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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
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たかが鬼ごっこに本気ですか!?(四日目)

 ラスボスを倒しても物語は終わらない。

 葉山様とファッションについて熱く語った次の日。

 

 なんと今朝も四分一様が笑顔で話しかけてくださった上にお菓子までいただいてしまった。

 

 もう幸せすぎて罰が当たりそうだ。


 ……などと思っていたからだろうか。

 

 昼休みに関元様からのメールを見て、卒倒しそうになった。


 ラスボスキター!?

 心の準備が出来てないんですけど!?


 一人心の中で叫ぶと少しだけど落ち着いた。


 大丈夫。まだ希望はあるはずよ。

 

 前回は保健室で見つかったから今回は別の教室に逃げばなんとかなるはず。


 保健室よりも近づく人のいない教室。 

 それは“図書室”である。


 この学校の生徒は本なんて読まない。


 今までに何度かここへ来たことはあったけど、誰かに会ったことはない。

 

 もし今日の鬼が探しに来たら本棚の奥か準備室に隠れれば何とかなる。


 扉に手をかけて横に引いた。


「俺を待たせるとはいい度胸だな」


 思わず扉を閉めた俺は悪くねえ!


 なぜあんたがそこにいる!? 


 落ち着け、私。

 恐怖が具現化されただけかもしれない。

 

 今度は慎重に慎重に扉を開けた。


「お前……何してんだ?」

 

 夢じゃなかったぁあああ!

 てか前にも同じようなことをいわれた気がする!?


 今日の鬼の“向井様”の声がいつかのようにどこか呆れていた。


 また扉を閉めて逃げようとしたがそれは他でもない向井様に阻まれた。


 扉を意外にもゴツゴツした男らしい向井様の手が掴んだ。


 私は両手で扉を閉めようとしているのに向井様は片手で押さえ、少しも動かせない。


 それどころかわずかずつ扉を開けられていく。


 これなんてホラゲ?


 まもなく完全に扉が開かれ、隔てる物がなくなったと思ったら、向井様は私へずいっと顔を寄せた。

 

 その距離は十センチもなく、お互いの吐く息も感じてしまいそうだ。

 

 なんで私!?

 そこは|可愛い受け(男)でしょ!?


「涼達は上手く手懐けたようだが俺はそうはいかねえぞ?」

 

 至近距離から心臓に悪い笑顔が向けられ、苦しいくらいに動機がした。


 今すぐおうちに帰りたい。


 城野様達を手懐けたつもりは一切ない。


 城野様はお互いの利害の一致。


 四分一様は買収(お菓子の交換)。


 葉山様は元々私に興味がなかった。


 あれ?

 冷静に考えると悲しくなってくるのはなんでだろう?


「……一時間やる。逃げるも隠れるも好きにしろ。時間が過ぎたら本気で捕まえてやる」  


 鬼ごっこの時間は二時間。

 向井様がほんとに約束を守ってくださるというのなら、残り半分の時間を逃げきれば私の勝ちとなる。


 提案の意図が読めない。

 絶対に捕まえるという自信?それとも余興?


 多分、両方だ。

 向井様は城野様よりも足が速く、体力もある。

 

 足が長いからすぐに追いつかれるだろう。


「わかりました」


 私は向井様に背を向けた。


 足が速い?体力がある?

 男女の差があるから当たり前だ。


 どんな意図があったって、チャンスをくれるならそれにすがるまで!

 

 私には人生(とBL)がかかっているんだからなりふりなんて構ってられない! 


 でも逃げられる範囲は限られている。


 どこに隠れたら見つからないんだろう? 

 教室?特別室?校舎の影?


 考えるのも無駄な気がする。


 向井様はすでに何かしらの手を打っているのかもしれない。


 一時的に逃げきれても隠れても捕まるのならいっそ“逃げ続ける”方法を探そう。


 考えろ、私。



 五十分後。

 全ての準備を終えた私は向井様の元へと戻って来た。


 距離は十分すぎるほどに開いた五十メートル。

 

「なんだ?まだ始まってもいねえのに諦めたのか?」


 向井様は悪い笑顔を浮かべる。

 

 きっと私を捕まえた後のことでも考えているんだろう。


「諦めていません」


「なら何か企んでるのか?止めとけ。無駄になるだけだぞ」

 

 向井様は嘲笑を浮かべられる。


 こんな時じゃなかったらかっこいいと萌えていたのに残念だ。


「やってみないとわかりませんよ」


「ふん。さっきのことが嘘のように強気だな。その余裕はいつまで持つだろうな」


 向井様が動く前に私は動いた。 




 |下校時間を知らせるチャイム(長きに渡った戦いの終わりを告げる鐘)が鳴り響いた。


 ギリギリだったけど私の勝ちだ。


 精神的にも肉体的疲労から私はその場に座りこんだ。


「テメェ……俺を嵌めやがったな」


 向井様の殺気がこめられた視線が私を貫く。


 条件反射で全身が震えてしまう。


 でも約束は守ってくれるらしく、手は出されない。


 ライオンは兎を狩る時にも全力を出すらしい。


 なら兎はただ黙って狩られるしかない?

 

 いや違う。

 狩られたくない兎は死力を尽くす。


 私は向井様に与えられた一時間で校内にRPGのようなトラップをしかけたのだ。


 そしてトラップがある場所へ誘導しながら逃げ続け、放課後を迎えた。


 全ては“計画通り”。


 台詞と共に某主人公の悪どい笑顔が頭に浮かぶ。


 あの時の主人公はこんなにも気持ちよかったんだ。


 正義のヒーローが悪役を倒した時のように清々しい気持ち。


 あれ?逆だっけ?


 ああ、今日からはゆっくり眠れそう。

 

 それだけじゃなくて、今日からしっかりとBL妄想できる!


これで心置きなく『不良と風紀委員長の秘蜜の淫らな午後』も楽しめる。


 藤堂様 ✕ 風紀員長は公式カプだけど他のキャラとのストーリーもいい!


 クラスメイトBみたいなモブ受けとかね!


私は藤堂様のドSっぷりがたまらない。

鬼畜?藤堂様専用の褒め言葉だ!


 私、頑張った!

 鼻歌でも歌いたい気分!


 そんな私に向井様はとんでもない爆弾を落とされました。


「今日はこれで終わりにしてやる。だか忘れるなよ。鬼ごっこは“今日で終わりじゃねえ”んだぞ」


 理解するのに数秒かかった。


 固まる私に気をよくした向井様は人を不幸に陥れる悪魔の笑みを浮かべて続ける。


「明日が楽しみだな」


 呆然とした私を置き去りにして、向井様はその場から立ち去った。


 なんだって!?

 向井様(ラスボス)倒したのに終わりじゃないだと……!?


 隠しボスはいったい誰なんだ……!?


 ……Orz。

 

 Orz = 落ちこむ姿です(笑)


 ※一部、書き換えました。

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