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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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新学期はサバイバルですか!?その10

 高槻の大きな勘違い。


 いつもより少し長いです。

 授業終了時間よりもかなり早く四時間目が終わって、私は教科書とかを少々乱暴に鞄に詰めこむ。


 今朝はうやむやにしちゃったけど、お昼になったら城野様から絶対何かいわれる。


 向井様の前で聞かれるとかなんて拷問すぎる!?

 

 だからそうなる前に教室から逃げるに限る!

 

 鞄を持って立ち上がった時、関元様に声をかけられた。


「高槻さん、そんなに急いでどうしたの?何か用事でも?」


「そんなところです!城野様が来たら今日はお昼は一緒にとれないっていってもらってもいいですか?」

 

 私は関元様の返事を聞く前に教室の外へと出ていた。


 後ろから関元様のため息が聞こえてきたけど気のせいだと思う。

 

 まだ静かな廊下を出来るだけ足音を消しつつ走った。


 目指す先は生化学準備室!


 阿部先生なら事情を察して昼休みが終わるまでかくまってくれるはず!

 

 幸いにも途中で城野様や喧嘩のバーゲンセールをしているお兄さん達に会うことなく、目的地へと辿り着いた。


 念のために周囲に人影がないか確認してから扉を開ける。


「あっ!高槻先輩!もう遅いですよ〜。私、お腹ペコペコです」


 扉を閉めて回れ右をして全力疾走した私は悪ぅない!


 なんでここに三浦さんがおるん!?

 

 さらには私の背後を軽やかな足音が追いかけてくる。


「つーかまえたっ!逃げるなんて高槻先輩ひどいです」


 三浦さんにガシッと腕を掴まれて強制停止させられた。


 向井様と城野様を振り回した私の逃げ足に追いつくだと!?

 この人、ただ者じゃない!?


「さっ!観念してくださいね。先輩にはいろいろ聞きたいことがあるんですから」


 三浦さんは生化学室まで私を引きずっていく。


 聞きたいことって一体なんですか!?


 私ごときが知ってることなんてたかがしれてますよ!?


「そんな泣かせ……こほん。怖がらないでくださいよ。ただのガールズトークですよ、ガールズトーク」


 三浦さん、知ってます!? 

 ただより恐ろしい物はないんですよ!?


 ろくな抵抗もできずに生化学準備室に引き戻されてしまった。


 ちゃっかり鍵までかけられてしまう。

 

「阿部先生なら加東先生に呼ばれて保健室に行きましたよ~。だから今は私と二人っきりですね」


 身の危険を感じるのは気のせいかな!?


 そもそも阿部先生と加東先生って仲良かったっけ?

 

 あ!怪我人が多すぎて保健室の手が回らないから手伝ってもらうために頼んだのかな?

  

 そういえば去年は何も知らなくてこき使われたなあ。


 きっと阿部先生は優しいから断り切れなかったんだろうなあ。


「はいは~い。先生達のことは放っておいてお昼ご飯にしましょ」


 三浦さんは私の肩を押して、近くの椅子に座らせた。


 何度も思うけどほんと力強いですね。

 

 その細い腕のどこに隠れているんでしょうか。


 さらに三浦さんは当然のように私の隣に座る。 


 生化学室にある机は人が三人くらい並んで座れる長机だ。


 なのに三浦さんはちょっと距離を詰めて座っている。


 ……うん。なんでそんなに近いのかな?

 ちょっと腕を動かしただけでぶつかりそうなんだだけど。 


「三浦さん、ちょっと近くないですか?」


「え~?そうですか?これくらいふつーですよ?」


 三浦さんはとぼけた顔でそういうけど、私にとっては近過ぎる。


 私は人との距離を最大限取りたい人なのでなおさら。

 そこ!今さらとかいわない!

 

「でも先輩がそういうならそうなのかもしれませんね。ちょっと離れますね」


 三浦さんは椅子をずらして、鞄が置けるくらいのスペースを開けてくれた。


 思わずほっと溜息を零す。


 やっぱり最低でもこれくらいの距離はほしい。


「それより高槻先輩、今日は関元さん達と食べないんですね~。昨日のことがあったからですか?」


 三浦さんがコンビニ袋から中身を取り出しながらそういった。


「いえいつも一緒に食べているわけじゃないですよ。むしろ一緒に食べ始めたのは昨日、一昨日からです」


「えっ!?そうなんですか?」


 なぜか三浦さんはすごくびっくりしたような顔で私を見ている。


 あれ?そんな変なこといった?


「はい。去年までは同じクラスになったこともなかったので、今日みたいに阿部先生と食べたりしてました。でも一番多いのは一人」


 見事なくらいに向井様と同じクラスにならなかったんだよね。


 だから今年もそうだと思っててびっくりしたなあ。


「先輩っていつから向井さん達と付き合っているんですか?もちろん恋愛的な意味じゃないですよ?今朝の先輩の反応で違うってわかりましたから」


 え?じゃあなんで城野様といい争ったんですか?


 思っていたことが顔に出ていたのか、三浦さんがちょっと拗ねたように唇を尖らせる。


「だってあのちっこいが先輩と仲良さそうでちょっとうらやましかったんですもん」


 ……え?あれってそんな理由だったの!?


 なにこの娘!?可愛すぎるよ!?


