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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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新学期はサバイバルですか!?その8

 冷戦勃発?

 保健室の扉には黒字で『入室厳禁』と書かれた赤い紙が貼り付けてあった。

 

 これはやばい。

 今すぐ戻った方がいい。


 頬を冷たい汗が伝う。


「これなんですか~?保健室なのに入室厳禁って意味不明です」


 三浦さんが不思議そうに首を傾げる。


 今、私達の目の前に貼られているこれは保健医の加東先生の自作した物で、通称『赤紙』。


 この紙が貼られている期間に用も無しに保健室に入ると、地獄を見ると在校生の間では有名である。


 一昨年も去年も新学期から一週間後に貼られていたのに、今年は三日目。


 理由は知らないけど早すぎる。

 今年は異常だ。


「先輩!?顔色悪いですよ!?体調が悪くなっちゃったんですか!?」

 

 三浦さんが本気で心配してくれるのがわかった。


 でも顔色が悪いのは体調のせいじゃない。

 

「だ、大丈夫です。それより家に帰りたいので更衣室に鞄を取りに行きましょう」


 今日は掃除の日だけどこの体調じゃ無理。

 

 通りすがりに誰かがいたら休むことを伝えてもらおう。


「何も手当しないで帰るなんてだめです!鞄なら私が持ってきます!」


 三浦さんは私を引きずるように保健室に入ろうとする。


 見た目は細いのにどこにそんな力があるの!?


「だ、大丈夫です!だから離してください」


「だ~め~で~す~!ほら~観念してください!」


 嫌がる私に対して三浦さんがなんか楽しそうなんだけど、気のせいかな!?

 気のせいだよね!?


 こんな可愛い顔してドSなわけないよね!?


 三浦さんは『赤紙』のことを知らないから、躊躇なく扉を開けた。


 そこから漂ってきたのは血の匂いと呻き声。


 ベットの数が足りなくて、床に直接座っている人達もいて、その体には赤くにじんだ包帯が巻かれている。


 包帯の隙間からわずかに見える肌は擦り傷や切り傷がついていたり、痣が出来ていた。 

  

 喧嘩で怪我した人が溢れるサバイバル期間の名物であり、赤紙の原因である。


 そしてそのせいで大変忙しい思いをしている加東先生は超絶に機嫌が悪い。

 

「……てめえら入室厳禁の張り紙が読めねえのか?」


 怪我人の手当をしていた先生から、巻き舌気味の地を這うようなひっくい声が背中越しに向けられた。


 向井様と別の意味で怖い!?

  

 今からでも遅くない!

 三浦さん、ここから出ましょう!


「怪我人連れてきました~。そこのむっさいのは後回しにしてこの人を先に治療してください」


 三浦さんは怯える様子もなく、先生の前に私を突き出した。


 え?なんでそんなに平然としてるんですか!?

 

 在学生でも怯えて逃げ出す今の先生が怖くないんですか!?

 三浦さんは心臓に毛でも生えているんですか!?

 

「素人が口出しすんじゃねえ!大人しく待って……」


 先生は振り返ってそのまま目を見開いた。


「す、すいません!私のことは大丈夫です!後回しでいいので他の人を手当てしてあげてください!」


 また性懲りもなく怪我したことを怒られると思って、謝りつつも三浦さんの言葉を否定する。


 先生は治療中のお兄さんを放り出して、私達の方へ歩いてきた。


 ほんとに反省しているんです!

 だからチョップはやめてください!


 とっさに頭を庇った。けど……


「お前……こいつに何した?」


 先生は私を通り越して三浦さんの胸ぐらを掴んで持ち上げた。


 えぇええええ!?

 先生、どんな誤解をしているんですか!?


 って!?

 そもそも先生が無抵抗の生徒に手を上げちゃダメですよ!?


「私は何もしてませんよ~。ただ同級生が高槻先輩を体育館倉庫に閉じ込めたとかいうんで見に行ってみたんです。そしたら~先輩がほんとうにいて、しかも傷だらけで私も焦っちゃいました」

 

 先生の冷たい態度にも関わらず、三浦さんは平然としている。


 そのメンタルが心底うらやましいです!


「それを信じられると思うのか?」


「共犯ならわざわざここまで連れて来ません~。だいたい私に高槻先輩と仲良くなる理由はあっても傷つける理由がないです。というか私を責める暇があるなら先輩を治療してくれません?」


 先生は舌打ちをして、三浦さんを離した。


 私の方を見て、適当な空いてるパイプ椅子を持ってきて座らせてくれた。


 素直にそこ座ると先生は消毒液と包帯とガーゼとかを持って、手当を始めてくれる。


「おい、高槻!俺はお前に怪我するなっていったよな?」


「……はい。そうおっしゃられました」


 城野様と仲良くなる前にそう約束させられたんです。


「なのにまた怪我するってどういうことだ?確かお前は向井達と同じクラスなんだよな?」

 

 忘れていたわけじゃないんです!

 それにいつでも一緒にいるわけじゃないんです!

 

「本当にお前はこの間から厄介ごとばかり巻きこまれやがって学習能力があるのか?」


 全部、不可抗力なんですけど。


 思っていたことが顔に出ていたのか、たっぷりと消毒液のついた綿を傷口に強く押し当てられた。


 痛い!痛いですよ、先生!


