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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
31/111

これっていじめなの?

 葉山蓮視点。


 ブックマークが20件を越えていました!


 ありがとうございます!

 頬がゆるゆるになるほど嬉しいです!


 これからも高槻と愉快な仲間達をよろしくお願いいたします。

 へっくし!


 そんな間抜けなくしゃみがどこかから聞こえて来た。


 周りを見渡してもくしゃみをしたようなやつはいない。


 空耳か?


 そう思っていたら目先の女子トイレから出てきた高槻が、鞄からタオルを取り出して髪を拭き始める。


 トイレに行ってなぜ髪が濡れるんだ?


 七月や八月なら暑くて水をかぶる馬鹿もいるが、今はまだ三月。

 

 少しは暖かくなってきたけど、水浴びには寒すぎる時期だ。

 

 こいつの思考回路が理解できない。

 

 高槻はタオルで視覚が狭くなっていたからか、俺が近づいてもぶつかる一歩手前まで気づかなかった。


「アンタなんで濡れてんのよ?」


 当然の質問だったと思う。


「これは、その……蛇口が硬かったので思いっきりひねったらばしゃーと水が勢いよく出まして。それを頭から被って今にいたります……」


 なのに高槻は俺の視線からうつむいて逃げた。

  

 強張った顔にタオルを強く掴む手、かすかに震えた声。


 これだけ嘘を吐くのが下手な人間は他にいないだろう。 


 でも高槻の嘘を責めても正義ならともかく、親しくない俺にはなにもいわないだろうなと思った。


「……アンタってほんとどんくさいわね。ここにいてもしかたないからとりあえずついてきなさい」


 俺は騙されたふりをして、高槻に背中を向けて歩き出す。


 ついてこないかと思ったらあっさりとついてきた。 


 その上俺の心配までしてきた。 


 次の授業の体育は外で二クラス合同のサッカーだ。


 確か俺と拓哉のクラスと正義のクラスだ。

 

 うちの学校は騒ぐのが好きなやつらが多いから、二人を炊きつけて、本気を出させるだろう。


 そうなれば後半からめんどくさいことになる。


 だから俺は最初から今日の体育を見学するか休むつもりだった。


 それを伝えるとなぜか気持ち悪いくらいの笑顔でお礼をいわれた。


 立ち止って高槻の顔を覗きこめば、しどろもどろになる。


 ほんとにこいつは


「変な娘」


 前を向き直して、歩き出す。


 自分のペースで歩いていたら高槻を置いて行ったらしい。


 急いで駆け寄る足音が聞こえ、二メートルくらい距離を開けてついてくる。


「綺麗だなあ」


 ポツリと聞こえてきた声は高槻の本音だろう。


「今なにかいったかしら?」


「へっ!?い、いえ!何もいってませんよ!?」


 浮気がバレた女のように焦る高槻に苛立つ。


「アンタって嘘を吐くのが下手過ぎるわよ……。それで何をいったの?」


 振り向かないまま聞く。


「き、綺麗だなっていいました」 


 二人の間の空気が凍りついた。


 キレる時、拓哉と正義は手が出る。


 湊は無表情になるし、涼は怒声をあげる。


 そして俺は“嘲笑(わら)う”らしい。


「……へえ。それでどうしたいと思った?保健室で“俺”に抱かれたいとでも思った?」


 口の両端が緩く高く持ち上がる。


 今、最高にキレそうだ。


 だがそれは背後から聞こえてきた必死な声に殺気を削がれてしまった。


「そ、そんな抱かれたいとかおこがましいといいますか!恐れ多いといいますか!と、とにかく!そのつもりは微塵もないので安心してください!」


 言葉こそ丁寧だが、いっていることは『俺に抱かれるなんて絶対にありえない』だった。


 今までそこまではっきりと拒絶されたことがない。


 失礼なやつだと思う反面、面白く思う自分がいた。


「ぷっ!アンタってほんと失礼よね」


 もうキレるつもりはないのに、あまりにも必死な高槻がおかしくて、ついに耐えきれずに笑い声が漏れる。


 高槻といいあっている内に保健室の前に来ていた。


 扉を開けて中に入るが、間の悪いことに保健医の加東先生はいなかった。


「そのうち戻ってくるでしょ。アンタは濡れている服を脱いで脱水にかければ?」


 保健室から出て行こうとすると、不思議そうな顔で高槻が呼び止めた。


「葉山様は今から授業に出るんですか?」


「トイレよ。トイレ。そんなことまで一々アンタにいわなきゃいけないの?」


 それだけじゃなく、ジャージから制服に着替えにも行くつもりだ。


 わざわざいわないが。


「失礼なことを聞きました。いってらっしゃいませ」


 綺麗なおじぎをして見せて、はにかむような笑顔を浮かべた。


「それ今度拓哉にいってやったら?喜ぶわよ」


 思わずそういってしまった。


「……?わかりました」


 明らかにわかってないが、いつ理解するんだろう?

