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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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新学期はサバイバルですか!?その6

 高槻は筋肉フェチ?

 いろんな意味で衝撃的な昼休みが過ぎて、放課後になりました。


 え?あの後、どうなったかって?

 

 城野様に旧音楽室に連れられて、お昼ご飯を食べましたよ。

 

 向井様と城野様の間に挟まれるって拷問みたいな状況で……。


 花見の一件といい、向井様と城野様はなにがしたいんでしょうか?


 無力な庶民の怯える様でも見たいんですか?


 悪趣……素敵な趣味ですね!


 極度の恐怖のせいでお母様の絶品なはずの弁当の味がしなかった。


 向井様からは卵焼きと肉詰めピーマンを奪われ、城野様にはやたらコンビニのパンを勧められた。


 断ったらものすごく落ちこまれたので、クリームパンを一つだけもらった。


 それだけなのに、さっきまでの表情はなんだってくらいの笑顔に変わりました。


 ああ、なんて可愛い! 

 ぞんぶんに萌えさせてもらいましたとも!


 ただ身長を伸ばすために牛乳やヨーグルト、チーズをたくさん買っていて、その努力の仕方がほほえましいと思ったなんて絶対にいえない。


 早く身長が伸びるといいですね!  


 声には出さずに心の中で全力で応援しました。


 ……と、まあそんな出来事がありまして、今に戻って。

 

 今日はバイトが休みなので掃除の日。

 

 旧音楽室は向井様と四分一様の一件でまだぼろぼろだ。


 例えば窓ガラスはガムテープで補強してあるし、壊れたテーブルは誰かが拾ってきたのを綺麗にして使っている。


 いつものように着替えて掃除を始めたはいいものの、先ほどからまるで今にも喧嘩が始まりそう声がする。


「だからさっさと向井を出せっていってんだろ!」


 また聞こえてきた誰かの怒声でその場に飛び上がってしまう。


 向井様を呼び捨てにするなんて恐れ知らずにほどがある。

 多分、この人も一年生だ。


 初日からここまで来るエネルギーがあるなら、別のところに回してほしい。

 

「拓哉さんは今ここにいねえって何度いえばわかんだ!この単細胞!」


 負けじといい返す城野様の声にも驚いて、その度に手が止まり、掃除がなかなか進まない。


 中に入らないように城野様が止めてくれているけど、人は途切れないみたいでさっきからずっといい合っている。

 

 どうしよう!?

 このままだと向井様達が来てしまう!


「涼、中は終わったのか?」


 よりにもよって向井様が来てしまったー!?


 四分一様や関元様なら待ってくださるけど、向井様が終わってないと知ったらきっと怒るに違いない。


「まだみたいです」


「ああ゛?まだだと?いつもならとっくに終わってじゃねえか!あいつは中でなにしてんだ!」


 向井様のキレる寸前の低い声が扉越しに聞こえた。


 ひぃいいい!

 遅くてすみません!


 だから暴力だけはご容赦を!


「いや姐さんは悪くないです。多分、こいつらがうるさいからやりにくいんですよ」


 城野様!ありがとうございます!

 今の貴方様は天使です!


「……ああ。そういうことかよ。めんどくせえやつだな」


 声の高さがいつものように戻る。


 よかった……。

 なんて思ってる場合じゃない!


 向井様の気が変わる前に急いで掃除しなきゃ!


「おい、テメエら。しばらく黙ってろ」


 うん。

 向井様らしいお願いですね。


 いやお願いじゃなくて命令ですね。


「はあ!?テメエ何様のつもりだ?」


 何様、俺様、向井様ですよ。

 みんな大好き(うちの学校限定で)向井様ですよ。


「うっせえな。テメエらがうるせえと俺達が入れねえんだ」


「抜け駆けしようたってそうはいかねえぞ!俺達が先に入るんだからな!」


 あれ?向井様、なんか誤解されてません?