「……厄介ごとですか?先輩、何に巻きこまれたんです?」


 あれ?おかしいな。

 三浦さんの方からどす黒いオーラを感じる。


「ああ。お前は新入生だから知らないのか。こいつは向井達に喧嘩売って」


「あー!その話は止めてください!そもそも私は喧嘩を売ったつもりなんてないです!」


 先生の言葉を途中で遮る。


 向井様に喧嘩を売ったなんて正気の沙汰じゃない。


「でも結果的にそうなっただろ?」


「うっ!でもおかげで四分一様と関元様と仲良くなれたからいいんです!」


「お前の神経どうなってんだよ。図太すぎるぞ」


 先生は本気で驚いたような顔をする。


 失礼な!私の神経は極細の髪の毛よりも繊細です!

 毎日、向井様の隣で胃が痛いんですから!

 

「よくわかりませんけど先輩はこの学校“にも”お友達がいるんですね!」


 まだ友達といえるほど仲良くないからあいまいに笑っておく。


「にもってお前は高槻の友達を知ってんのか?」


「はい。私の最近知ったんですけど、小学校以来のお友達なんだそうですよ~。高槻先輩も覚えてますよね!」


 小学生以来の友達?

 そんな人いたかな?


「まさか先輩、思い出せないんですか?筧寛先輩ですよ~」


「あ!ゆーくんか!」


 フルネームを聞いて、昔の愛称と共に思い出した。


 ゆーくんは昔、近所に住んでいた同じ年の男の子で日が暮れるまでよく遊んだっけ。

 

 お互いに引っ越しちゃってそれ以来会ってないなあ。


 懐かしい名前に頬が緩む。


「でも三浦さんはどうしてゆーくんのこと知ってるんですか?」


「同じ中学なんです。中学の時の筧先輩はかっこよくて優しくてモテモテでしたよ。あ、いえ。今もですね~」


 それなら知っていても不思議じゃない。

 

 小学生の友達だった私のことを覚えていてくれてたんだ。

 すごく嬉しい。

 

 でも同じくらい恥ずかしい。

 何も三浦さんに話さなくてもいいと思う。


 もしかしたら他の人にも話してる?

 なんかもっと恥ずかしくなってきた!


「ゆーくんからどんな話を聞いてます?」


「話っているよりどれだけ高槻先輩が好きかを聞かされました~。先輩、愛されてますね」

 

 うらやましい~といいながら三浦さんは笑顔だった。


 三浦さんにとってゆーくんは恋愛対象じゃないみたい。


「私のことを覚えていてくれただけじゃなくてまだ友達だっていってくれてすごく嬉しいです!」 


 忘れてて申しわけないなあ。


 先生と三浦さんがそろってどうしようもない子を見るような顔をしていた。


 そんなに変なこといいました?


「高槻さんいますか!?」


 勢いよく保健室の扉が開いて息を切らした関元様が中に入ってきた。


 中に私がいるのを見て、関元様はほっとしたような顔をする。


「高槻なら見ての通りここにいるがどうした?」


「高槻さんが六時間目からいなくなっていたんでもしかしたらと思って探していたんです」


 その言葉で思い出した。


 そうだ!不可抗力だけど無断で掃除をさぼったんだった!?


「掃除をさぼってしまってすみません!」


 立ち上がって関元様に深く頭を下げる。


「いや高槻さんは今まで体育館倉庫に閉じ込められていたんだよね。助けるっていったくせに助けられなくてごめん」


 関元様が深く頭を下げる。


「そ、そんな私なんかに頭を下げないでください!多少は自業自得のようなものですし!こういうの慣れてますから!」


「高槻さんはなんかじゃないよ。本当にごめん。今後はこういうことがないようにする」


「いやいやそんな気にしないでください!こうしてぴんぴんしてますし!」


 ペコペコ合戦は三浦さんの言葉で終わった。


「そうですよ~。これから高槻先輩のことは私が守りますから関元さんがいなくても大丈夫です」


「それってどう意味?」


 関元様は表情を消して三浦さんの方を向く。


「そのままですよ?お姫様を守れない無能な騎士様ナイトはいらないっていっているんです~。むしろ邪魔なんで今後一切近づかないでくれません?」


「何も知らないっていいことだね。相手がどんな存在かわからずに喧嘩を売れるんだから」


「さすがに関元さんのことは知ってますよ~。有名ですもん。でも想像と全然違っててびっくりしちゃいました」


 二人の間で激しい火花が散っている。

 

 どうしてこうなった!?


「お前ら喧嘩するなら外でやれ。あと高槻の治療が終わったからどっちかが連れて帰ってやれよ」


 加藤先生の一言で二人は私を宇宙人のように外に連れ出す。


 どちらが連れて帰るかでもめたけど、すぐに車を手配できた関元様に軍配が上がった。


 三浦さんの悔しそうな顔はかなり可愛かった。


 心配していた鞄も関元様が悪戯をされる前に回収してくださったので無事でした。


 これで心置きなくBLゲーが買えます。


 何度も何度も関元様にお礼をいいました。 

 

 もう私にとって関元様は慈愛の神です!

 お供え物は何がいいんでしょうか!?

Q.自由の第一印象は?


高槻憩「背が高くてヨーロッパ系のかっこいい人ですね。体つきもがっしりしてていかにもSPですって感じでした。」



Q.自由の現在の印象は?


高槻憩「片言で天然なんて私をギャップで萌え殺すつもりなのかと思いました。ええ。存分に萌えさせてもらいました。ご主人である椎葉さんとの仲の良さが最高です。見てるだけで眼福です。身長差も素晴らしいと思います。大事な萌えです。この間会った時は私服だったので今度はスーツで眼鏡をかけている姿を見たいです。切実に」

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