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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
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お花見ですか!?その5

 安定の憩。

「あー……。まーさんや、一つ確認してもよろしいかね?」


 葉ちゃんが軽く手を上げて四分一様に許可を求める。

 

 え!?

 葉ちゃんも四分一様と知り合いだったの!?


「……なに?」


「いっちゃんと仲良くなってから何ヶ月目?」


 なにその学生カップルみたいな質問。


「んー……一ヶ月くらい?」

 

「だからだわ。まーさん、落ちこむことはないぜ。いっちゃんと俺が仲良くなるのでさえ半年かかってるから。むしろよく一か月でここまで仲良くなったな」


 葉ちゃんは声を上げて、からからと笑った。


 そういえばそうだった。


 私がコミュ障だから仲良くなるのに時間がかかったんだよね。

 なんかあの頃が懐かしいな。


 葉ちゃんのおかげで場の雰囲気が柔らかいものへと変わった。


 でも残念な子を見るような生暖かい視線が辛い!


 まあ、四分一様の表情がどこかほっとしたものに変わったからいっか。


「じゃあ!あたしも友達立候補!」


 金髪さんは参観日でテンションが上がった小学生のようにぴーんと手を伸ばす。


 かわいいと思う。

 

 けど動きに合わせて揺れる二つの大きな塊が羨ましい!


 これが胸囲の格差社会か!?

 

「あたしの名前は橙花(だいだいはな)で~す!花って呼んでね!知ってるかも知んないけどまーくんの彼女だよ!これからよろしくね!」


 向井様の背中から離され、ぎゅっと正面から抱き着かれる。


 身長差のせいかマシュマロみたいにふかふかでいい匂いのするそれに顔を埋めるようになってしまった。


 男じゃなくてもこのシチュエーションはドキドキする。 


「花先輩ばっかりずるい!」


 また後ろから南並さんに抱き着かれた。


「私の名前は南並歩真よ!あるって呼んで!ああ!戸惑う姿も可愛いわ!」


 さっきは余裕がなくて何も感じなかったけど、南並さんの橙さんに負けず劣らずのそれを背中に感じる。


 え?なにこの状況!?

 誰か助けて!?


「いっちゃん……いい百合をごっつぁんです!」


 葉ちゃんはすごくいい笑顔で親指を立てていた。


 ばかぁあああああ!

 私達で妄想して楽しまないで!


「……百合?お花?なんで?」


 四分一様が首を傾げていた。

 

 無視してください!

 そして永遠に忘れてください!


 そういいたのに目の前にあるそれに顔が埋まってるから何もいえない。


 よくハーレム漫画とかでおっぱいで窒息しそうになるけどあれってほんとだ。


 今、呼吸すら危うい。

 誰か助けて!


「姐さん!」


 二人の間から引きずり出してくれたのは城野様だった。


 久しぶりの空気を大きく吸いこむ。


 ああ、生きてるって素晴らしい!


「高槻さん、大丈夫?」


 関元様が優しく背中をさすってくれた。


 優しくて気づかいができるとか、普通の女の子だったら惚れちゃってますよ!?


「な、なんとか……お二人ともありがとうございます」


 大きすぎるおっぱいは邪魔だというけど訂正したい。 

 

 巨乳は立派な凶器です。


「花さんはいいけどそこのデカ女!姐さんに近づくんじゃねえ!」


 城野様は威嚇するように南並さんを睨む。


 番犬っていわれたの気にしてるのかな?


「デカ女って私のこと?いやねえ、自分が小さいからって人のことをバカにして。精神年齢も低いんじゃないかしら?」


 別人なんじゃないかと思うくらい冷めた口調と目で城野様を見下す。


 氷のように冷たくて春なのに背筋が震えた。


「はあ!?バカにすんな!女のくせに!」


「女だからって男に劣るとは限らないわよ?むしろ男の方がずっと使えない。体ばかり大きくて頭は軽いんだもの」


「南さん!落ち着いて!」


 慌てて蛍さんが間に入る。


「私はいたって冷静よ?そこの小さいのと違って」


 でも南並さんはさらに城野様を煽った。


 ここまでの男嫌いだと日常生活も大変そう……。


「なんだと……っ!?」


 城野様は眉間に皺を寄せる。


 あ、城野様って背が低いこと気にしてたんだ。


 可愛いから気にしなくていいのに。

 それも個性の一つだと思いますよ。


 二人の間で見えない火花が激しく散る。


 いつ城野様が手を出すのかと気が気でない。


 ここはうちの学校じゃないんですから、暴力沙汰はダメですよ!


