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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
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お花見ですか!?その4

 ネガティブ憩登場。

 突然の貞操の危機(しかも同性から!)に私は向井様達から逃げていたことをすっかり忘れていた。


 そして意識は目の前の残念美人さんこと南並さんに向けられている。


 この人は怖がられてるのになんで嬉しそうなの!?


 二次元ならこういう人をよく見るから、そういうキャラクターなんだって笑って受け入れられる。


 けど三次元だと実害があるから、笑ってなんていられない!


 向井様の背後に隠れながら顔を少しだけ覗かせる。


 南並さんは向井様に見向きもせずに熱っぽい眼差しで私を見つめていた。


 性格はともかく、側を歩いていたら絶対に二度見するくらいイケメンの向井様に反応しないってことは、男嫌いってほんとなんだ。


 なんだか目を離した瞬間に襲われそう……。


 自分の想像に身震いした。


 ないない!ありえない!

 私にそんな魅力なんてないから!

  

 少し離れた場所から『南さん』と呼ぶ声が聞こえた。


 声はだんだん近くなる。

 

 カオスな状況の中にやって来たのは同じ年くらいの美少年だった。


 つややかな黒髪、くっきり二重瞼(まぶた)


 髪と同じ瞳、肉厚な真っ赤な唇。


 するりとした撫で肩、折れそうほど細い手足、雪のように白い肌。


 南並さんと同じくらいの背の高さ。


 間違いない!

 この人は二次元でしか見たことない病弱系イケメンだ!?


 落ちていたテンションが少しだけ上がる。


 病弱系イケメンさんは近づいて来るにつれて状況を理解したらしい。


 会話ができる距離につく頃には申し訳なさそうな顔をしていた。


「あー……ご迷惑をおかけしてすみません。また南さんの発作が出たんですね」 


 ペコリと頭を下げたことで黒髪が揺れる。

 

 走って来たからか、赤くなった頬と乱れた息がそこはかとなくエロい。


 それはもう受けさんですね!

 私、わかります!


「あら遅かったわね、(ほたる)


 南並さんはようやく私から視線を離して、病弱系イケメンの蛍さんへと移す。


 蛍って名前がすごく似合う!


 さっきから思っていたんだけど、蛍さんは南並さんと親しいみたい。

 

 向井様や葉山みたいに存在を完全に無視するんじゃなくて、普通に接してる。


「鈴ちゃんと蘭ちゃんが大切なのはわかるけど、雪彦もいるんだから急に走り出さ」


「雪くんも来てくれたの!?お菓子足りるかしら?ケチらずにもっと買っておくべきだったわね!今からでも近くのコンビニに行くべき?コンビニのお菓子は美味しいのだけれど量が少ないから大人数には向かないのよね……」

 

 南並さんは話を途中で遮り、楽しそうに別のことを考え出した。


 蛍さんは大きな溜息を吐く。


 なんとなく二人の力関係がわかったような気がする。


「あー!三人ともこんなところにぃ!って拓哉と蓮じゃん!?女の子と一緒とか珍しくない?っていうかその娘超可愛いんだけど!?なにどっちかと付き合ってんの?」

 

 またまた現れたのはテンションも声も高い話し方をした、金に染めた髪にゆるふわパーマをかけている同じ年くらいの女の子。


 耳にもピアスを開けてて、露出の多い服。


 うちの学校でよく見る女の子達と同じような格好だ。


 つまり“不良”みたい。 


 向井様だけじゃなくて葉ちゃん達と知り合いなのが不思議なくらいだ。


 まさか葉ちゃんの方がいじめられてるとか?


 …………いや葉ちゃんなら三倍にやり返すから違う。


 葉ちゃんって怒らせると超怖いんだよ。


 燃えるごみ捨て場に私のノートを捨てられそうになった時なんて、相手のノートを本人の目の前(しかも教室で)で燃やそうとしたくらいだから……。

 

『どうして俺が怒られるんだ?俺はなにも悪いことしてねえよ?』


 ライターを片手に、駆けつけた先生やいじめの主犯達をゾッとするような冷たい目で睨んだ葉ちゃんは恐ろしすぎて今だに忘れられない。


「はあ?んなわけねえだろ。これと付き合うくらいなら犬の方がマシだっての」

 

 私は犬以下ってことですか……。


 はっ!?

