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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
59/111

新学期はサバイバルか?

 間が開いてしまってすみません。

 今回は少し長めです。


 何も知らない渦中の二人と深まる誤解。

 俺は一年の中で四月が一番嫌いだ。


 この時期は力の差もわからないバカが俺に喧嘩をふっかけてくる。


 一度でわかるならまだいい。


 二度、三度と人数を増やして喧嘩を売ってくる奴らは学習能力があるのか?


 人数を増やした程度で俺に勝てるわけねえだろ。


 手間ばかりかけさせやがって。

 ゴキブリよりもうっとおしい。


 それが約一ヶ月続くんだからイライラすんのも仕方ねえよな。


 涼と別れた後、俺達は教室に向かった。


 だが途中で喧嘩を売ってきた奴らに阻まれた教室にすら入れない。

 

 初日からうっとおしい!

 俺の道をふさぐんじゃねえ!


 湊と正義は他の奴らに喧嘩を売られてどっかに行くし、蓮は俺を置いてさっさと教室に行った。


 ますますイライラしながら教室に行くと蓮の声が聞こえてきた。 


「そういえばアンタ、花見の時に拓哉に抱きついてたわよね。なんであんなことをしたのよ?喧嘩を止めるなら別に声をかけるだけでもよかったんじゃない?」

 

「いくら私でもそんな命知らずなことしませんよ」


 せっかく優しくしてやったのに覚えてねえだけじゃなくて、命知らずだと?


 今のお前の言葉のほうがよっぽど命知らずだろうが。


 こいつはほんとうに人を怒らせるのが得意だよな。


 怒りを視線にこめて、睨みつけているとさすがのあいつも俺の存在に気づいた。


「あら拓哉。思ったより早かったわね」


 蓮は白々しくそんなことをいう。

 お前はさっきから気づいてだろ。


 あいつは油の切れた機械のように振り返る。


 そして俺の顔を見て、引きつった笑顔から血の気のない泣きそうな顔に変わった。


 俺は舌打ちをして、後ろを通り過ぎる。


 あいつは俺がなにもいわなかったことに馬鹿みたいな顔をして首を傾げた。


「蓮のせいだろうが」


 俺はそのままあいつを無視して蓮と話し出す。


「喧嘩を売られたのは拓哉でアタシじゃないわ。だから置いて来たんじゃない」


 相変わらず肝の据わったやつだ。


 俺に対してそんな口を聞ける奴なんて、この学校じゃ片手で足りる程度しかいねえ。


「あいつらは蓮も狙ってただろうが!」


 だから俺も遠慮せずに蓮に不満をぶちまける。


「そうだったかしら?でもアタシを潰そうとしたところで意味がないわよ」


 そういや前に蓮を倒して人質にしようとした馬鹿がいたな。


 蓮が二度と同じことができねえようにボコボコにしていた。


「やられる前に倍返しするからに決まってるでしょ」


 あいつは蓮に引いたらしい。

 少しだけ距離をとっていた。


「憩、お菓子食べる?」


 正義はいつも通りマイペースにあいつへ餌付けをしている。


 今日のお菓子はうすしお味のポテチか。

 あれはさっぱりとした味がやみつきになるんだよな。


「ありがとうございます。いただきます」


 あいつは開いた袋から一枚もらって、満足そうな顔をする。


 ポテチ一枚で機嫌が良くなるなんて安い女だな。


 無視していい争っていると生ぬるい風のような背筋が気持ち悪くなる視線を感じた。

 

 俺と蓮が冷めた視線をあいつに向けると顔がにやけていた。


 こういう顔をする時はくだらねえこと考えてる。


「アンタ、今なに考えてたのかしら?」


 蓮の背後に舌を出し入れする大蛇の幻影が見える。


「答えねえとブッ殺すぞ」 


 俺はあいつのバスケットボールよりも小せえ頭を掴んだ。


「向井様!痛いです!ギブです、キブ!」


 真っ青な顔をしながら、涙目で見上げてくる。


 おい、誰だ。

 涙目で見上げてくる女は可愛いっていったのは。


 どう見ても可愛くねえだろ。

 むしろブサイクになってるぞ。


「ならさっさといえ」


 口を割る前に始業のチャイムが鳴り、担任と副担がやってきた。


「チッ」


 俺はしぶしぶといった感じで手を話し、二人へと視線を移す。


 俺らが揃ってるクラスを担当させられたかわいそうなやつは誰だ?


