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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
36/111

丸文字って女の子だけが書くんじゃないんですか!?後編

 高槻だって怒るんです。

 あの後、昼休み終わりのチャイムが鳴り、そのまま解散になった。


 どれだけ考えても葉山様のいった意味はわからない。


 私が頭がよくないからかな?


 ……事実だけど自分でそう思って悲しくなった。


 どうしたら頭がよくなるんだろ?


 魚か!魚を食べればいいのか!?


 いーぴーえーだかでぃーえいちえいだか知らないけど、そういう成分が頭にはいいんだよね!


 (さば)とか青魚の方がいいらしいんだけど、血合いが生臭くてあんまり好きじゃないんだよね。


 (かれい)とか白身魚の方が好きだなあ。


 よし!今日の夕食は魚にしてもらおう!


 お刺身とかお寿司よりも焼き魚とか煮魚の方が好き。


 え?なんでって?

 わさびが苦手だからだよ。


 考えこんでいたら放課後になっていた。


 時間が経つのは早い。


 今日はバイトが休みだから掃除の日。


 先週、関元様と四分一様に助けられてからどちらかが迎えに来てくださる。


 多分というか絶対にいじめられているとバレた。

 

 あの状況を見られたらどんなに鈍い人でもわかっちゃうよね……。


 あれからいじめが激減したから、多分お二人がなんかしてくださったんだろう。


 私なんかのために申し訳ない。


 今度お礼をしないと。


 何がいいかな?


 四分一様はお菓子をプレゼントしたら喜ばれそう。


 関元様は思いつかないなあ……。


 そんなことを考えていたからだと思う。


 教室に入って来たその人に気づくのが遅れた。


 机を乱暴に殴りつける音で現実に帰る。


 うぇい!?なにごと!?


「話がある。ついてこい」


 目の前に立った城野様は凍えるような視線を容赦なく突き刺す。


 私もここまで近くにいたのによく気づかなかったな……。


 お二人に助けられてから警戒心が薄くなってきていたのかな?


 とてもじゃないけど断れる雰囲気ではない。


「わかりました」


 城野様は私をじっと睨みつけてから歩きだした。


 私は荷物を持って後を追いかける。


 歩きながらこっそりと関元様にメールを送った。


 助けを求めたわけじゃなくて、先生にお使いを頼まれたから今日は掃除にいけない、と嘘を吐いた。


 心苦しいけど、ほんとのことをいってまた助けてもらうことの方が申し訳ない。


 辿り着いたのは校舎裏。


 城野様はここがお好きなんだろうか?


 いやそんなわけないか。

 

 ただ単に今からやることをするのに、人目につかないこの場所が都合がいいからかな。


「俺は拓哉さんに近づくなっつたよな?なのにさっきのはなんだよ?」

   

 さっきのあれとは多分階段でのことだ。

 

「あれはその、向井様を避けてるのがバレまして……それで理由を聞かれて逃げたら落ちそうになって、助けていただいただけです!」


 つまり私から近づいたわけじゃなくて、全ては事故だったということだ。


「くだらねえ嘘つくな」


 城野様は眉をつり上げて、私を壁に突き飛ばした。


 思ったよりも力が強くて、壁に背中を強くぶつける。


 痛みはあまり感じなかった。


 それよりも城野様に否定されたことに混乱してた。


 嘘?

 私は何も嘘を吐いてない。


 全部ほんとのことなのに。


 …………ああ、そっか。

 

 最近四分一様や関元様が優しくしてくれるから忘れてた。


 私はこの学校ではいてもいなくてもいい存在だってことを。


「……嘘じゃないです」


 全部ほんとのこと。


 でも城野様は私が何をいっても聞いてくれないんだろうなあ。


 諦めにも似た気持ちで城野様を見上げる。


「拓哉さんがお前なんかを助けるわけがない!」


 忌々しそうに睨まれても怖くないのは、向井様で耐性がついたからから?

 

 それとも城野様のお気持ちが少しだけわかるから?


