これっていじめですか!?(一日目の昼)
バカ付き=高槻。
※途中で主人公のBL妄想がありますので、苦手な方は注意してください。
四時間目終了のチャイムが鳴った。
私は教科書とノートと筆記用具を鞄に詰め、教室を飛び出した。
いじめが始まった今は教室という閉鎖空間は地雷原よりも危険。
朝、教室に入った時、自分の机の上にはゴミの山。
ゴミをどかせば半分以上が根拠のない誹謗中傷が書かれていた。
一番笑えたのはビッチとか、援交してるの書きこみ。
『ヤってるのお前らだろ。マジブーメラン。さすがDQN。テラワロス』
友人の葉ちゃんならこういっていたと思う。
私ならこういう。
『BL好きな私が男に惚れるわけがない!』
私にとって男の人は愛でる対象であっても、恋する相手じゃない!
って、そこ!
だから年齢イコール彼氏いない歴なんだよ、とかいわない!
さらに机の中にまでゴミが詰められていた。
ほんとこの大量のゴミどっから持ってきてるの?
もしかして昨日、学校中のゴミを集めた?
はっ!?
だったらこんなシチュエーションがあったのかもしれない!
【いかつい男子二人が校舎裏にある夕日で赤く染まるゴミ捨て場でゴミを集めていた。
『なあもういじめとかつまんねえことやめようぜ』
茶髪の男がもう一人の男にうんざりした顔で話しかける。
『はあ?お前それマジでいってんのか?だったらお前だけやめれば?別に一人でやるし』
金髪の男は茶髪の男に背を向けて、すねたように唇を尖らせる。
『お前はバカだな』
『なん』
突然のバカ呼ばわりに金髪の男は怒りを顔を浮かべて振り返る。
だがその先の言葉は強引に合わさった唇の中に消えていった。
茶髪の男の予期せぬ行動に金髪の男は呆然とする。
『俺がお前にもっと楽しいコト教えてやるよ』
茶髪の男はにやりと笑い、もう一度キスをする。
その動きは飢えた獣のこどく金髪の男を貪り………】
いやいや落ち着け、私!
我ながらシュールすぎる妄想だよ!
走りながら辿り着いたのは避難場所。
もとい保健室。
扉に手をかけて勢いよく開け放つ。
「こんにちは!変態サディ……っいたあ!」
「ようバカ付き」
扉の近くに立っていた加東先生は私の頭に容赦なく分厚いファイルを落とした。
「可愛い生徒になんてことをいうんですか!ネタの提供ありがとうございます!」
ドS系イケメンの暴力と暴言のセットなんて豪華すぎる!
新しいネタに入れよう!
「……自分で可愛いとかいうなよ」
加東先生はそっと私から距離を取った。
え?なんでそんな態度をとるんですか?
気持ち悪いんですけど?
はっ!
もしかして……。
「先生、私は付き合う気はあり……ったい!なんでですか!?」
またファイルで叩かれました。
「変な勘違いするんじゃない」
ですよねー。
だって先生は。
「勘違いなんてしませんよ。先生はロリ巨乳が好きなんですもんね!」
先生の動きがメデューサに睨まれたみたいにぴたりと止まった。
でも私は気づかずに話し続ける。
「パソコンのディスクトップの女の子は私も超可愛いと思いますけど手を出したら犯罪ですよ!?」
茶色の髪をした私と同じ年くらいの制服姿の少女が画面越しにとても楽しそうに笑っていた。
その胸は私の倍はあると見た。
多分、FかG。
腰まであるツインテールに同じ色のちょっと吊りがちな目が可愛い。
こんな子が街を歩いていたら数秒で誘拐されそう。
「お前いつ俺のパソコンを触った?」
先生はびっくりするような速さで私の肩を掴む。
その顔は真剣そのものでなぜそんなに焦っているのかわからない。
「以前、先生が消し忘れて行ったときです。ちゃんと先生の許可を取りましたよ?上の空でしたけど」
「お前それ二年前の新学期に入る前の忙しい時期の話じゃねえか!?上の空だって気づいてんならそういう大事なことはいうなよ!わざとか!?」
「先生、口調が乱れてますよ?」
先生は焦ると口調が乱れるタイプなんだ。
いつも飄々としているのにちょっと面白い。
「誰のせいだ!誰の!だいたいあいつはすげえ童顔だけど俺と同じ歳だ!」
あ、なるほど。
聖職である教師の好みがロリ巨乳って外聞が悪い。
それで私の口封じをしようというわけですね。
でも人の好みは十人十色っていうし、人様に迷惑をかけなければどれだけマニアックでもいいと思う。
人にいうつもりなんて毛頭ない。
それよりも先生の好みがロリ巨乳っていうのが意外過ぎて、驚いている。
スレンダーが好きそうなのに。
「またまた~。さすがにそんな嘘には騙されませんよ?どう見ても中学生か高校生ですよ?」
「だからあいつはすげえ童顔なんだよ!あいつ自身、変なストーカーにつけられるって気にしてんだ!」
なんでそんなことまで知っているんだろう?
まさか……?
「それって先生」
「俺じゃねえよ!俺はあいつの高校からの友人だ!」
先生はものすごく必死な顔で否定した。
そんなにストーカー扱いが嫌なんだ。
いや普通の人なら嫌だね。
それで喜ぶのは本職の人くらい。
「先生がそこまでいわれるのなら信じます。けど好きっていうのは否定しないんですね?」
加東先生は私の言葉にがっくりと肩を落として俯いてしまった。
幽霊みたいな青白い顔でぶつぶついっているのが怖い。
あ、先生の片思いだったんだ。
しかも相手は全く気付いていないみたい。
「だ、大丈夫ですよ!先生は生徒の食べた弁当を美味しそうに食べたり、機嫌が悪い日は八つ当たりに暴言を吐いたり、暴力を振るうようなひどい人ですけど、今も連絡取り合っているんでしょう?」
「お前それ何のフォローにもなってねえぞ?」
「事実ですので!」
また叩かれました。解せぬ!
「まあばれたんならしかたないよな。お前も人にいうんじゃねえぞ」
「善処します!」
よっしゃあ先生の弱点ゲット!とか思ってませんよ?
ええ、決して!
「……期待しないでおく」
そのじと目は明らかに信用してませんよね!?
「いう人がいないのに疑うんですか!」
「俺が悪かった」
本当に申し訳なさそうな顔で謝らないでくださいよ!?
なんか泣きたくなってきた……。
その後は先生と一緒にお昼ご飯を食べて過ごした。
弁当の中に入っていた卵焼きとから揚げを盗られたから、先生が食べてたコンビニ弁当の漬物とサバの味噌煮を貰った。
私が意地汚いわけじゃない!
等価交換である!
Q.主人公(?)高槻憩の第一印象は?
加東薫「地味で大人しそうな生徒だと思ったな」
Q.主人公(?)高槻憩の現在の印象は?
加東薫「馬……面白い生徒だな。高槻は自分のことを普通だと思っているようだが、かなり常識からずれているぞ。後はそうだな……怪我したら我慢せずに保健室に来い。重傷になると治療がめんどくさくなる。別に用事がなくても来ていいが」




