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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
30/111

これっていじめですか!?(十日目の休憩時間)

 着替える時は周囲を気にしましょう。

 阿部先生のおかげで生化学の授業中にいじめられることはなくなった。


 でもその反動なのか他の時間のいじめが増えた。


 なんてこった!?


 しかも現在進行形ですよ、奥さん!?


 英語なら主語 + be動詞 + 動詞ingですよ!?


 何をされてるかって?


 授業の合間の休憩時間にトイレに行って上から水をかけられているんですよ!?


 多分トイレ掃除用のホースでかけられているんだと思う。


 しかし!私の鞄や制服は全く濡れていない!


 なぜなら雨に濡れてもどころか泥をぶっかけても大丈夫な超強力撥水スプレーをかけて、中身をビニール袋に入れて完璧に防御してるから!


 でもなんでも弾くこのスプレーには弱点がある。


 ガラス面や人体には使えないのである……。

 

 つまり私自身は濡れネズミ。


 体と(洗濯の都合で)シャツと下着と靴下だけ濡れていくってすごく気持ち悪い!?


 あ、でも相手が私じゃなきゃ、水攻めってけっこうおいしいシチュエーションだよね!


 息が出来なくて赤くなった顔と切れ切れの息!


 そして何より!

 濡れることによってぴったりと張りついて体のラインを強調する服と透ける肌! 


 うっすら見えるプラス濡れていることでその先を想像させる効果もある!


 つまり何がいいたいかっていうと!

 チラリズムって大事!

 

 ここ重要!蛍光か赤線引いて!

 テストに出るよ!


 ただ見せるだけよりも絶対にエロくなるから!


 なんて。

 妄想に浸っていたら誰もいなくなっていた。


 鍵を開けてそろりと個室から顔を出して見てもやっぱりいない。


 飽きてどこかに行ったんだと思う。 


 三月に入ったとはいえまだまだ濡れると寒いんですよ!?


 へっくし!

 

 トイレから出た私は鞄からタオルを取り出して髪を拭く。


 タオルは瞬く間に水を吸って重くなった。


 荷物になるけどもう一枚持ってくるべきだったなあ。


 教室とは正反対の方へ向かっていたから?


 それともタオルで視覚が狭くなっていたから?


 目の前からやってきた葉山様にぶつかる一歩手前まで気づかなかった。


「アンタなんで濡れてんのよ?」


 葉山様は私を怪訝そうな顔で見る。


 知り合いがびしょ濡れ(しかも三月に)だったら誰でも変に思うだろう。


「これは、その……蛇口が硬かったので思いっきりひねったらばしゃーと水が勢いよく出まして。それを頭から被って今にいたります……」


 葉山様からの疑惑の視線からうつむいて逃げる。


 まさか先生や四分一様用に考えていた嘘を葉山様に吐くことになろうとは……。


 騙されてくれますように! 


「……アンタってほんとどんくさいわね。ここにいてもしかたないからとりあえずついてきなさい」


 葉山様は呆れたように溜め息を吐いて、私に背中を向けて歩き出す。

 

 ほんとに騙されてくれたのか気になるけど、聞くに聞けない。


 とりあえず葉山様についていけばいっか。 


「どこに行くんですか?」


「保健室よ。あそこなら洗濯機で濡れた服に脱水かけられるし、タオルの一枚や二枚貸してくれるでしょ?アンタまさかそのまま授業に出るわけじゃないでしょうね?」


 さすがに濡れたまま授業には出られない。


 だから次の授業はサボってどこか日当たりのいい場所で服を乾かすつもりだった。


 次は国語だから一回くらいサボっても問題ないし。


「私は出ませんけど葉月様は次体育なんですよね?早く行かないと遅刻しますよ?」


 そう!

 なんと今葉山様はジャージ姿なのだ!?


 学校指定のジャージを葉山様が着るとブランド物に見える!


 チャック式の襟元から覗く首筋がエロい! 


 生活感があるところがまた魅力的だと思う!


「アタシはいいの。最初からやる気なかったから。でもそうねえ。アンタせっかくだからアタシの暇つぶしに付き合いなさいよ」


 有無をいわせない感じがまるでお兄様じゃなくて女王様みたい。


 あっ!ピンヒールとか似合いそう!


 そのおみ足で踏まれたらきっと新しい世界を開く人が続出する!


「ありがとうございます!」


 新しいネタゲットだぜ!


「なんでお礼をいうのよ?」


 葉山様は立ち止って私の顔を覗きこんだ。


 ああ今日もむき立て卵のようなお綺麗なお顔ですね!

 ほんとに毛穴あります?


「なんとなくですね。いいたくなりまして」


 本音なんてとてもじゃないがいえない。


 絶対ドン引きされる!


「変な娘」


 半目で睨まれました。


 まさか心の中が読まれているんじゃないよね!?


「まあいいわ。さっさとついてきなさい。置いてくわよ?」


 考えている間にずいぶん先に行ってしまった葉山様の元へ急いで駆け寄る。


 二メートルくらい後ろをついていく。


 そっと顔を上げて葉山様を見る。


 後ろから見ても猫のようにしなやかで無駄のないシルエット。

 

 肩にかかるくらい長い紫に染めた髪が動きに合わせて揺れる。


 髪で見え隠れする白いうなじは私よりも色気があって。


 やっぱり性別なんて関係ないくらいに。


「綺麗だなあ」


「今なにかいったかしら?」


「へっ!?い、いえ!何もいってませんよ!?」

  

 やばい!?

 思ったことが口に出てしまった!


 葉山様はオネエ扱いされるのが嫌いみたいだから綺麗とか禁句だよね!?


