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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
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お花見?

 正義視点。

「まーくんの友達?珍しいタイプだねー」


 ハナが誰にでもなくいった。


 特に意味のない、ただ思ったことをがそのままいっただけだった。


 でも憩はそうは思わなかったらしい。


「ち、違います!四分一様と私が友達なんておこがましいにもほどがあります!私はただの同じ学校なだけです!」


 憩は真っ青な顔で必死に俺との関係を否定する。


 ズキッと胸にナイフを突き立てられたような痛みを感じた。


「……憩は俺のことをずっとそんな風に思ってたの?」


 悲しみとともに本音が口から溢れ出す。


 俺に笑いかけてくれるから、友達になれたんだって思ってた。


 でもそれは俺の独りよがりだった。


 憩も俺のことを受け入れてくれないんだ。

  

 両親や近所の人や学校の先生達と同じように。


「あ、あのー。その……」


 憩はなにかいおうとしたけど、けっきょくなにもいわなくて。


 ただ気まずそうな顔をしてうつむいた。


「あー……。まーさんや、一つ確認してもよろしいかね?」


 葉が軽く手を上げて俺に聞く。


 彼女はハナの高校からの友達で、何度も話したことがある。


 少なくともあだ名で呼ばれるくらいの仲だ。


 憩は知らなかったらしく、顔をあげて俺と葉を交互に見ている。


「……なに?」


「いっちゃんと仲良くなってから何ヶ月目?」


 憩と初めて話した日を思い返す。


 鬼ごっこをした日から今日まで何日が過ぎた?


「んー……一ヶ月くらい?」


 少し悩んだのは憩と会って、いろんなことがあったからだ。


 たった一ヶ月しか経ってないのに数ヶ月一緒に過ごしたような気がした。


「だからだわ。まーさん、落ちこむことはないぜ。いっちゃんと俺が仲良くなるのでさえ半年かかってるから。むしろよく一か月でここまで仲良くなったな」


 葉は声を上げて、からからと笑った。


 俺はその言葉に驚く。


 憩と葉はとても仲が良しに見える。


 今さっきも俺達と過ごす時には見せないような表情をいくつも見た。


 なのに半年もかかってたなんて……。


 俺は勘違いをしていた。


 憩は“俺だから”受け入れられないんじゃない。


 “誰でも”は受け入れられないんだ。


 その理由に心当たりがある。


 それは多分いじめられていたからだ。


 助けを求めても誰も助けてくれない。

 ならいっそ一人でいい。


 一人なら誰かに期待して苦しくなることも辛くなることもない。


 姉ちゃんと出会う前の俺と似ている。


 憩は人に対して臆病なんだ。

 

 怖くて怖くてしかたない。


 でも思ったよりも人って怖くない。


 予想したような人もいるけど、そうじゃない人もいる。


 自分を受け入れてくれる人もちゃんといる。


 きっと憩もそれを知っていると思う。


 そうじゃなかったらこうして俺達に付き合って花見になんて来てくれなかった。


 だったら俺は待とう。


 憩が俺を受け入れてくれるようにゆっくりとゆっくりと仲良くなっていこう。


 ちらりと頭一つ分以上、下にいる憩を見る。


 憩は俺の視線に気づくとほっとしたように頬をゆるめた。


 俺も自然と頬がゆるんだ。

 

 名は体を表すというのは本当かもしれない。


 憩の笑顔を見てると俺まで優しい気持ちになれる。


 一つだけ不安なのは拓哉が待てるかってこと。


 横目で拓哉を見るとゴーヤを食べたみたいな苦い顔をして葉を見ていた。


 今日の葉は制服じゃなくて私服だから男と勘違いしているんだと思う。


 無意識なのにわかりやすいなあ。


 蓮は拓哉の気持ちに気づいているみたい。


 でも湊も拓哉自身も気づいていない。


 涼は好きな人同士で付き合って欲しいだけで、拓哉の気持ちに気づいているわけじゃない。


 拓哉が自分の気持ちに気づいたら憩の気持ちを無視して好きなようにすると思う。


 その時は俺が壁になってあげよう。


 俺は拓哉の友達だけど憩の友達でもあるから、憩の味方になろう。


 一方通行の気持ちじゃ二人とも辛くなっちゃうから。


 憩に視線を戻すとハナと歩真に抱きしめられていた。

 

 背が低いせいかハナの胸に半分くらい顔が埋まっていてちょっと苦しそう。


「いっちゃん……いい百合をごっつぁんです!」


 葉は憩に向かってすごくいい笑顔で親指を立てていた。


 憩はキッと葉を睨みつける。


「……百合?お花?なんで?」


 何かの隠語かな?