「……そうですね。私もそう思ってましたよ」


 向井様だけじゃない。

 四分一様も、関元様も、葉山様も、先生達も、お兄さん達も。


「どうして私なんかを助けてくださるんでしょうか?」


 答えは本人しか知らない。

 教えてくれる人もいるし、そうじゃない人もいる。


 私は臆病者だからわからないことも、裏切られることも怖い。


 だから誰とも仲良くなれない。

 

「俺はお前みたいなやつが嫌いだ!」


 苛立ちをぶつけるみたいに腹を蹴られた。


 さすが元サッカー部。

 今までにないくらい痛い。


 骨は折れてないと思う。


 顔を狙わなかったのは城野様なりの優しさなんだろう。


 顔に青あざを作って帰ったら、家族に心配されるし、バイトにもしばらく行けない。


 またヴェルさん達に迷惑をかけてしまう。


 ヴェルさんは優しいから、バレたらほんとに灯火さんを連れて乗りこんできそうだし。


「今みたいに弱いふりをして拓哉さん達をたぶらかしたんだろ?」


 一発だけじゃ収まらなかったみたいで、さらに蹴られる。


 いじめって物を盗られたり、陰口をいわれたりするだけしゃない。

 

 今みたいに直接苦痛を与えられることもあった。


 でも私は無言で耐えてきた。


「あんた痛くねえのかよ?Mか?」


 城野様は嘲笑混じりにいった。


 五回は蹴られたかな?

 

 でも蹴られたり罵られて気持ちいいとは思えないから、多分違う。


 抵抗もせずに何もいわないのは今までの経験からだ。


 抵抗すればするだけ、何かいえばいうだけ長引くだけ。


 それならいっそ人形みたいに抵抗もせずに無言でいたらすぐに飽きられた。


 いてもいなくてもいい空気みたいな存在。


 それを寂しい人だけって思う人もいるかもしれない。

 

 でも私はこうやっていじめられるくらいなら空気の方がましだ。


 ほんとどうしてこうなったんだろう?


 原因はわかっている。


 私は選択肢を間違えたんだ。


 BLゲーとか乙女ゲーとかみたいに人生もリセットできたらいいのに。


 そしたら私はもう間違えないのに。


 四分一様は私に笑いかけないし、お菓子もくれない。


 関元様は私を助けてくれなし、心配もされない。


 葉山様は意地悪なことをいわないし、デコピンもしなし、ファッションについて語り合うこともないい。


 お兄さん達と一緒にゲームも出来ない。


 向井様は遠い人のまま、すれ違っても目が合うこともなくて、人形のような無表情。


 そんなもう一つの未来を想像して、なぜだかぎゅっと心臓が締めつけられた。


「都合が悪いと泣くのかよ」


 いわれて始めて泣いていることに気づいた。


 あれ?なんで私は泣いてるの?


 向井様と関わっていいことなんてばっかりじゃなかった。


 セクハラされたし、怒られたし、馬鹿にされたし、泣かせれたし、腹が立った。


 今の状況もある意味向井様のせいだ。


 向井様と関わらなかったら、空気でいられた。


 空気だったら人目を気にせずにいられたから、幸せだった。


 なのにどうしてこんなに寂しいって思うんだろう?


 もしかして私は……。


 近づいてくる人の足音が聞こえた。


 足音は迷いなく私達に近づいてくる。


「なんで」


 城野様と私の声が重なる。


 二人の視線の先にはいたのは向井様だった。


 しかも全身から不機嫌なオーラを出している。


「涼、なにしてんだ?」

 

 向井様は質問をまるっと無視して城野様を睨みつける。


 その視線は城野様と比べ物にならないほど恐ろしい。


 私に向けられたわけじゃないのに全身が震えた。

 

「この女が身の程知らずだからしめてました」


 城野様の声は震えていたけど、しっかりと答えていた。


「誰がそんなことをしろっていった?」


 私に怒った時とは違う。


 氷のように凍えるような怒気だった。


 その冷たさに思わず息を飲む。


 城野様は向井様のその態度にショックを受けていた。

 

