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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
67/111

あっさり見つけた探し人 後編

 これで終わりだ!

 ……という感じの瑞貴ちゃん視点。


 

 ※ひっそりと番外編始めました。

 次の日の昼休み。

 俺は高槻先輩とさらに仲良くなるためにお昼ご飯を一緒に食べようと思った。


 でも直接教室に乗りこんだら、城野涼と関元湊にボコられそうだし……。


 高槻先輩が一人で行動してくれたらいいんだけど、そんな都合のいいことにはならないよなあ。


 てきとーに歩いていたせいか、特別教室ばかりの棟へ来てしまった。


 授業が終わった廊下や教室には誰もいない。


 中庭や他の教室に廊下はうるさいくらいの狂騒に包まれてたのに、ここらへんだけ切り取られたみたいに静かだ。


 ふいにガタガタと扉の開く音がした。


 音の方を見れば、高槻先輩のクラス担任(クラスメイトに聞いた)の阿部が慌てて飛び出してくるところだった。


 俺に気づいた阿部はまっすぐにこっちにやってくる。


「君もこの教室を来たんですね。私は加東先生に呼ばれてこれから保健室に行かないといけないので好きに使ってください」


「えっ?」


 身構えた俺の前に差し出されたのはどこかの鍵。


 え?なんでこんな物を俺に?


「鍵は保健室か、職員室に届けてくれると助かります。あと危険な薬品も置いてますので棚の中の物には触らないでくださいね」


 俺の疑問を無視するかのように阿部はその場を後にした。


 その足取りが軽かったのは気のせい……だよな?

 ……気のせいってことにしておこう。


 なんとなく受け取った鍵と一緒に『生化学準備室』のプレートがついていた。

 

 生化学準備室は阿部が出てきた教室だった。


 何が置いてあるのか警戒しながら入ったものの、中は教室の半分もない広さで、薬品と実験器具が詰まった棚と人が三人くらい座れる机と椅子が二つあるだけ。


 阿部は“君も”っていってたから他にもよく誰かがここに来るのか?


 とりあえず近くにあった椅子に座ると廊下から足音が聞こえてきた。


 耳をすませると足音は近くなり、やがて慎重に扉が開く。


 なんとタイミングがいいことにやって来たのは高槻先輩だった!


 俺は逃げる高槻先輩を捕まえて生化学準備室に連れこんだ。


 なぜか怯えられたけど心当たりがありすぎてわからない。


 とりあえずまた逃げられないように教室の鍵を閉めて、近くの椅子に座らせた。

 

 わざとちょっと腕を動かしただけでぶつかりそうな距離に座ると困ったような顔をする。 


「三浦さん、ちょっと近くないですか?」


「え~?そうですか?これくらいふつーですよ?でも先輩がそういうならそうなのかもしれませんね。ちょっと離れますね」


 高槻先輩はくっつのはあんまり好きじゃないのかも?


 その証拠に少し椅子をずらして、鞄が置けるくらいのスペースを開けると、高槻先輩はほっと溜息を零す。


 高槻先輩って本当にわかりやすいなあ。


 さり気なく向井達との関係に探りを入れつつ話をする。


 幸いにも思っていたよりも深い仲じゃない。


 マジでよかった〜。

 これで向井拓哉と付き合ってるとかいわれたら血の海できてたと思う。


 あ、犯人は筧先輩ね。


 どさくさに紛れて名前呼び&タメ口をしてもらった。


 高槻先輩が俺に敬語とか使ってるところを筧先輩に見られたら半殺しにされそうだし。


 ついでに高槻先輩の名前呼び許可をもらった。


 憩先輩って押しに弱いらしい。

 いい情報ゲット!


 ちょうどいいから憩先輩に付き合っている人と片思い相手がいないか探りを入れるために、恋バナをしてみた。


 だけど、予想の斜め上の方へ話がそれた。


 そういう対象がいないことにとりあえずは安心したけどさ。


 でもいくら俺が男だと知らないからって筧先輩を勧めるとは思わなかった。


 ここまで相手にされてないと筧先輩がかわいそうになってくる。

 

 あ、これも報告しなくちゃいけないんだよな。


 なんか俺、殺されそうな気がする……。

 今から鳥肌と悪寒がするくらいには恐怖だ。


 憩先輩が『すごく優しい』って褒めてたっていえば許してくれるかな?


 それからは恋バナは止めて、この学校の話や俺の中学時代の話をした。


 憩先輩と過ごす時間はあっという間でもう昼休みが終わってしまう。


「じゃあ憩先輩!“また後で”」


 生化学準備室の前で俺は手を振る。


「うん。またね」


 憩先輩は俺の言葉の裏に隠れた意味に気づかずに別れた。


 俺は職員室に鍵を返しに行った。


 なんとなくだったけど、阿部は職員室にいなくて俺の判断は間違ってなかったと思う。




 六時間目が終わって憩先輩の元に行こうとしたらクラスメイトに引き止められた。


 こんな忙しい時に話しかけんなっての!


