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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
35/111

丸文字は女の子だけが書くんじゃないんですか!?前編

 久しぶりの登場。



 ※すみません!次の次の話と日付が合わなかったので訂正しました。


 一週間と一日目→一週間と三日目

 関元様と四分一様に助けていただいた翌日。

 

 久しぶりにゴミ一つない靴箱の中に可愛らしい丸文字で書かれた手紙が入っていた。


 手紙には人気のない校舎裏に来るように書かれていた。


 いつもなら無視するんだけど、差出人の名前を見てやめた。


 放課後に指定された場所に行くと、手紙の差出人は一人で先に待っていた。


 敵意のこめられた鋭い視線が私を貫く。


「あんたこれ以上拓哉さんに近づかないでくれる?そもそもあんたがあの人の側にいること事態がおかしいんだから!」


 テンプレの台詞と状況。


 相手はきらびやかなモデルのような美しい女の子だと思った?


 残念。目の前にいるのは男だ。 


 男は目に痛い金髪に猫のような大きな目、小柄な体格をしている。


 そう。手紙の差出人はここ二週間ほどお姿を見ていなかった城野様だった。


 だが腐女子の私は歓喜せざるを得ない!


 さすが向井様!


 しがない虫のような私が近くにいるだけで、城野様を嫉妬させるほど魅了なさるのですね!


 けしからん!もっとやれ!


「はい!喜んで!」


 わかってます、城野様!


 男同士の世界に私などという存在は必要ありませんよね! 


 ただできればお二人のイチャラブを遠くの物陰から見守らせてください!


 薄くて高い本のネタにするので!


「あんた俺の話ちゃんと聞いてた?」


「向井様から離れればいいんですよね?」


 私の言葉が信用できないのか、ジト目で睨まれる。


 そんなお顔も可愛らしい。


 空気を読んでいわないけどこっそりと萌える。


「……ほんとに出来んの?俺がバカだから嘘ついてもバレないって思ってねえ?」


「嘘なんてとんでもないです!そもそも向井様と同じ空気を吸ってることもおこがましいくらいですし!」


 あんなかっこいいお顔の人と同じ生物であることすら、引け目を感じるくらいだ。


「…………同じ空気ってあんたキモイ。嘘ついてたら今度こそマジで殺すから覚えといて」


 本音をいっただけなのにドン引きされました。

 なんで!?


「わかりました」


 私の返事が聞こえたのか否か。 

 城野様はそのまま立ち去っていきました。




 それから私の静かな戦いが始まった。


 向井様と会わないように周囲に気を払い、どこへゆくにも目視を行ってから、移動した。


 進行方向から向井様が見えれば、遠回りでも別のルートを選択。


 近づいてきたら女子トイレか空き教室に避難。

 それでもダメな時は物陰に隠れた。


 放課後は必要最低限の用事の他は断り、即効で帰宅するかバイトへ。


 関元様や四分一様を通じてのお呼び出しはもちろん無視。 


 最初の一週間は上手くいった。


 そして今日は一週間と三日目の昼休み。


「おい、テメエ。俺を無視するとはいい度胸だな?」


 階段を登りきった先の曲がり角、私の死角になる場所に向井様はいらっしゃいました。


 仁王立ち、両手組み、眉間に深いシワのオプション付きで。


 どこかで私を監視している城野様へ一ついいわけさせてほしい。


 気配を消して背景と一体化していたら誰も気づきませんよ!


 向井様、いつもの誰もを平伏せさせる皇帝オーラはどうしたのですか!


「理由をいえ」


 話せるわけがない。


 あなたを思う一人の男からお願いされているなんて。


 私に出来るのは黙秘と逃走だけだ。


 踵を返して階段を駆け降りる。


「あ」


 スキル『ドジ』を発動!

 私は最上階から段差を踏み外した!


 うへえぇ!?

 私よ、このタイミングでやらかす!?


 なんて思っている間にも近づく階段との距離。


 この高さだと最悪死ぬ!?

 ヤバイ!?でも何もできない!


 もし死んだらテンプレの異世界転生してくれないかな!

 できればチート設定付きで!


 私は今までにない速度でそんなことを考えた。


 命の危機にもブレなかった私は大変残念な人間である。


「何してんだ!」

 

 後ろから腕を引かれ、誰かの腕の中に収まる。


 誰かなんていわなくてもわかる。


 ゾクリと背筋が寒くなる視線が突き刺さる。


 視線を辿った先には物陰から私を親の敵のように睨む城野様。


 思わず叫びそうになった。


 でも向井様が私の視線の先にいる城野様に気づく前には姿を消していた。


 一難去ってまた一難。


 新たな命の危機の予感に冷や汗がたらりと流れた。


「どこ見てんだ?」


 そうだった!

 目先の危機を忘れていた!


 私は今向井様の、う、うう、腕の中にいるんだった!?


 思ったよりもずっとたくま……じゃなくて!

 

 この体制はあれだ!

 城野様じゃなくても抱き合っているように見える!