 でも向井様は追い討ちをかける


「お前のそういうのうぜえ」 


 城野様は目に見えて悲しんだのがわかって、私は自業自得だと嬉しくも、清々しい気持ちになることもなかった 


「……そんないい方ないじゃないですか?」


 ただ湧いたのは怒りだった。


 私はゆっくりと立ち上がって、向井様を睨みつけた。


「何いってんだ、お前?いくらバカでも涼に何されたか忘れたわけじゃねえだろ?」


 そう。私はバカだ。

 

 今も蹴られた場所が痛い。


 城野様に向けられていた視線を正面から受けて、泣きそうになってるくせに向井様に歯向かってる。

 

 向井様にとっちゃそんなの蚊に刺された程度だってわかってる。


 それでもいいたいことはある。


「やり方は間違っていたと思いますが、城野様は向井様を思って行動したんですよ。それがどれだけありがたいことかわかってますか?」


 自分のことを思って動いてくれる人がいる。


 それがどれだけ励みになるか、向井様は知らないんだろうか?


「城野様は向井様に嫌われるかもしれないってわかってて行動したんです!それは誰にでもできることじゃないんです!」


 向井様に嫌われたら冗談抜きで殺されるかもしれない。


 城野様は私よりもそれを知ってるはずだ。


 それでも城野様は向井様に歯向かった。


 原因の私がいうことじゃないかもしれない。


 だけど、だからこそ、声を大にしていいたい。


「向井様はそれをちゃんとわかってますか!?」


 城野様はほんとに向井様を好きだって!


 嫌われてもいいって思うくらいには役に立ちたいって!


 城野様が向井様を上っ面だけじゃなくて、心から慕ってるって全部ちゃんとわかってますか!


 いいたいことをいったら肩で息をしていた。

 

 こんなに叫んだのはいつぶりだろう。


 目の前にいる向井様は面食らったような顔をしていた。


「涼、そいつのいったことは本当なのか?」


 向井様は驚いたように城野様に聞く。


「……はい」


 やや間があって城野様が答えた。


「涼、悪かった」 

 

 向井様の謝罪に城野様は目を見開いた。


 かくいう私も驚いた。


 向井様って謝れるんだ!?


 呆然とする私達を無視して、向井様はずんずんと私に近づいてくる。


 背後は壁で逃げる場所はない。


「あ、え?な、な、何してるんですか!?」


 いきなりだった。

  

 強引に制服のシャツと下着を胸元近くまでめくられた。


「チッ。うるせえな。黙ってろ!」


 舌打ちと冷たい声に何いえなくなる。


 いやでもさすがにこんな風にじっくりと肌を見られるのは恥ずかしいんですよ?


 じっと羞恥に耐えていると、今度は膝裏に手を入れられて空いた手で支えるように持ち上げられた。


「へ?」


 これって乙女の憧れお姫様抱っこじゃ……?


 あれって男女でも男同士でも萌えるシチュエーションだよね!


 向井様って力持ちだなあ。


 って!

 そんな呑気なことを思ってる場合か!?


「どこに向かっているんですか!?」


「保健室に決まってんだろ?」


 いやなんとなくわかっていたけどそれはやばい!


 加東先生にバレたらめちゃくちゃ怒られる!


「大丈夫です!ほらこんなに元気ですよ!」


 軽く体を揺すられ、蹴られた場所に痛みが走った。


「どこが大丈夫だ?あ゛ぁ?」


「湿布貼れば一週間くらいで……すみません!ありがとうございます!」


 凄まじい眼力で睨まれました。


 超怖い!


 そのまま保健室に連れて行かれて、加東先生にものすごく怒られました。


 向井様と城野様も一緒に。

Q.葉山蓮の第一印象は?


高槻憩「エロい人ですね。フェロモンが全身から出てますよね」


Q.葉山蓮の現在の印象は?


高槻憩「ちょっと意地悪ですけど、そこがまたいいんですよ!ピンヒールで踏まれたら新しい世界に行ける気がします!あ、葉山様!うわあ!?かわいいシュシュですね!え!もらっていいんですか!?ありがとうございます!大切にしますね!」

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