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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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あっさり見つけた探し人 前編

 意外に有名人な瑞貴ちゃん。

 入学初日。

 俺は朝から憂鬱な気分だった。


 理由はいうまでもなく、筧先輩に頼まれた人探し。


 いくら考えてもあんな大人しそうな女がこの学校にいるとは思えない。


 でも見つけられなかったらどんな八当たりをされるか検討もつかないくらい怖い。

 

 校門には道路工事現場のおっさんが着てるようなツナギに木刀を持った男が立っていた。


 その凶悪な顔はとても教師には見えない。


 校門をくぐり、まっすぐ進むと靴箱があった。


 すぐ側の掲示板に人だかりができていたから覗いてみればクラス分けが貼ってあった。


 流石に人数が多すぎて目的の人の名前は見つけられなかった。


 地道に聞きこみをするしかないか。


 ため息を吐くと声をかけられた。


「溜め息なんてついちゃってどうしたの?」


 声の方を見るとチャラそうな格好をした男だった。

 近くに同じような格好をした頭一つ大きい男が三人いる。


 下心が丸出しの視線にようやく自分の格好を思い出す。


 校則が緩いから女装をしていたんだった。

 

 中学まではちゃんと男格好をしていたから目の前のこいつらは俺が誰か知らないんだ。


 ちょうどいい。

 こいつらを利用しよう。 


「知り合いの先輩が入学してるって聞いたんですけど見つからないんですよ~」


 上目遣いでいつもより高い甘える声を出せば男達の顔が緩む。


 こいつらちょろいな。


「知り合いって向井拓哉か?それとも関元湊か?」


「あいつら目当てならやめとけ。最近“お気に入りのペット”が出来てそいつにはまってるから」


「確か先月にそいつに手を出した奴らが関元と四分一に半殺しにされたんだよな」


「城野なんてそいつに手を出して向井に怒られたところを助けられて惚れたらしいぞ」


 向井拓哉達のことはよく知っている。


 噂話を聞いたこともあるし、遠目から何度か実際に見たこともあった。


 でもあいつらのお気に入りのペットって?


 探し人とは関係ないと思ったけど、気を許してない人間には冷たいあいつらがそこまで執着する存在が気になった。


「ペットって女?それとも男?」


「女だ。名前は確か高塚だったけ?」


「いや“高槻憩”だろ?」


「え?」


 思わぬところで探し人の名前が出てきた。


「その人ってどんな人ですか?」


 でも焦りは禁物だ。


 筧先輩に嘘の情報を教えたりなんかしたら失敗した時よりも恐ろしいことが待っている。


「あ?あんま見たことないけどちびで黒髪で地味な女」


「二月ぐらいに向井達に追いかけられてたよな」


「理由は知らねえけど向井達に喧嘩売るほどの馬鹿だってことはわかったぜ」


 筧先輩に聞いていた特徴と一致するのがちびで黒髪の女ってことだけだ。


 同姓同名の他人だろうか?


 でも一応、気にしておくか。


「そうなんですね。親切にありがとうございます~。じゃあ、私はこれで」


 立ち去ろうとしたら手首を掴まれた。

 

 あ~。こういうのうざい。

 せっかく穏便に済ませようと思ったのに。


「ちょっと待てよ。いろいろ聞いといてお礼がそんだけなんてありえねえよな」


 掴まれた手首に力がこめられればその後のことなんて簡単に想像がつく。


「わかりました。じゃあ人目がない場所に行きませんか?」


 そういえば男達は気持ち悪いくらい顔を緩めた。


 幸せなのは今だけなのに。


 と、心の中でつぶやいた。



「お礼はこれで十分ですよね?まだ足りません?」


 俺は足元に転がる男達に問いかけた。


 でも誰からも答えは帰ってこない。


 だって俺にいやらしいことをしようとした奴らはスカートの下に隠し持っていた特殊警棒で叩きのめしたから。


 こいつらは一年生じゃないらしい。


 俺ていどにここまでやられるなんてぬるいなあ。

 それともこいつらが弱いだけ?

 

 一番近くにいた男の頭の側にかがんで、特殊警棒の先で顎をあげた。


 だって血まみれの顔とか触りたくないし。

 後で特殊警棒も洗わなきゃ。


「まさかお前……三浦瑞貴か?」


 男の怯えた顔と声ってどうしてこんなに苛立つんだろうね。


 綺麗さも可愛さも皆無だからかな?


「あはっ!俺のこと知ってたんだ〜」


 今さら気づいたところで遅いんだけど。


「なんでお前がこの学校に!?白藤高校じゃねえのかよ!?」


 こいつのいうことはもっともだ。


 白藤高校には筧先輩を始めに俺の兄貴やその仲間達もいる。


 でもさ、一つ大きな問題があるんだよね。


「通学に片道一時間もかかるとかだるいでしょ?」


 この格好すんのにどんだけ時間がかかると思ってんの?


 片道一時間分も早起きしてたら寝る時間なくなるっつーの。


 ならそんな格好すんなって?


 完璧な女装は成長期前の今しか出来ないんだからたくさんやりたいじゃん。


 バカやるなら同じ学校じゃなくてもできるし。


 まあそんなことはこいつらには理解できないだろうけど。


「まあ、安心してよ。俺に手を出そうとしない限り何もしないし、頂点目指したりしないから」


 俺は男達をその場に置いて、立ち上がる。


 制服を軽く払って、特殊警棒についた返り血を鞄から取り出した使い捨てウエットティッシュで拭き取る。


 なかなか汚れが落ちなくてちょっとムカついた。


 ウエットティッシュを男に投げつけて、特殊警棒をスカートの下にしまった。


「あ、そうそう。高槻先輩のこと調べてくれる?もしかしたら筧先輩が探してる人かもしんない」

 

 最後に爆弾を落として、連れこまれた空き教室を出た。


 男達からさらに聞き出した情報によると高槻憩は筧先輩が探している人の可能性がある。


 予想よりもずっと早く見つけられそうだ。

 筧先輩にいい報告が出来る日も近いかも?


「高槻先輩、どこにいるのかな〜」

 

 俺はスキップしながら自分の教室に向かった。 

Q.屋斎十真十の第一印象は?


高槻憩「素敵なおじ様ですね。ワイルド系の色気がただ漏れでかっこよかったです!」



Q.屋斎十真十の現在の印象は?


高槻憩「直接話していないのでよくわかりませんけど、意外と世話好き?な人みたいです。向井様のことを気にされてましたしね。周りの人に気遣いもできる人でさり気なく優しいです!さらりといっちゃう、そこにしびれる、憧れるぅ!」

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