 それとも犬になにか別の意味が含まれているんですか!?


 もしかして“下僕”って書いて“犬”って呼ぶパターン!?


 身分を超えた恋ですか!?


 なにそれヤバイ萌える!

 侍従関係っていいよね!


 下剋上もあり!


「あいっかわらずやなやつぅ!あ、二人がいるってことはまーくんも来てるんでしょ?どこいるの?」


 女の子もとい金髪さんは冷たくされることに慣れているのか全くめげない。


 顔をしかめて向井様を睨む。


「知るか。そいつら連れてとっとと失せろ」


「女の子に対して失せろとかマジありえない!拓哉がいじめたってまーくんにチクろっかなぁ?」


 まーくんって誰だろう?


 この人の彼氏かな?


 向井様の知り合いみたいだけどそんなあだ名の人いたかな?


「あ゛ぁ?テメエ……変ないいがかりつけんじゃねえよ!あいつキレさせたらヤバイってテメエが一番知ってんだろうが!」


 私が怒られたわけじゃないのに反射的に小さな悲鳴が漏れた。


 でも金髪さんは平然としている。


 向井様に恐れられるまーくんって何者!?

 

「いいがかりとかひどくない?てか話戻すけどその娘は?どう見ても二人の友達に見えないんだけど?」


 金髪さんの言葉に向井様は私を一瞬だけ見て、考えこんだ。


 え?考えこむようなことですか!?


 そんなに考えこまなくても掃除係とでもお伝えすればいいんじゃ……?


 なぜか葉山様はその様子を興味深そうに、葉ちゃんは見定めるように冷たい目で向井様を見てる。


 南並さんはまだ蛍さんとお菓子の話をしてる。

  

 スルースキル高すぎません!?


 双子ちゃんは向井様の怒声で怯えちゃってる。

 

 怖い思いさせてごめんね。


「こいつは…………」


「憩は俺の友達。ずっとハナに紹介しよう思ってた」


 向井様の言葉を引き継いだのは四分一様。

  

 背が高いせいなのか、頭にいっぱい桜の花弁がついていた。

  

 髪の色もあって葉桜みたいだ。


 向井様、言葉を奪われたからってそんなに睨まなくても……。


「まーくんの友達?珍しいタイプだねー」


 あっ!?

 まーくんって四分一様のこと!?


 正義だからまーくん?

 なるほど!わかりやすい!


 って!感心してる場合じゃない!


 これはもしかして“私の彼氏に近づくんじゃねえよ”って遠回しにいわれてる!? 


 それとも四分一様は浮気を疑われているんじゃ……!?


「ち、違います!四分一様と私が友達なんておこがましいにもほどがあります!私はただの同じ学校なだけです!」


 私の言葉に場の雰囲気が凍りついた。


「……憩は俺のことをずっとそんな風に思ってたの?」


 しょぼんとする四分一様に罪悪感が積もる。


 その姿はまるで四分一様がほんとに私を友達だと思っていたみたいに見えた。


 そんなことあるわけないのに……。


「あ、あのー。その……」


 続く言葉が見当たらない。


 だって私は四分一様の友達になれるほどできた人間じゃないから。


 登場人物が急に増えたので軽くまとめ。

 まだまだ増えます(笑)


 葉ちゃん……憩の中学からの友人。同じ歳で他校の生徒。容姿・声が男っぽい。怒ると怖い。苗字は長澤ながさわ


 南並鈴と蘭……双子の姉妹。五歳。蓮の一番下の妹と同じ幼稚園。ツインデールが鈴。ショートカットが蘭。姉がいる。


 南並歩真……双子の姉。葉と同じ学校の生徒で一つ年下。ナイスバディのクール系美女。でも言動が残念。性的嗜好ではなく愛でる意味で十二歳以下の男と女が好き。


 蛍……憩いわく病弱系イケメン。歩真の彼氏。弟が双子と同じ幼稚園に通っている。 苗字は高萩たかはぎ


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