 まあどいつでもいいが、一年間は担任してくれよ。

 新しい担当の名前覚えるのはめんどくせえ。


 黒板の前の教卓には偏食の阿部と武器姫の榊が立っていた。


 ……なるほど。

 この二人が担任なら俺らも他の奴らも自分からめんどうは起こさねえ。


 授業中に喧嘩を売ってくる奴も激減するだろう。

 

 俺達を同じクラスにしたのはそれが狙いか。


「こらこらっ!みんな静かに!先生のいうこと聞けない悪い子はバルムンクちゃんでお仕置きしてもらうぞ!」


 榊は可愛らしい笑顔を見せながら、ポケットから取り出したスタンガンを顔の横で振る。


 スタンガンに名前をつけて愛用するとか気持ち悪いを通り越して怖えよ。  

 

 どんだけ凶暴なペット飼ってんだ。


 榊の脅迫のおかげで教室内は静かになる。


「それではホームルームを始めます」


 軽い担任の自己紹介とプリント配布、連絡で一時間目は終わった。


 後は六時間まで通常授業を乗り切るだけだが、今日は何回喧嘩を売られることになるだろうか?


 俺は長い一日の始まりに深い溜息をついた。


 二時間目になってあいつが気づいたことがある。


 俺ののほんとうの席があいつの隣じゃないってことだ。 


 少し考えれば出席番号で蓮の次に俺が来るわけがない。


 気づくの遅すぎだろ。


 気づいたあいつは俺の予想の斜め上を行く行動を起こした。


 三時間、阿部先生の授業開始の挨拶終了と同時にに席替えをいい出したのだ。


 しかもなぜかドヤ顔で。


 あいつの突飛な発言にクラス中が静まり返った。


 多分、誰もがこう思っただろう。


『そんな見え透いた嘘をこいつはなんでドヤ顔でいえるのか?』


 こいつは二時間目の授業で見えないはずの黒板の文字もノートに写していた。


 いや正義だけは自分の身長のせいで見えなかったと勘違いして、申し訳なさそうな顔をしている。

 

「それは困りますね。では誰か変わってくれる人は挙手してください」


 だがそれを知らない阿部は席替えに賛成した。


 あいつは嬉しそうな顔をして周りを見渡す。


 そんなに俺の隣が嫌か?


 無償にイライラしてきて、前の席の連中を睨んだ。

 

「すいません。ぎりぎり大丈夫です」


 いつまで待っても誰も手を挙げないことにあいつは落ちこんでいた。


「無理してませんか?」


 何も無理してねえよ。

 お前もこいつが嘘吐いてるって気づけよ。


「いえ!全然全く!むしろこの席がいいと思えてきました!なのでこのままでいいです!」


 あいつは慌てて、逆再生するように勢いよく着席する。


 こいつは何がしてえんだ?


「そうですか。なら授業に戻りますね」


 阿部の隙を見て振り返った蓮が、あいつへいった。


「アンタ、席替えを期待してるみたいだけど無駄よ。うちの学校は席替えなんてしないから」


 あいつはすっかり忘れてたという顔をする。


 うちの学校で席替えなんて愉快なことするわけねえだろ。


 やっぱりこいつは真性の馬鹿だ。




 それから二時間がすぎて今は昼休みが始まった。


 あいつは心底疲れ切った顔をしている。


 午後から大丈夫か?


 クワッと目を見開いて鞄を片手に立ち上がったその時。


「皆さん!お昼に行きましょう!」


 にこにこと最高に機嫌がいい涼が教室に来た。


 朝から絡まれていたくせになんでそんなに機嫌がいいんだ?