「アンタって嘘を吐くのが下手過ぎるわよ……。それで何をいったの?」


 うぐっ!?

 誤魔化されてくれなかった……。


 じゃあさっきの嘘もバレてる?


 いやバレてたらさっきつっこまれてたはず!


 だから大丈夫!


「き、綺麗だなっていいました」 

 

 二人の間の空気が凍りついたような気がする。

 

「……へえ。それでどうしたいと思った?保健室で“俺”に抱かれたいとでも思った?」


 振り返らないまま葉山様は聞く。


 その声は氷よりも冷たくて地雷を踏んでしまったとすぐにわかった。


 私のバカぁあああ!


 葉山様からこの間の向井様と似た危険な雰囲気をひしひしと感じる。


 早く、早く何かいわなきゃ!


「そ、そんな抱かれたいとかおこがましいといいますか!恐れ多いといいますか!と、とにかく!そのつもりは微塵もないので安心してください!」


 私ごときがそういう意味で葉山様に触れてもらえるなんてありえない!


 まさに月とスッポンだ!


「ぷっ!アンタってほんと失礼よね」


 くすくすと控えめな笑い声が聞こえた時、危険な雰囲気は消えていた。


 葉山様の言葉の意味はわからなかったけど、危険は去ったのでよしとしよう!


「あらついたわね」


 いいあっている内に保健室の前に来ていたみたい。


 扉を開けて中に入る。


 でも加東先生はいなかった。


「そのうち戻ってくるでしょ。アンタは濡れている服を脱いで脱水にかければ?」


 葉山様は保健室から出て行こうとする。


 あれ?保健室でさぼるんじゃなかったの?


「葉山様は今から授業に出るんですか?」


「トイレよ。トイレ。そんなことまで一々アンタにいわなきゃいけないの?」


 ジトっとまた半目で睨まれました。


 保健室にもトイレはあるけど私が近くにいるなら使う気になれないよね。


「失礼なことを聞きました。いってらっしゃいませ」


「それ今度拓哉にいってやったら?喜ぶわよ」


「……?わかりました」


 うざがられるの間違いだと思う。


 一応頷いて、葉山様を見送った。


 えっと濡れてるのはシャツと靴下とキャミソールとブラ。


 でもブラはさすがに外すのに抵抗ある。


 ええい!ままよ!

 一枚くらい増えても減っても変わらない!


 それなら気持ちいい方を選ぼう!

  

 濡れた服とタオルをを脱水にかけて、ジャケットとスカートとパンツプラス短パン姿になる。


 ついでに棚にあった綺麗なタオルを拝借した。


 う~。中がスースーして心許ない!


 しばらくして葉山様が帰ってきた。


 遅いなって思ったらジャージから制服に着替えてた。


 ちょっと残念。


 いやいや葉山様は制服姿もいいんだけどね!


「なんでシャツを脱水かけてジャケットを着てんのよ?」


「え?ああ。ジャケットとスカートは察水スプレーをかけているんで無事なんです」


「なるほどそういうことね……ってアンタその下は!?」


 おお!葉山様のノリツッコミ(?)初めて見た!


 意外とキレッキレだ。


「濡れたので何も着てませんよ?」


 何も着てないのは上だけど。


「アンタ馬鹿なの!?アタシが着てたやつだけど汗かいてないからこれでも着てなさい!」


 ずいっと押しつけるようにジャージを渡された。


 なんか最近すごい馬鹿呼ばわりされてる!?

 なんで!?


 葉山様の剣幕に押されてカーテンでベットで着替えた。

 

 そこで思ったことが一つ。


「葉山様。このタイミングで加東先生が帰ってきたら誤解されませんか?」


「……アンタねえ、そういうことはもっと早くいいなさいよ」


ひどく疲れたような声がカーテン越しに聞こえた。


不思議に思いながらカーテンを開けてわかった。


 床に葉山様がお腹を押さえて倒れていた。


「お前らがどこで何をしようが俺は何もいわない。ただな……たまにお前らのように勘違いする奴らがいるんだよなあ」


 やけにゆっくりとした動きで葉山様の側に立っていた加東先生は私との距離をつめる。


 「ギャルによる怒りの6段活用」の初めに作られたの最終段階。


『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』状態の加東先生が目の前で腕を組み仁王立ちする。


「ここは保健室だ!青臭いガキどもが盛ってんじゃねえ!ヤりたきゃ、どっちかの家でもラブホでも草むらにでも行きやがれ!」


 加東先生から二十枚の瓦でも割る勢いで頭にチョップされた。


 今までのファイル攻撃なんて比にならない痛みが頭から伝わる。


 葉山様、すみません。


 確かにいうのが遅すぎました……。


 誤解が解けたのはそれから一時間後でそれまでずっと説教をされた。


 さらに葉山様には迷惑料として放課後に書店でファッション誌を買わされた。


 それも一番高いやつ。


 すごく痛い出費だ。


 なんで雑誌で二千円するの!?


「これいらないからあげるわ」

 

 そういって渡されたのは付録の花柄ポーチ。


 正直使い道はない。


「ありがとうございます」


 だけどせっかくだから今日の記念にもらおう。


 葉山様から何かもらえるなんてもう二度とないかもしれないし。


「変な娘」


 葉山様はどこか呆れたようにいった。


Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?


パーヴェル=アウリオン「私よりいくつか年齢が下の小柄で黒髪、黒縁眼鏡の大人しい無表情で無口な少女だ」



Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?


パーヴェル=アウリオン「漫画やアニメなど好きなことを話す時には活き活きとしている。人付き合いいが苦手で誤解されることもあるようだが優しい娘だ。後輩としてそれなりに仲良くしてもらっているな」

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