 また自分で死亡フラグ立ててしまった!?


 がたがたと震える私を置いて、向井様と関元様は教室を後にする。


 その後を向井様のお友達がついて行く。


 すれ違う時に可哀想な子を見るような顔をされたのは気のせいじゃない。


 どうしよう……。

 

 とりあえずこれ以上の怒りを買わないように掃除をきっちりしよう!


 べ、別に現実逃避なんかじゃないよ!?


 慌てて旧音楽室に行って、全力で掃除をした。


 窓のサッシまで磨いたからいつもよりも時間はかかったものの、自分でも驚くくらいには綺麗になった。


 掃除用具を片付けて、着替えてしまえばもうなにもすることはない。


 額にかいた汗をワイシャツでぬぐう。


 春とはいえ体を動かすと汗をかくものだ。


 暇だから雑誌の整理でもしようかな。

 ほとんどエロ本だけど。


 そうだ!今日は出版社ごとに並べようかな?


 雑誌を並べていると扉を叩く音がした。


 いやこれは叩くっていうより蹴破る勢い!?


 四分一様が一回壊してかなり脆くなってるからそんな風にノックしないでもらえますか!?


 いやいや落ち着け、私!

 それよりも誰が来たかってことの方が大事でしょうよ!?


「ど、どちら様ですか?」


 声が震えてしまったのはしかたない。

 

 だって怒り狂ってる向井様だったらもう泣き出すくらいには覚悟が出来てない。


「あ?女か?」


 全く知らない声が返ってきました。


 ワイルドで男らしい、中々好みの声だ。


 ……この場合はどうしたらいいんでしょう?


「生物学上は女ですけど……?」


 なにいってんだ、私!?

 紛れもない女だよ!?

 

 落ち着け、落ち着け。

 ここは深呼吸をして……。


「生物学上ってなんだ?」 


 あ……私がいえたことじゃないけどこの人もちょっと残念な頭を持っているみたい。


「えっと女です!紛れもない女です!」


 なんでこんなことを扉越しに(しかも見も知らない人?)に主張しているんだろう?


「胸のサイズは?」


「……は?」


 なんでここでおっぱいの話になるの?


 あれか!?

 おっぱいの小さい人は女と認めないってことか!?


 失礼な!

 おっぱいの大きさは千差万別!


 みんな違ってみんないい!

 むしろ違うからこそいいんだ!


「お前おもしれえな!」


 なぜか相手に笑われてしまった。


 もしかしてまた声に出てた!?

 おっぱいを熱弁するとかなんか変態すぎる!


「お前の名前なんてえんだ?」


「人の名前を聞く時は自分から名乗るのが先では?」


「ああ……いってなかったか?俺の名前は三浦和貴かずきってんだ」


 三浦さん?


 三浦って瑞貴ちゃんと同じ苗字だよね?

 

 いやいやあんな可愛い瑞貴ちゃんと正反対の和貴さんが知り合いなわけないって。


「私は高槻憩です」


 和貴さんが絶句したのがわかった。

 

 なんで!?

 そんな変な名前じゃないと思うんだけど!?


「……お前が高槻か」


 え?私の知らないところで噂になっているんですか!?

 なにそれ、怖い!?

 

「あ、瑞貴しらねえか?迎えにきたんだけど見つからねえんだ」


 まさかの知り合い!?


 でもちょっと待って!

 私の早とちりかも知れないから確認を取ろう。


「瑞貴さんってどんな人なんですか?」


「女の格好してるやつ」


 ほんとに知り合いだった!?


「えっと和貴さんと瑞貴さんはどんな関係なんですか?」


 もしかしてぼーいずにらぶな関係ですか!?


「ただの兄弟だ」


 ……どこらへんがただの兄弟なのか詳しく聞いてもいいですか?


 少なくとも扉を蹴破ろうとするくらい強烈なノックをする兄と女装癖のある弟はただの兄弟とはいいがたいと思います。


「母親がちげえから顔とか全然似てねえんだ」


 そういう次元じゃないような気がします!


 でも嘘をいっているような感じはない。


「すみません。瑞貴さんがどこにいるのか知らないです」


「あーな。お前なんでここにいんの?」


 今それを聞きます!?

 最初に聞くことじゃないですかね!?


「えっと、留守番を頼まれてるんです!」


 間違ってないけど他にいいようはなかったのか、私よ!?


「留守番か。頑張れよ」


 なんか応援されてしまった!?

 適当だな、この人!?


「ありがとうございます。和貴さんも気をつけてくださいね」


 この学校はいろいろ物騒だし。


 すると和貴さんは声をあげて笑った。


 ええ?なんで!?

 

「ははっ!んなこといわれたのは初めてだ!」


 なるほど、和貴さんは気をつけるまでもないほどお強いのですね。


 でも思う。


「心配されないくらい強くても怪我したら痛いじゃないですか」


 ぴたりと笑い声が止んだ。


 あ、また変なこといってしまった!?


「し、心配されないとか失礼なことをいって、す、すみません!」

 

 見えないとわかっているのに頭を深く下げる。


「あーな。寛が惚れた理由がわかった」


 今、和貴さんは『寛』っていわなかった?


 ゆーくんは瑞貴ちゃんと知り合いらしいし、和貴さんとも知り合いなのかも?


「俺、行くわ。またな」


「え?ちょっとまだ聞きたいことがあるんですが!?」


 和貴さんは私の言葉を無視してどこかへと行ってしまった。


 ……自由な人だなあ。

 誰かに目をつけられて怪我をしないといいけど。


 とりあえず和貴さんが瑞貴ちゃんと無事に会えるように祈っておこう。


Q.休日の過ごし方は?


城野涼「拓哉さんと一緒です!時々、姐さんも一緒ですね!」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


城野涼「姐さんみたいな綺麗な黒髪で、姐さんみたいに小柄で華奢で、姐さんみたいに優しくて、でも拓哉さんみたいな人にも立ち向かうくらい強い人ですね!」

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