 次にいった涼の言葉でその理由がわかった。


「姐さんも一緒に行きましょう!」


 涼はこいつと昼飯を食べるのを楽しみにしていたらしい。


 人の好き嫌いが激しく、警戒心が高い涼がこんなにこいつに懐くとは思ってもみなかった。


 あいつにひっつく涼は牙の抜かれた飼い犬のようだ。


「せっかくのお誘いですけど私は飲み物を買いたいので自販機に行きますね。お待たせするのもなんなので城野様達は先に行っててください」


 あいつは少し申し訳なさそうな顔をしつつ、嘘を吐いた。


「じゃあ!俺も行きます!」


 だが、その程度で引く涼じゃねえ。


 身に覚えがあるからわかる。

 下手したらトイレにまでついて行きそうだ。


 いやさすがにそれはないか?


「一階の南校舎の自販機が種類が多くてオススメです!」


 あいつの動揺を無視して涼は歩き出す。


 どうせ行くんなら俺の分も頼むか。

 

「涼。ついでにコーラ」 


「はい!湊さん達はなにがいいですか?」


 涼は喜んで湊達の分も引き受けていた。


「じゃあ俺達は先に行ってるから高槻さんと涼は後でね」


 俺達は財布とスマホだけポケットに突っ込んで手ぶらで教室から出ていく。


 余計な物を持ってると奇襲をかけられた時に反応できねえからな。


「あっ。はい」


 あいつは状況について行けずにその場に残っていた。


 今の内に逃げていればよかったのに馬鹿なやつだ。

 

 思っていた通り、旧音楽室に来るまでに五回喧嘩を売られた。


 全部、高く買ってやったけどな。


 しばらくして涼に連れられて、あいつが来た。


 なぜか涼の機嫌が最高に悪く、あいつがそれをなだめていた。


 理由を聞けば、あいつの悪口を言われた上にエコバッグを使い物にならなくしたらしい。


 確かにバッサリと切られたそれはもう使えそうにない。


 さらに渋るあいつを無視して、涼は俺との間に挟まるように座らせた。


 あいつは通学バックから弁当を取り出した。

 

 俺の手の平くらいしかない。

 それで足りるのか?


 色鮮やかで、野菜も入っている弁当はコンビニ弁当の何十倍も美味そうだ。


 俺はあいつが手を付けていない玉子焼きと肉詰めピーマンを食べた。


 弁当用に濃い目の味付けだったが、やはり美味かった。


 あいつはうらめしそうな顔で見てきたけど、何もいわなかった。


 昼休みが終わる頃には諦めたのか、またはどうでも良くなかったのか、あいつの目はどこか遠い場所を見ていた。


 


 それから時間が過ぎて今は放課後。

 

 今日はあいつのバイトが休みだから掃除の日だ。


 暇つぶしに喧嘩を売ってくる奴らを相手にしながらも、旧音楽室に向かう。


 最後の階段を登ると涼と誰かが怒鳴り合う声が聞こえた。


 少し長い廊下の先には涼と知らない誰かがいた。


 知らねえってことは一年か?


 とりあえずそいつらを無視して涼に聞いた。

 

「涼、中は終わったのか?」


「まだみたいです」


「ああ゛?まだだと?いつもならとっくに終わってじゃねえか!あいつは中でなにしてんだ!」


 いつもより遅い時間に来たにも関わらず終わってねえだと?


 いくら休み明けだとはいえ遅すぎる。


 まさか中でサボってんのか?


「いや姐さんは悪くないです。多分、こいつらがうるさいからやりにくいんですよ」


 こいつらと一年を指差した。


 ああ、確かに。

 あいつは舌打ちでビビるくらいだしな。


 気になっても仕方ねえのかもしれない。


「……ああ。そういうことかよ。めんどくせえやつだな」


 こいつらがうるさい限り掃除が終わらない。

 だったら……


「おい、テメエら。しばらく黙ってろ」


「はあ!?テメエ何様のつもりだ?」


 一年の中でも一番体格のいいやつが俺に向かってそんなことをいってきた。


「うっせえな。テメエらがうるせえと俺達が入れねえんだ」


「抜け駆けしようたってそうはいかねえぞ!俺達が先に入るんだからな!」


 旧音楽室は代々、この学校の最強が使っていた場所だ。


 そいつが許さない限り、他の奴は入ってはならないことになっている。

 