「向井様とは一か月くらいになりますね。ちょっといろいろあって今の感じに……」


 ええ。ほんとにいろいろありました。

 生まれて初めて命の危機を感じたりとかですね……。


「そうなんですか?なら私にも先輩と仲良くなるチャンスはありますね!」

 

 三浦さんは嬉しそうに笑った。

 

 私の何百倍も可愛い笑顔だ。

 四分一様とか城野様とは別の意味で癒される。


 女の子ってこんなに可愛いんだ。


「じゃあ!とりあえずこれからは私のことは瑞貴って呼んでくださいね!あと敬語も無しですよ?」


「え?」


 いきなりなんてハードルの高いことを要求するんですか!?


 名前呼びなんて会って三回目の人にすることじゃないですよ!?


「憩先輩って呼んでいいですか?それとも憩お姉さまの方がいいですか?」

 

 三浦さんはずいっと空けたスペースを詰めて身を乗り出す。

 残りのスペースは十センチくらい。 


 さっきから思ってましたけど、三浦さんってパーソナルスペースが狭すぎませんか!?

 

「三浦さん!近い、近いですよ!?」


「わざとです!」


 三浦さんははっきりといい切った。

 いっそ清々しいっ!?


「それで先輩はどう呼ばれたいんですか!?」


「えっと……先輩でお願いします」


「聞こえません」


 この距離で!?

 それ絶対嘘ですよね!?


「……先輩でお願いします」


 ……おおふ。

 こんなに露骨なスルーがあっていいのでしょうか?


 この至近距離で何かを期待するようにじっと見つめられるからちょっと気まずい。


「先輩って呼んでほしいかな?」


 葉ちゃんや家族じゃない人にため口で話すのが久々過ぎてなんか緊張する。


 日本語おかしくないよね!?


「はい、わかりました!憩先輩ですね!」


 花が咲くようなという感じのたいっへん愛らしい笑顔をちょうだいいたしました。


 三浦さんってどうしてこんなにあざといのに可愛いんでしょう!?


 もうもてあそばれたいって思ってしまうくらいです!?


「……ごちそうさまでした」


 もういろんな意味でお腹いっぱいです。

 

 不意打ちの萌え。

 プライスレス。


「憩先輩って小食なんですか?」


「そうでもないですよ。みう……瑞貴ちゃんは意外と食べるんだね」


 敬語&苗字呼びをしようとしたら、瑞貴ちゃんの笑顔がわずかに黒くなったから慌てて直した。


 うん。腹黒属性も持ってるんだね。

 今度から気をつけよう。


「そうですか?これくらいふつーだと思いますけど~?」


 そういって瑞貴ちゃんは二個目のパンを食べて、コーヒー牛乳を飲む。


 一個目は焼きそばパン、二個目はコロッケパンだった。


 ボリュームとカロリー重視なメニューですね。


 サンドイッチとレモンティーと食べてそうなイメージがあったから意外。

 まるで男の子みたい。 


 ふと気になることを思い出した。 


 そういえば瑞貴ちゃんとゆーくんはどのくらいの付き合いなんだろう?


「瑞貴ちゃんはゆーくんと付き合い長いの?」


「二、三年くらいですね……もともと兄貴が筧先輩と仲が良くてついでに私も仲良くしてもらった感じです。あ!とはいっても恋愛感情はありませんよ?」


「そうなの?瑞貴ちゃんは可愛いからモテそうなのに」


「私、しつこい人は嫌いなんです。それに追いかける方が好きですし~」


 その意見には納得する。

 瑞貴ちゃん、見た目から肉食系だよね。

 

「憩先輩は好きな人とかいないんですか?」


「そんな人いないよ。瑞貴ちゃんの方こそ誰かいないの?」


 好きなカップルはいるがな!

 今話題のnewさん×フォールさんとか!


「それがさっぱりでどこかにいい人いませんか~?」


 それを私に聞くんですか?


 四分一様は橙さんがいるし、関元様はお互いに好きなタイプじゃないと思う。

 

 城野様と葉山様は論外。


 向井様はよりどりみどりだから誰でもよさそう。


「ゆーくんはどうですか!?すごく優しいですよ」

 

 そうだよ! 

 同じ学校だったらそれなりに仲がいいだろうし、瑞貴ちゃんみたいないい子だったらきっとゆーくんも好きになるよ!


 ゆーくんは優しいから彼女思いのとってもいい彼氏になってくれる!


「いや筧先輩はそういう対象じゃないです……」


 瑞貴ちゃんの笑顔がちょっと引きつった。


 仲がいい分だけ悪いところも知ってるのかも。


「そうなんだ」


 それからは恋愛話は止めて、この学校の話や瑞貴ちゃんの中学時代の話を聞いた。


 こんな風に女の子と話したのは久しぶりで、あっという間に昼休みが終わってしまう。


「じゃあ憩先輩!“また後で”」


 生化学準備室の前で瑞貴ちゃんが手を振る。


「うん。またね」


 今までこんな風に話す後輩なんていなかったから瑞貴ちゃんとの会話は新鮮だった。

 

 城野様は後輩って感じがしないから余計にそう思うのかな。


 その時の私は瑞貴ちゃんの言葉の意味をよく考えずに別れた。

Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


屋斎十真十「拓哉達と反対の真面目そうな普通の女子高生だな」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


屋斎十真十「酒に弱いみたいだな。キレた拓哉に抱き着いて止めた上にわがままをいえるなんて相当仲がいいもんだ。つい年甲斐もなく羨ましいなんて思ったぜ。あんなに拓哉女にがうろたえた姿を見るのは初めてだったぞ。俺もあいつといつかそんな風になりたいものだな」

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