 窓の外を見れば憩先輩と関元湊が一緒に歩いていた。

 

 え!?あの二人ってそういう関係!?


 いや高槻先輩の反応からして違う!


 慌てて教室を飛び出して、憩先輩の元に行く。


「憩せんぱーい!」


 俺の声に気づいて二人が立ち止まる。。


「今から帰りですか?」


 追いついた俺は憩先輩の右隣に並ぶ。


「そんなところだよ。瑞貴ちゃんは?」


「私も今から帰るところなんです~。途中まで一緒に帰ってもいいですか?」


 俺は眉を下げて、目を潤ませて懇願する。

 

 男用の必殺技だけど高槻先輩にも効果があったらしい。


 高槻先輩は意見を求めるように関元湊の方を見る。


 そんなやつほっとけばいいのに……。


 拒否されると思ったのに、関元湊はあっさりと俺も一緒に帰るのを許した。


 でも一瞬俺を見た目は冷え切っていて感情が読めない。

 何を考えてる?


 高槻先輩をバイト先に送ると関元湊から出てくる雰囲気が変わった。


 冷たい刺すような雰囲気と無表情で俺を睨む。

 

 俺は関元湊に付き合うほど暇じゃないから無視して筧先輩達の元へ行こうと思った。


 だけど関元湊の言葉に足を止める。

 

「……何を企んでる、三浦瑞貴“くん”?」

 

「あはっ!俺が男だってバレちゃってましたか〜。さっすが関元さんですね」


 女装をしていることをいつかはバレると思っていたけど、昨日の今日でバレるとは思わなかった。


 伊達に向井拓哉の下にいるわけじゃないか。


「ごまかそうとしても無駄だよ。いっちゃんにつきまうとっているのは筧寛の指示だとわかってる。利用するつもりなら考え直した方がいい。彼女を傷つけるなら俺達は許さないから」 

 

 予想通りの言葉に俺は笑いがこみ上げてきた。


「……ふっ。あははははっ!利用ですか?あの人はそんなこと考えてませんよ」


「だったらなぜいっちゃんににつきまとっている?」


 関元湊はさらに感情を消す。

 その分だけ見えない圧力が増した。


「そんなの好きだからに決まっているじゃないですか」


 関元湊の無表情が崩れた。


 信じられないといわんばかりに目を見開く。


 あー、俺も初めて聞いた時は同じことを思った。

 筧先輩も人を好きになるんだってね。


「……誰が誰を?」


「だ~か〜ら〜筧先輩が憩先輩をですよ!」


 俺の答えに関元湊の顔がついに凍りつく。


「接点なんてないはずだけど?」


「同じ小学校らしいですよ。それからずっと片思いなんですって。一途ですよね〜」


 気分が上がっていく俺とは対照的に関元湊は下がっていく。

 

「……いっちゃんは今の筧寛がどんなやつか知ってる?」


 やけに重い口調は関元湊が筧先輩の“やばさ”を知っているから。


「多分、知らないんじゃないんですか?小学校以来会ってないって聞きましたし」


 関元湊の顔が少しだけ緩む。


 だがすぐに引きつることになった。


「『やっと見つけたから今度は絶対に逃がさない』。あの人はそういってましたよ」


 今の俺は多分、今まで一番いい笑顔をしていたと思う。


 さすが筧先輩。

 たった一言で相手をここまで翻弄するなんて。


「関元さん達の方こそ考え直した方がいいですよ。あの人がキレたらどうするのか俺にもわからないんですから」


 もしかしたら死人が出るかもしれませんね。


 と、笑顔で付け加えれば関元湊は何もいわなくなった。


 俺は背を向けて歩き出した。


 これから向井達がどう行動するのか。


 なにより渦中にいながら何も知らない憩先輩はこれからどうするのか?


 先の見えない未来にわくわくする。


 こんな高揚感はいつ振りだろう。


 憩先輩を手に入れるのは誰?

 そしてその先にある未来は?

Q.休日の過ごし方は?


向井拓哉「正義とか涼達のところでゲームしたり、漫画呼んだりしてることが多いな。外に出ると喧嘩を売られるからあんまり人が多い場所にでかけたくねえんだよ」


Q.好きなタイプ(恋愛対象)は?


向井拓哉「黒髪で、背は俺より小さくて小柄で、胸は俺の掌に収まるかそれより少し大きいくらいだな。顔は綺麗っていうより可愛い方で……あ?なに笑ってんだ、蓮?あいつに似てる?はあ?どこが似てんだよ。わけわかんねえ」


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