 勝手に入った場合、知らなかったではすまされないことになる。

 

「あ?誰がそんな許可を出した?蓮か?」


「許可なんていらねえ!向井に勝って俺達がこの学校の頭になるんだからな!」


 どうやらこいつらは俺に用があったらしい。


「なんだ。テメエらも俺に喧嘩売りに来たのか。暇つぶしに相手してやるから場所を変えるぞ」


 終わるまでただ待つのも暇だし、相手をしてやるか。


「はっ!罠でも貼ってんじゃねえのか?それかほかの奴らが待ち伏せてるのか?」


「テメエらのために場所を変えてやろうと思ったんだけどな。この程度でがたがた騒ぐんじゃたかが知れてるか」

 

「そこまでいうならついてってやろうじゃねえか」


 軽い挑発に乗ってきた。


 よほど自信があるバカのようだ。

 特に警戒もせずに俺の後をついてくる。


 校舎を出て、すぐの教室より二回りくらい小さい少し開けた場所に行く。


 この程度の広さがあれはいいだろう。


「誰でもいいからかかってこいよ」


 蓮なら鼻で笑うような挑発をしてみた。


 一年はすぐにキレて向かってきた。


 振り降ろされた拳を体をひねって避けて、ガラ空きの腹に膝を入れてやる。


 他の奴らも似たような感じでまるで手応えがなかった。


 暇つぶしにはなったか。


 そいつらを捨て置いて来た道を戻った。


 喧嘩が終わって帰ってくるとちょうどいいタイミングで扉が開いた。


「今、終わりました。いつもより遅くなってすみませ………っ!?」


 いつものように校則通り、制服を来たあいつは俺を見て、目を見開いて固まってしまった。


 瞬き一つしないから人形のように見えて不気味だ。


「……お前、なに見てんだ?」


 俺の冷めた視線と言葉にあいつはやっと我に変えり、真っ青な顔で体を強ばらせた。


 そして震える口を恐る恐る開く。


「素敵な筋肉ですね!」


 自分から褒めておきながら一気に顔を赤くさせる。


 こいつのこんな顔を見たのは二度目だ。


 それで俺は今、上半身裸だったことを思い出した。


 エロ本では平気なくせに男の裸は恥ずかしいのか。


「ふ、ふふ、服を着てください!」

 

 あいつは熟れた苺よりも真っ赤な顔で俺から目をそらした。

 

 年中色気がただ漏れ(他の奴らに聞いた)の蓮にも普通に接するこいつが俺の上半身程度で、こんなに動揺するとは。


 なんだかおもしろいと思った。


 抱きしめたりしたらどんな顔をするんだろうか?


 あいつの気も緩んだ時を狙って右腕を引く。


 思ったよりも軽い力が引くことが出来た。

 

 そして俺の胸に引き寄せる。


 チビなこいつは俺の胸の高さに頭がくる。

 

「見たいなら好きなだけ見ろ」


 耳元に口を寄せて囁いて反応を伺う。


 さあ、お前はどんな反応をする?


 だがいつまで経っても反応がない。


 引き離して顔を見れば赤い顔のまま、気絶していた。


 立ったまま気絶するなんてこいつ意外と器用だな。


 とりあえず肩に担いで旧音楽室のソファーに置いた。


 その内、勝手に起きるだろ。

 棚から漫画を取り出して読む。


 涼に続いて他の奴らもやって来た。


 全員が俺とあいつを二度見して、気まずそうに顔を逸らしていく。

 

 涼はだけは嬉しそうだ。


 なんだよ、その顔は。

 いいたいことがあるならはっきりいえよ。


 しばらくして起きたあいつは夢だと思ったらしい。


 俺がそれを知るのは少し後の話だ。

Q.佐々竹相思の第一印象は?


高槻憩「チャラそうな人ですね。あ、でも友情を大切にされてそうだなとも思いました」



Q.佐々竹相思の現在の印象は?


高槻憩「向井様のことを知ってたので昔ちょっとヤンチャしてたのかなと思います。でもノリがよくて面白い方ですね。その場にいてくれるだけで明るく楽しくなリます。一言でいうならみんなから愛されるいじられキャラです!」

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