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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第二章  高校3年生4月
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新学期はサバイバルですか!?その1

 木刀はただの飾り。

 約二週間の春休みが終わり、なんとか無事に進級できた私は今日から三年生。


 葉ちゃん達みたいな普通の高校生なら本格的な就活か受験シーズンの始まりといえるかもしれない。


 でもうちの学校は違う。


 今日からゴールデンウィークまでの一ヶ月間は新入生と在学生による学校の頂点を決める争いが校内で多発する。


 だから授業もままならないサバイバルシーズンと化す。


 この間を生き残れるか否可でその後の学校生活が決まるといっても過言じゃない。

 

 家を出る前に鏡でもう一度身だしなみをチェックする。


 話しかけにくい規則通りの服装!


 さらに私を地味にする黒縁眼鏡と髪型!


 逃げる途中で走りやすく、脱げないように紐をしっかりと結んだスニーカー!


 気兼ねなく走るためのスカートの下の短パン!


 背景と同化しそうな存在感!


 そしていつもより三十分早い登校時間!


 よし!全てオッケー!

 これなら誰の目にも止まらないだろう!


 さあ!いざ行かん!

 学校という名の戦場へ!


 ドアノブを力強く握り、外界への扉を開いた。


「あ!姐さん、おはようございます!」


 家の前に立っていたのは城野様だった。

 しかも元気な挨拶と笑顔付き。

 

 びっくりしすぎて思わずその場で飛び上がる。


 なぜ貴様がここにいる!?


 いやいや!落ち着け、私!

 きっとなにか深い事情があるはず……。


 たとえば実は城野様の通学路が家の前だったとか。


 とりあえず挨拶を返しておこう。


「お、おはようございます。どうして城野様がわざわざ家に?」


「そんなの決まってるじゃないですか!今日から新学期ですよ!?姐さんが変なやつらに絡まれないようにしばらく俺がボディーガードになります!」


 城野様はキラキラした目で私を見つめる。


 むしろ城野様が側にいた方が目立って絡まれると思うんですが!?


「そんか気にしないでください。今までなんとか乗り切りましたし、今年も大丈夫ですよ」


 一人にしてください、というのをオブラートに何重にも包んで伝えてみた。


「そうかもしれませんけど……もし姐さんが怪我でもしたら俺は絶対後悔します!」


 …………うん。

 以前の城野様のツンはどこへ?


 それにどうしてここまでしてくださるんですかね?


 心当たりはありますがむしろ嫌われてもおかしくないんじゃ……?

 

 城野様の気持ちがさっぱりわかりません。


「俺じゃ拓哉さんより頼りないってわかってます。でも俺だって姐さんを守りたいんです。そう思うのはうざいですか?」


 そんな今から捨てられる猫のような目は反則だと思います。


「えっと……なら初日で不安なので“今日だけ”お願いしてもいいですか?」


 愛想笑いが引きつってるのが自分でもわかる。


「はい!“今日から毎日”頑張ります!」


 城野様は嬉しそうに笑って、自然な動きで私から鞄を奪った。


 鞄を人質?にされてはもう逃げられない。


 ん?さらっと今日から毎日っていわれました?


 え……もしかしてサバイバル期間が終わるまで迎えに来られるつもりですか!? 


 やめてください!


 この間のお花見のために向井様達が家に来た時だって、一週間以上噂になったんですよ!?


 これ以上、ご近所の噂になりたくない!


「姐さんと一緒に登校できて俺は朝から嬉しいです!」 


 キラキラと眩しい笑顔を惜しげもなく見せてくれました。


 なけなしの良心がぐさりと貫かれたような衝撃を受ける。


 めんどくさいとか一人にしてほしいなんて思ってごめんなさい!


 城野様って天然ですか?


 それとも実は腹黒属性持ちですか!?


「あ!そうだ!姐さん、お昼も一緒に食べませんか?なにかあっても守りますよ!」


 ぜひともその笑顔と言葉は私ではなく向井様に向けてほしい。


 お二人なら全力で推奨しますよ!

 なんならお手伝いもします! 


 私の願いも虚しく、城野様はご機嫌で、ガリガリと学校につく前に精神力が削られていった。


 学校に近づくにつれて視線も増えていく。

 主に城野様の隣を歩いていることへの嫉妬と私の容姿に対しての侮蔑。


 チリチリと肌に刺さって痛いとすら思う。


 今日はもう帰ろうかな?


 弱気なことを考えたその時だった。


「高槻!」


「ヒャい!?」


 突然の大きな怒声に私の声が裏返る。

 しかもそれだけじゃなくて肩が飛び上がった。


 周りにいた人達の視線がさらに集まる。


「ぼーっと歩くな!一歩校内に入れば戦場だと何回いえばわかる!」


 校門前に仁王立ちしているのは生徒指導の御崎衛門(みさきえもん)先生。

 

 いつも道路工事現場みたいなツナギ姿で片手に木刀を持っているけど、担当教科は家庭科。

 

 得意料理はマドレーヌで、趣味はお菓子作り。


 なのに顔と体は岩のように筋肉質で顔は向井様の組の方よりも怖い


 ギャップ萌えとかいえる範囲を超えてる。


「す、すみません!」


 そしてなぜか私はこの先生に目を付けられている。


 初めての調理実習以来、校内で会うたびににこうして怒られてしまう。


 正直苦手な人だ。


 どうやってやり過ごそう……。


 考えていたら先生の後ろから叫び声と野次が聞こえてきた。


 どうやら喧嘩が始まったらしい。


 ナイスタイミング!

