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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
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お花見か?

 拓哉視点。

 逃げ出したあいつを連れて戻ると、すぐに組の連中に囲まれ、話の中心に座らされていた。


 あれじゃもう二度と逃げられねえな。


 引きつった愛想笑いを浮かべながら話を聞くあいつの姿を横目に、俺は離れた場所に座った。


 俺の側に湊達も座る。


「高槻さん、大丈夫かな……?」


 気になるのか湊は落ち着きなく何度もあいつの方を見る。


「大丈夫。憩はいい子だから」


「そうですよ!未来の姐さんなんだから今のうちから挨拶しとかないと!」


 おい、涼。

 いつからあいつが組に入ることになったんだ?


「いやそうじゃなくて……。それに高槻さんは組に入るつもりは微塵もないと思うよ」


 やや疲れたようにため息をつく。


 湊は最近、ため息をつくことが増えた。

 なんか悩みでもあんのか?


「ほっときなさいよ。あの子、意外と図太い神経してるからあれくらい大丈夫よ」

 

 蓮はどこから缶ジュースを取り出して飲みだした。


 俺も側にあった缶ジュースをの封を開けて飲む。


 口をつけて違和感があった。


 これチューハイじゃねえか。

 誰だよ、買ってきたやつ。


 ふいに静かになり、組のやつらや湊達が立ち上がる。


 チッ。誰が来やがった?


 クソジジイが来るには早すぎる。

 なら幹部の連中か?


 来たのはトマだった。


 組の連中に適当な言葉をかけて笑っている。


 こいつが来るならさっさと帰ればよかった。

 いや今からでも帰るか。


 トマから視線を外して帰ろうとした時。


「拓哉も来てたのか?いつもはすぐ帰るのに珍しいな」


 トマはちょっと驚いた顔をしながら俺の隣に座る。

 

 なんでこっちにくんだよ。

 盛り上がってるあっちの方へ行けよ。


 俺はトマから一人分以上距離を取った。


「うっせえ。俺がどうしようと俺の勝手だろうが」


 俺の怒声をなんでもないような顔して、眉一つ動かない。


 相変わらずスカしててムカつく。


「お前は相変わらずだな」


 表情を変えたかと思えば呆れたような顔をする。


「知ったような口聞くんじゃねえよ」


 だいだいトマは馴れ馴れしすぎる。

 俺があんたを嫌ってることくらいわかってんだろ。


「知ったようなもなにもお前が赤ん坊の頃から見てきたからな」


「あんたに世話してもらった覚えはねえ」


「赤ん坊の頃だから当たり前だろ?」 


 ああいえばこういう。

 そんなに俺をイライラさせてえのか?


 売られた喧嘩は買ってやるぞ?


 立ち上がろうと腰をあげると誰かがぶつかってきた。


 誰だがわからねえが俺にぶつかるなんていい度胸してんじゃねえか?

 

 今最高に機嫌が悪いから憂さ晴らしさせて……。

 

「むかいしゃま、けんかはらめでしゅよう!しぇっかくにょたにょしいおはにゃみがだいにゃしににゃっちゃいましゅ!」


 真っ赤な顔をしたあいつが俺の腰に抱きつき、見上げていた。

  

 こいつはたまに滑舌が悪い時があるが今の比じゃない。


 まさかこいつ酔ってんのか?


「お前、酔ってんだろ?」


 軽く睨みつけてやる。


 いつものこいつなら顔を青ざめて手を離すはずだ。


「よってましぇん!」


 手を離すどころか逆に力をこめて、俺を睨んできた。


 こいつ絶対酔ってる。


「……離せ」


「いーやーでーしゅー」


「離せっつてんだろうが!」


 怒鳴りつけてもこいつは離さなかった。


 振りほどこうとしても思った以上に力が強い上に、力の入りづらい体勢のせいでうまくいかない。


 ああ゛!もうこいつら腹立つ!


「だって……むかいしゃまいいにおいしゅるし、だきやしゅくてあったかくてきもちいいんでしゅ」


 こいつはえへへと笑って背中に頬ずりをする。


 なにしてんだ、てめえ!

 服に化粧がつくからやめろ!