「あ?誰がそんな許可を出した?蓮か?」


「許可なんていらねえ!向井に勝って俺達がこの学校の(トップ)になるんだからな!」


「なんだ。テメエらも俺に喧嘩売りに来たのか。暇つぶしに相手してやるから場所を変えるぞ」


 どうやら向井様は誤解されていることに気づいたらしい。

 

「はっ!罠でも貼ってんじゃねえのか?それかほかの奴らが待ち伏せてるのか?」


「テメエらのために場所を変えてやろうと思ったんだけどな。この程度でがたがた騒ぐんじゃたかが知れてるか」


「そこまでいうならついてってやろうじゃねえか」


 数人の足音が遠のいて聞こえなくなった。


 急に静かになってそれはそれで怖かった。


 けど気を取り直して遅れた分を取り戻すように掃除に励む。


 残っていた作業は半分程度だったから、数十分で終わった。


 制服をきっちり着てから扉を少しずつ開ける。


「今、終わりました。いつもより遅くなってすみませ………っ!?」


 扉の先にはなぜか上半身裸の向井様が目の前におられました。


 そして私の目には信じられない物が飛びこんできた。


 私よりも二周りは大きい肩を覆うようについた筋肉!


 盛り上がった胸筋!


 筋の浮いた両腕の筋肉!


 薄く六つに割れた腹筋!


 なんてけしからん筋肉なんですか!?

 ご飯三杯はいけますよ!?


 どこにそんな素敵な筋肉が隠されていたんです!?


 向井様は着痩せするタイプだったんですね!


「……お前、なに見てんだ?」

 

 向井様の冷めた視線と言葉に我に変える。


 やってしまった!?

 

 上半身裸の向井様を目に焼きつけるほど凝視するなんて私は変態か!


 いいえ、腐女子です!


 今はそんなバカなこと考えてる場合じゃない!


 なにかうまいいいわけは……!?


「素敵な筋肉ですね!」


 私はなにをいってるの!?


 向井様はそんなこと聞かれてないし、淑女としては『見てません』って否定するところだよ!


 ああ、でも癒詩とは鍛え方が違うからか、筋肉のつき方が私の理想にとても近い。


 いや理想その物!


 この筋肉の持ち主が四分一様や関元様だったら触らせてほしいと土下座していたくらい。


 向井様の筋肉を触りたいとか自殺行為!


 落ち着け、私!


 こんなに興奮してしまうのは全部、服を着ない向井様が悪い!


「ふ、ふふ、服を着てください!」


 絶え間なく湧き出る欲望をなけなしの理性で押さえつける。


 具体的には全力で向井様から目をそらした。


 もういろいろ手遅れだけどこれ以上失態を重ねるわけにはいかない!


 それに私の理性がヤバイ!

 今にも向井様の筋肉を愛でてしまいそうて、自分で自分が怖い!


 向井様は私の焦りに気づいてくださったみたい。


 冷めた視線がふっと緩んだ。


 私の気も緩んだまさにその時。

 狙ったかのように右腕を引かれた。


 とっさのことに踏ん張りも効かずに、引かれる方へと進む。


 その先にあったのはそう……あの素敵な筋肉だった!


 ふわりと汗の匂いがする。


 え?え?え?

 今どない状況になっとるん!?


「見たいなら好きなだけ見ろ」


 耳元に囁かれた声は向井様の物。


 顔を見なくても意地悪な顔をしているのがわかる。


 理解できたのはそこまでだった。


 脳の許容量を大幅に越えた現状に私の意識はどこかへと飛んでいったのである。


Q.橙花の第一印象は?


高槻憩「うちの学校にいそうな人ですね。向井様と普通に話しているのには驚きました」



Q.橙花の現在の印象は?


高槻憩「明るくて元気で気さくないい人ですね。私に友達になってほしいなんていってくださるんですよ。葉ちゃんとどんなきっかけで友達になったのか気になります。性格とか趣味とか全然違いますし。とりあえず四分一様と末永く爆発してほしいです」

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