 

 二人とも鈍感そうだから、何かなければ一生気づかなさそうだ。


 しばらくして鞄を持って、保健室に帰ってくると、高槻は残念そうな顔をした。


 ジャージが好きなのか?


 いやそれよりも気になったのは。


「なんでシャツを脱水かけてジャケットを着てんのよ?」


 シャツよりもジャケットとスカートの方が大切だと思う。

 

 なのになんでこいつは逆なんだ?

 

「え?ああ。ジャケットとスカートは察水スプレーをかけているんで無事なんです」


「なるほどそういうことね……ってアンタその下は!?」


 途中まで納得しかけたが、どう考えてもおかしい。

 

 高槻は驚いたように目を瞬かせる。


「濡れたので何も着てませんよ?」


 高槻はきょとんした顔でとんでもないことをいい出した。


 男の前で下着を着ない馬鹿がどこにいる。


 襲ってくれといっているものだ。


 いや俺はこいつを襲う気なんて全くないけど。


「アンタ馬鹿なの!?アタシが着てたやつだけど汗かいてないからこれでも着てなさい!」


 鞄からジャージを取り出し、渋る高槻に押しつけるように渡す。


 俺に押された高槻はカーテンを閉めたベットの上で着替える。


 保健室を出ようとした俺をまた引き止める。


「葉山様。このタイミングで加東先生が帰ってきたら誤解されませんか?」


 呑気な声が腹立たしい。


「……アンタねえ、そういうことはもっと早くいいなさいよ」


 いつの間にか開いていた保健室の扉の前に加東先生が立っていた。


 一目で激怒しているとわかる。


「お前らのための教育的指導だ」


 弁明する時間も与えられないまま、腹に掌底を決められた。


 加東先生が強いという噂は本当だった。


 俺は無様に床に倒れこんだ。


 高槻がカーテンを開け、状況を理解して顔を青ざめさせたのがわかった。  


 俺は掌底だったのに、高槻はチョップだ。


 男女差別も甚だしい。


 さらに誤解が解けたのはそれから一時間後でそれまでずっと説教をされた。


 マジで最悪な一日だ。

 俺は何もしてないのに。


 放課後、迷惑料として高槻に高いファッション誌を買わせた。


 善意を見せたらあんな目に合わされたんだ。


 これくらいもらわなくては割に合わない。


 だが付録の花柄のポーチはいらない。


 男の俺にどう使えと?


「これいらないからあげるわ」


 隣を歩く高槻に渡す。


「ありがとうございます」


 高槻は少し悩んだあとに嬉しそうな顔で受け取った。


 俺に買わされた雑誌の付録を渡されて何が嬉しいのか?


「変な娘」


 初めてまともな会話を交わした時からそうだった。


 でもだからこそ高槻は俺達の側にいられるのかもしれない。


 高槻と別れてからスマホを取り出し、湊に電話をかける。


 挨拶もそこそこに本題に入る。


「ねえ高槻っていつからいじめられてるの?」


 電話口で湊がためらっているのがわかった。


 でも答えを聞くまで譲るつもりはない。


 湊は溜息を吐いて答えてくれた。


「以前からちょっとしたものはあったらしいけど、十日くらい前から本格的にいじめられてるよ」


「……そう。わざわざ調べてくれてありがとう」


「蓮、余計なことはしないでね」


 余計なことか……。

 今からやろうとすることは余計なことになるのだろうか。


 いや余計なことじゃない。


 だけど望むことじゃないのはわかる。


「当然じゃない。心配いらないわよ」 


 やや一方的に電話を切った。


 電話でよかった。


 手で口元を覆う。


 今、自分でもわかるくらい口の両端が緩く高く持ち上がっている。

Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


虎刈り赤さん「え?俺も答えるのか?こういうのは向井さんとかの役目じゃ……。第一印象は忘れた」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


虎刈り赤さん「ゲーム好きだな。俺よりも詳しくて時々引くけど、腕はそこそこだ。あとえ、笑顔が……普通に可愛い」

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