 誰かの携帯が鳴った。


 私のじゃない。

 私の着信音は魔法少女の主題歌だから。


 電話は蛍さんだった。

 慌てて電話に出る。


「時間を過ぎても日向ひむか自由そら以外は誰も待ち合わせ場所に来ないってどういうことだよ!待ち合わせ場所の意味ないだろ!?」


 相手は相当怒っているのか声が聞こえてしまった。 


「ご、ごめん、相思(そうし)。でも今それどころじゃなくて……」


 蛍さんはそこで言葉を切り、冷戦状態の二人を見る。


 確かにそれどころじゃない。


「え!?ちょっと待って!」


 電話の相手がなにかいって蛍さんが慌ててる。


 でもその後すぐに電話が切れたみたいで、困ったような顔をしていた。


「そんな顔してどうしたのよ?また佐々竹(ささたけ)くんがなにかいったの?」


「待ち合わせ場所に誰も来ていないから日向達を連れてこっちに来るって」


「あらもうそんな時間!?日向くんに悪いことしちゃったわね」


 南並さんは不機嫌そうな顔を一変させて笑顔になる。


 日向くんって十二歳以下なのかな?


「……おーい、蛍!」


 すぐに電話越しに聞いた声が聞こえた。


 やけに早かったけど待ち合わせ場所と近かったのかな?


 佐々竹さんはテレビなんかでよく見るチャラそうな人だ。


 私なんかがこんなことをいうのは失礼だけど、顔もそこそこかっこいい。


 佐々竹さんは背中に五歳くらいの男の人を背負って、その後ろから二人の男の人がついてきている。


「みんな……って!えぇえええ!?なんでこんなところに向井拓哉が!?」


 佐々竹さんは向井様を見て驚いていた。


 あれ?この人も知り合い?

 

 ちらりと向井様を伺うと心当たりがないみたいだった。


「誰だ?テメエ?」


「いや!俺の気のせいです!」


 こんなところにいるはずないし……と佐々竹さんは小声で続ける。


「テメエの事情なんて知るか。テメエは誰でなんで俺のことを知ってんだ?」


 向井様の鋭い視線が佐々竹相思さんに突き刺さる。


 同じことをされた身としては同情してしまった。


 あの視線って胃がキリキリするんだよね……。


「お、俺は佐々竹相思っていいます!ここにいる高萩蛍の友達で向井さんの一つ下です!向井さんのことは中学ん時に先輩から聞きました!」


 名前の上がった高萩さんは驚いた顔をする。


 今のは売られたも同然だよね……。


 でもなんで顔を見ただけで向井様だってわかったんだろ?


 あっ!向井様は喧嘩が強くてイケメンだからか!


 こんな目立つ人は忘れられないよね。

 噂になるのもわかる。


 向井様はそれで納得されたみたいで何もいわない。


「ハジメマシテ。私ハ自由(そら)ト申シマス。隣ニイラッシャルノハ私ノゴ主人様デアル椎葉(しいば)日向様デス」

 

 いきなり自己紹介を始めたのは焦げ茶色の髪にヨーロッパ風のお顔立ちをした男の人だった。


 身長は四分一様より少し低いくらい?


 外人さんだからちょっと片言だけど、それがまたいい!


 ご主人様ってことは自由さんはSPみたいな人ってこと?


 ポイント高いよ!


「なんで急に自己紹介しちょっとよ!みんなびっくりしちょるやろ!」


 なまりまくった喋り方が超可愛い!?


 オレンジ色の髪と中学生くらいの顔立ちのせいでもっと幼く見える。


 身長は城野様と同じくらい?


「相思様ガ自己紹介サレテイタノデソウイウ状況ナノダト判断致シマシタ」


「どう判断したらそうなると!?」

 

 阿吽の呼吸とはこのことか!?