 でも二人とも教えてくれることはなかった。


 その後に涼に湊、蛍の弟と友達が三人来た。


 話の流れで拓哉と涼、葉と歩真がバドミントンで勝負することになった。


 勝った方が憩と一緒に過ごすらしい。


 やる気満々の四人に対して、他の皆は呆れていた。


 視線を感じてそっちの方を見ると、ハナの後ろから歩真の妹達、鈴と蘭が俺を見上げていた。


 なんだか怖がられている気がする。


 多分拓哉がちょっと怒ったからだと思う。


 二人の側に行って、視線を合わせるように屈んだ。


 小さい子にとって男と背が高い人は怖いらしい。


 二人もそうだったみたいで、俺が近づくとびくりと体を揺らした。


 俺は出来るだけ自然に笑っていう。


「飴は嫌い?」


 二人は鏡みたいにきょとんとした顔を見合わせてからハナを見上げた。


 ハナが優しく笑うと二人は俺をじっと見てから、口を開いた。


「らんちゃんはいちごあじがすきなの」


「すずちゃんはれもんあじがすきなの」


 ねー、と二人は声を揃えていった。


 自分じゃなくてお互いの好きな物をいい合う姿が可愛い。


「そう。じゃあ手を出して」


 二人は期待に目を輝かせながら手を出した。


 俺の手よりもずっと小さい。

 すっぽりと包めてしまえそう。


 二人の手にポケットから飴を落とす。


「わぁああああああ!?おにいちゃんすごい!?マジシャン?」


「どこにこんなたくさんはいってたの?おにいちゃんのポケットはどうなってるの?」


 二人ともびっくりながらも受け取ってくれた。


 小さな手の上に飴の山が出来る。


「おにいちゃん、ありがとう!」


 驚きから立ち直った二人は笑顔でお礼をいってくれた。


 飴でこんなに喜んでくれるなんてすごく嬉しい。


 蛍の弟も喜んでくれるかな?


 側に行って同じように渡すと目を丸くして俺と飴の山を見つめた。

 

 蛍の弟にはいえないけど可愛いな。


「あ、ありがと……」


 恥ずかしくなったのか蛍の後ろに隠れる。


 年下の兄弟っていいなあ。

 蓮達が羨ましい。


 俺も年下の兄弟が欲しかったなあ……。

 

 そうだ!

 せっかくだからお兄さん気分をさせてもらおう。


 お兄さんといえばやっぱり……。


「雪彦……だよね?肩車してもいい?」


 蛍と弟の雪彦にお願いしてみる。

 

 実は一度、肩車をやってみたかった。


「どうする、雪彦?」


「あ、あぶなくないならいいよ」


 許可をもらったからさっそく雪彦を肩車した。


 あまりに軽いから乗っているのかわからないくらい。

 雪彦があと五人くらい乗っても大丈夫そう。


 すると鈴と蘭が羨ましそうな顔で俺と雪彦くんを見上げた。


「鈴と蘭も肩車する?」


 試しに聞いてみると元気よく頷いた。


 ハナに手伝ってもらいながら二人を両肩に乗せる。


 それでもまだ軽い。

 あと五、六人乗っても大丈夫かも知れない。

 

 くるくる回ってみたり、その場でジャンプするとすごく喜んでくれる。


 調子に乗って全力で走ったらハナから怒られた。


 落ちると危ないよね。


 三人を地面にゆっくりと降ろす。


「ありがとう」


 三人がそれぞれのいい方でお礼をいってくれた。


「俺の方こそありがとう」


 だから俺も正直にお礼をいった。


 またいつか肩車させてくれないかな。

 なんて桜の散る中で思った。


Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


南並歩真「可愛い子ね。具体的にはまず身長。百五十センチないんじゃないかしら?小さいっていうのは大きな長所よね。やっぱりどうしても大きな女の子よりも小さな女の子の方が可愛く見えるでしょ?でも胸の大きさは(以下省略)」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


南並歩真「やっぱり可愛い子ね。初々しいというか純粋な感じがたまらないわ。小動物みたいに怯える姿もいいけれどやっぱり一番可愛いと思ったのは笑顔ね。見ているだけで私まで笑顔になっちゃうわ。はあ……あの男が邪魔しなければもっと仲良くなれたのに……。どうやったら邪魔されないのかしら?ここはあの男が油断した隙に(自主規制)」

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