 

 先生は野生動物並みの素早さで喧嘩をしている二人の元へ走った。


 木刀を使わずに拳で二人を無力化してどこかへと引きずって行く。


 大きな怪我とかがないから多分指導室。


 先生が木刀を使ったところを見たことがない。

 

 警察官の拳銃と同じで、どうしても使わないと対処できない時に使うなのかな?


 でも先生は学校では四天王とかいわれるくらい強いからそうそう使うことはないと思う。


 ちなみに加東先生と阿部先生もそう呼ばれてる。


 加東先生はわかるけど、阿部先生はなんでだろ?

 噂のせいかな?


 よし、この隙に校内に入ってしまおう。


 うちの学校は新しいクラス分けが担任から伝えられるわけではなく、靴箱前の掲示板に貼り出される。


 朝早く来たからか、それともどこかで喧嘩しているのか。


 他の人は誰もいなかった。

 

 三年A組から順に探していく。


 出席番号は五十音で男女混合の順だ。


 あ……か……さ……た……あった!

 なんと四分一様と関元様も同じクラス!?


 なにこのクラス!?

 天国じゃないですか!?


「姐さん、よかったですね!」


 城野様も嬉しそうに笑ってくれた。


「そうですね。クラス分けしてくれた先生にお礼をいいたいです」


 向井様と同じクラスだったら胃に穴が空くと思う。


「なあ、あいつ向井の腰巾着の城野じゃね?」


「ああ。ほんとだな」


「今度はあの女に乗り換えたのか?」


「チビで地味で体もいまいちそうだな」


「趣味悪っ!」


 カラフルな頭の五人組が城野様にわざわざ聞こえるような声で話す。


 腰巾着って久々に聞いたよ。

 今でも使う人いるんだなあ。


 フッと城野様の顔から笑顔が消え、怒りに満ちた顔になる。


 私のせいで嫌な思いをさせてしまってすみません!


 全力で土下座するので、殺気のこもったオーラを出すのやめてくれますか!?


「テメェら姐さんを馬鹿にしてんのか?」


 城野様はゆっくりと振り返ってお兄さん達を鋭い目つきで睨む。


 どうやら私の予想の斜め上のことで怒ってたみたい。


 いや私はそこまで気にしてませんけど?


「は?ねえさん?」


「なにそいつお前の姉なのか?」


「似てねえ!」


 お兄さん達は見事な勘違いをされてますね。


 どこを見ても血の繋がりを感じるところはないでしょうに。


「姐さんは拓哉さんの女だ!だから俺の姐さんなんだ!」


 何をいっているんですか!?

 私は向井様の女じゃありませんよ!


 そもそも城野様の中でどんな流れでそうなったんですか!?


「姐さんのことを悪くいうやつは俺が許さないから」


 なんてかっこいい台詞!

 城野様がいつも以上に輝いて見える。


 惜しむらくは対象が私であること!


 対象が向井様なら最高なのに!

 もちろんBL的な意味で!


「ハッ!許さねえならどうすんだ?」


「決まってんだろ。二度と姐さんの悪口をいえないようにぶっ殺す」


 皆さん、やる気満々ですね。

 まさかこのまま喧嘩とか始めませんよね……?


「姐さん、こいつらのことは俺に任せて先行っててください。すぐに追いつきますから」


 笑顔の城野様に比例して、お兄さん達はすごい形相だ。


 向井様で耐性があるのにちょっと怖い。


「いや、でもですね……」


 そういってくれるのはありがたいけど、だからって置いて行くのは違うと思う。


 足手まといにしかならないってわかってるんだけどね。


「大丈夫です。こいつら程度なら俺一人で十分ですし。それより姐さんが遅くなるほうが悪いですし」


 これは何をいっても聞いてくれないパターンだ。

 

「すみません。先に行きます。怪我しないように気をつけてくださいね」


「はい!わかりました!」


 城野様に千切れんばかりに揺れる耳と尻尾の幻覚が見える。


 何がそんなに嬉しいんですか?


「ふざけんじゃねえぞ、城野!」


「今日こそぶっ殺してやる!」


 お兄さん達が一斉に城野様へと襲いかかる。


「姐さん、早く行ってください!」


 城野様が少し焦ったような声で叫ぶ。


「すみません!ありがとうございます!」


 城野様へ頭を下げて急いで教室へと向かう。


 城野様のおかげで助かったのは事実だから、今度何かお礼をしないと。

Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


自由「黒髪デ年齢ヨリモヤヤ幼イ顔立チデ、日向様二似タ小柄ナ体型モアリ、実年齢ヨリモ若ク感ジマシタ。マタ黒縁眼鏡ヲ着用サレテオラレマシタガ、特有ノ冷タイ印象ハナク、ムシロ優シサヲ感ジマシタ。服装ハ(以下略)」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


自由「周リノ方二愛サレテイル方ダト思イマシタ。彼女ノソバニイルト陽ダマリニイルヨウナ心地ヨイ感覚ニナリマス。ソレガ人ヲ惹キツケルノデハナイカト思イマス。機会ガアレバマタオ会イシタイデス」

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