 自由さんの天然発言に的確なツッコミが入る。


 二人の間に他者の入る隙なんてない。


 これはまさか!?


 ちらりと葉ちゃんを見ると視線で『いいBLだろ?』と語ってた。


 私は親指を立てて『GJ(グッジョブ)葉ちゃん!』と視線を送りかえした。

     

「皆揃ったし、そろそろ行かない?時間なくなっちゃうし」


 橙さんの言葉を皮切りに皆が動き出す。


「そうですね」


 さり気なく南並さんに腕を引かれる。


 自然な動きに関元様も私も反応できなかった。


 南並さんのされるがままにどこかへと連れて行かれる。

 

「ちょっと待て。そいつは置いて行け」


 向井様は眉間に深ーいしわを刻んでいた。


 イケメンはどんな顔をしてもイケメン度が変わらない。


「いやよ。もっと一緒に過ごしたいわ。憩さんも汗臭い男よりも女同士の方がいいわよね?」


 南並さんは私の腕に自分の腕を絡ませて、魅力的過ぎる二つの塊を押しつける。


 橙さんよりも弾力があって、まるでビーズクッションみたい。


「俺も同感。お前らに俺のお姫様を預けられるか!」


 葉ちゃんいい加減にその呼び方恥ずかしいからやめて!


 お姫様とか柄じゃない!

 私はがっつり庶民!


 いつの間にか選択肢が葉ちゃん達か、向井様達かに決まっている。


 家に帰って寝るという選択肢は……ダメだ。


 誰一人として認めてくれそうにない。


「テメエ……上等じゃねえか」


 向井様の首に筋が浮かぶ。


 今にも葉ちゃんに手を出しそうで怖い。


「姐さんは三日前から俺達と過ごすって決まってんだ!なあ、姐さん?」


 その話初耳なんですけど!?


 そんな前から計画していたんですか!?


「二人とも落ち着いて!」


 高萩さんが葉ちゃんと南並さんを説得するも聞く耳を持たない。


 向井様と城野様は関元様が注意するも全く反省してない。


 これなんて修羅場?

 どうしてこうなった!?


「コウイウ時ハ平和的ニバトミントンデ決着ヲツケマシヨウ!」

  

 自由さんがどこからか取り出したのはラケットと羽。


 ラケットは四本。羽は二つ。


 あつらえたようにもめている人と同じ数だ。


「……いいわね。立てなくしてあげる」


 南並さんの眼鏡が光を反射して輝く。


 なんか強そうだ。


「ハッ。いってろ」


 え?向井様ってバドミントンできるんですか?


 なんでもやりすぎるイメージがあるんですけど……。


「弱い犬ほどよく吠えるっていうよな?」


 葉ちゃんは自由さんからラケットを受け取って左肩にかつぐ。


 か、かっこいい!

 葉ちゃんが男の子だったら絶対に惚れてるよ!?


「その減らず口黙らせてやる!」


 城野様は受け取ったラケットの先を葉ちゃんに突きつける。


 かわかっこいい!


 城野様に可愛さとかっこいいが合わさると無敵すぎる!


 勝敗とかもうどうでもいい!?


 貴重な萌えをありがとうございます! 


 四人の背後からどす黒いオーラが立ち上る。


 それを他の人達は呆れた目で見ていた。

 登場人物まとめその2。

 今回はこれ以上増えません(多分)。


 橙花……金髪ピアス。葉ちゃんと同じ学校、同じ年。正義の彼女。拓哉達と知り合い。歩真に負けず劣らぬナイスバディ。


 佐々竹相思……蛍の友人。蛍と同じ年。見た目はチャラいが小心者。中学生の頃に向井様達の噂を聞いたことがある。蛇の道は蛇。または同じ穴の(むじな)


 椎葉日向……蛍の友人。十二歳を越えているのに歩真に気に入られている。九州地方の方言で喋る。


 自由……日向のSPのような存在。日向へ憩と葉の思っている恋愛感情はない。ド天然で常識知らず。


 高萩雪彦……蛍の弟。鈴・蘭と同じ年。相思に背負われて登場。今回は一言も話してない。見知らぬ人が多すぎてリアクションに困っている。

 

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