 

 こういうシチュエーションは私じゃなくて城野様の方がずっと萌える!


 私が保証しよう!

  

 だから早く他の人に見つかる前に逃げよう!


「あ、あ、ありがとうございました!助かりました!もう大丈夫です!ではでは!さようなら!」


 あ……あれ?おかしいなあ? 

 どれだけ力を込めても離してもらえない。


 むしろ力こめてませんか?


「さっきから……俺を無視しやがってテメエは何様のつもりだ?」


 耳元に直接ドスの聞いた声が響く。


 シチュエーションだけ見ればどこかのバカップルみたいなのに、そこに甘さなんて一切ない。


 ひぃいいい!?


 向井様から与えられた恐怖を思い出して勝手に体が震え出す。


 ……悲しいかな。

 もはや条件反射になってる。


 私が抵抗しなくなった(正確には出来なくなった)ことに向井様は気をよくしたようです。


 耳元に口を寄せられたまま、くつくつと魔王のように笑われます。


 怖い!怖すぎる!

 この後に何するつもりですか!?


 悪い予感しかせず涙が溜まっていく。


「……やっぱたまらねえ」


 ぎゃあああああ!

 耳が溶けるぅううう!


 み、耳元で腰が抜けそうな妖艶な声を出さないでください!?


 相手を間違えてますよ!?


 力を抜けさせて動けなくするつもりですか!?


 よかったですね!

 効果は抜群ですよ!


 なんて叫びたいのに声が出ない。

 

「……壊してえ」


 ポツリと向井様はいった。


 イマナンテオッシャイマシタ?


 聞き間違いじゃなきゃ大変物騒な言葉が聞こえたような……?


 物理的ですか!?

 精神的ですか!?

 

 いやどっちも恐ろしいけども!


 神様!仏様!悪魔様!

 なんでもいいからこの状況から助けてください!


「アンタ達何昼間から盛ってるのよ」


 まさかの葉山様が現れた!


 しかもとんでもない誤解をされている!?


「ち、ちち、違いますよ!向井様と私なんてありえないです!」


「ふうん?アタシにはまんざらでもないように見えるけど?」 

 

「葉山様の目はどうなっているんですか!?」


 思わず叫んでしまった。


「邪魔して悪かったわね」


 葉山様は振り返って元来た方へ行こうとする。


「すみません!嘘です!葉山様の目はお綺麗です!クールビューティです!沖縄の海より澄んでます!」


 沖縄の海がどれだけ澄んでいるのかテレビでしか知らないけど、めちゃくちゃ綺麗だった。


 いつかは行ってみたい。


 葉山様はため息を一つはついて、顔だけ振り返る。


「拓哉、湊と正義に見つかる前にそれを離さないと面倒なことになるわよ?」


「ゲッ!マジかよ」


 ペイっとゴミのようにあっさりと床に捨てられた。


 望んだ結果なのにひどい。


 まあ助かったからいっか。


「葉山様、ありがとうございました!」


 立ち上がって服についた埃を払って、葉山様へ深く頭を下げる。


「アンタってほんと調子いいわね」


 葉山様は呆れたように笑ってくれた。


 手招きされて近づくとデコピンをされる。


 なぜに!?


「拓哉も男なのよ?隙を見せれば襲われるわよ」


 未遂だけど身によーくしみました。


 エロいことされると思って、油断したところでボコボコにされるんですよね!

 

「どう対処したらいいんですか?」

 

「それくらい自分で考えなさいよ」


 いやわからないから聞いているんですよ?


 葉山様はそれ以上何も教えてくれなかった。


 催涙スプレーとか装備した方がいいのかな?


 でも使う前に向井様に奪われそうだ。


「わかりました、葉山様!私、格闘技、始めます!」

 

 私は拳を握って突き上げる。


 癒詩と違って、運動には自信がないけど、命がかかってるなら私にもできるはず!


「……アンタが拓哉のことをどう思っているのかよくわかったわ」


 葉山様は呆れを通り越して、何か悟ったような顔をされた。


 そういう意味でいったんじゃないんですか?


 もしかして他の意味があるんですか?


「あぁ?どういう意味だ?」

 

 あ、よかった。仲間がいる。


 私は少し安心した。


 それを聞いた葉山様は長くて深い溜息を吐いて、額を押さえる。


「アンタ達って鈍すぎるわよ」


 向井様と私の頭の上に大量のクエスチョンマークが浮かんだ。


 


Q.四分一正義の第一印象は?


高槻憩「なんで馬?でしたね。確信犯なのか天然さんなのか真剣に悩みました」


Q.四分一正義の現在の印象は?


高槻憩「可愛いです!誰がなにをいおうと癒し系の可愛さです!いつも貴重な癒しをありがとうございます!見た目は歴戦の戦士なのに好きな物がお菓子なんですよ!?可愛いと思いません?!?あ!正義さん!え?飴くれるんですか!ありがとうございます!限界まで食べずにとっておきますね!」

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