 

 ……と、普段の俺なら怒鳴りつけていたはずだ。

  

 だけどこいつの幸せそうな顔を見ているとなにも言葉が出てこない。


 ぐじゃりと前髪を握りしめる。


 てめえはいったいなにがしてえんだ! 

 いつもは泣きそうな顔か真っ青な顔しかしねえくせに!

 

 睨みつけても怒鳴りつけても今のこいつには効かない。 


「青春してるわね」


 顔を見なくても蓮がからかってるのがわかる。

 他人事だと笑いやがって。


「うるせえ!」


 怒鳴りつけても蓮は楽しそうに笑うだけだった。


 どいつもこいつも……!


「そのお嬢ちゃんは拓哉の連れか?」


 トマがこいつを見る目は品定めをするものだ。


 俺が口を開く前にこいつがいった。


「わたしはむかいしゃまのげぼくでしゅよー」


 その場の温度が一気に下がる。

 

「……拓哉、どういう意味だ?」


 凍えるような視線が真っ直ぐに向けられる。

 

 トマが本気で怒る前の視線だ。


「あれー?ちがうんでしゅか?」


 空気の読めないこいつは間抜けな声で俺に聞く。


 男しかいない場所で酔うとかこいつバカだろ。


「姐さん、なにいってるんですか!姐さんは拓哉さんの女ですよ!」

 

 なにいってんだ、涼。

 こいつは俺の女じゃねえよ。


 俺の趣味知ってんだろ?


「そういうことか。勘違いしたじゃねえか。お前も隅に置けねえな」


 その場の温度が気温に戻る。


 勘違いしてんのはあんただ。


 だが訂正した時のことを考えると、デメリットが多すぎる。

  

 俺はなにもいわないことにした。


 湊と正義がなにかいいたそうな顔をしたけど知るか。


「……帰るぞ」


 俺が立ち上がってもこいつはしがみついたままだった。


 いい加減離れろよ。


「えー!もうかえりゅんでしゅかー!もっといましょうよ!」


 子どもみてえに駄々をこねて首を横に降る。


「黙って聞いてやってれば調子に乗りやがって!いい加減にしろ!」


 本気で怒鳴りつけると、やっと手を離した。


「ごめんりゃない」


 こいつは化粧が崩れるのも気にせず、声を上げて泣き出した。


 他の連中も騒ぎに気づいたのか、視線を感じる。


 酔ってるこいつはほんとにめんどくせえ!


「あら泣かせちゃったわね。かわいそう」


「そう思うならお前がなんとかしろよ」


「アタシじゃなくて拓哉がいいみたいよ?」


 めんどくせえから俺に押しつけたいだけだろ!


「高槻さん、帰ろう?そろそろ夕方になるし、ね?」


 湊が優しい口調であいつをなだめる。


「……ひゃい」


 ぐずぐずと鼻を鳴らしながら立ち上がるが、足元がおぼつかない。


 こいつどんだけ飲んだんだよ。


 小さく舌打ちするだけであいつは肩を震わせた。


 それを無視して俺はこいつを肩に担いだ。


「ひっ!?おろしてくりゃしゃい!」


「うるせえ。黙ってろ」


 暴れ出したあいつを力で押さえこむ。


 組の若いやつに視線を送り、車の準備をさせた。


 生暖かい視線を感じたが、すべて無視する。


 どうせろくなこと考えてねえだろ。


 こいつを家に送り、ベットに寝かせた。


 穏やかな顔で寝ているこいつが腹立たしい。


 てめえのせいで俺は居心地の悪い思いをしたんだぞ。


 額に手刀を落とす。

 だいぶ手加減したはずだが、こいつは顔をしかめた。


 まあ今日はこのくらいにしてやるか。


 俺はあいつの家を出て、自分の家へと帰った。


 今度こいつにあったら何をさせて償わせようかと考えながら。


Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


橙花「真面目で大人しくて、可愛い娘だよ」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


橙花「表情が豊か面白い娘!あ、でもまーくん達とフツーに友達になれるなんて超すごいと思う!まーくん達ってなんかこう……人を寄せつけないオーラみたいなのを出してるからなかなか友達になりにくいんだよねー。だから私も仲良くなりたいなって思ってるよ」

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