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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第一章  高校2年生3月
12/111

たかが鬼ごっこに本気ですか!?(三日日)

 主人公はセンス“は”ある。


 ※途中で主人公のBL妄想がありますので、苦手な方は注意してください。

 今まで私は放課後のチャイムがなるまで教室にいた。


 でもよく考えれば別に最初は教室にいなくてもいいんじゃない?


 校内にさえいればスタートはどこでもいいことに二日が終わってようやく気づいた。


 遅い、遅すぎる。

 最初からそうしていれば城野様や四分一様に放課後が始まってすぐに見つかるということはなかったのに……。


 寝る前に気づき、私は深く落ちこんだ。


 でも寝て起きて学校に行ったら、四分一様が笑顔で話しかけてくださった上に、『元気出して』とお菓子までもらってしまった。


 四分一様のおかげで勇気リンリン、元気ハツラツだ!


 せっかくもらったお菓子はもったいなさ過ぎて食べるに食べられない!


 四分一様、ラブ(親愛的な意味で)! 

 あの人、マジ天使!


 ほんとどっかの大魔王とは大違い!

 え?大魔王が誰かって?


 口が裂けてもいえません。


 また昼休みに関元様からメールが届いた。


 今日の鬼は数日に一回くらいしか学校に来ない。 一昨日学校でお姿を見たから、今日は来ないはず……。


 でも念のために私は六時間目を体調不良だと嘘を吐いて途中で抜け出し、避難場所こと保健室に向かってる。


 いくら加東先生が意地悪だからって私を向井様達に引き渡したりはしないでしょ!


 いやそうであってほしい!

 私は先生を信じるよ! 


 保健室の扉を勢いよく開けて叫んだ。


「先生!下校時間までかくまって欲しいんですけどー?」


 でも先生の姿はどこにもなかった。


「先生ー?変態サディスト先生ー?お留守ですかー?」


 先生の嫌いな愛称を呼んでもファイル攻撃はなかった。


 どうやら本当にいないらしい。

 職員会議とかかな?


 暇つぶしに話し相手になってもらうつもりだったからちょっと残念。


 つまんなあー。なにしよ。


 久しぶりの誰もいない静かな場所で、つい欠伸が漏れる。


 最近眠れてないからすんごい眠い。

 せっかくベッドがあるんだし、少しくらい寝てもいいよね?


 無断だけと先生は優しいからなんだかんだで許してくれるし。


 ベットの方に向かって行き、一番手前のベッドのカーテンを引こうと手を伸ばした時、勝手にカーテンが動いた。


 え?幽霊!?霊感ゼロなのに!?


「ひっ!?」


 驚いて足がもつれてその場に尻餅をつく。


 『南無阿弥陀仏』と『南無妙法蓮華経』を唱えて、胸の前で十字を切った。


 いろいろ間違ってる気がするけど、こういう時は勢いが大切!

 悪霊退散!


「さっきからうっさいわね。アンタここをどこだと思ってるのよ」


 ベットから現れたのは鬼の“葉山蓮(はやまれん)様”だった。


 細身の体はもやし系男子のような感じではなく、猫のようなしなやかさで、無駄なものが一切ないって感じ!


 制服のシャツのボタンを三つも開けていて、そこから見える首筋、鎖骨、胸筋の黄金の軌跡(ゴールデンライン)がたまらなくエロくて最高です!


 それだけじゃなくて、寝起きなのか気だるげな濡れた双眸に唇の右下にある艶ボクロがさらに引き立てて、性別とかどうでも良くなるほど色気があリます!


 葉山様、フェロモンただ漏れですやん!


 ノンケでも襲いたくなるってやつですね!

 葉山様なら誘い受けも誘い攻めもいいと思います!


 ……いや興奮してないで落ち着け、私。


 今は鬼ごっこの最中だ。

 名残惜しいけど葉山様の姿は網膜に焼きつけて、後で妄想しよう。


 葉山様はまだ私が高槻憩だってことに気づいてない。

 このまま気づかれる前に退室しよう。


 じりじりと這うように葉山様から距離をとる。


「あら?もしかしてあんたが高槻憩?話に聞いていた通り地味な女ねえ。あたしの方が美人なんじゃない?」


 ハイ、アウトー!

 まだ立ち上がってすらないのに……。


「お姉様のおっしゃる通りです」


「お姉様っていうんじゃねえよ。殺されたいのか?」


 どすの利いた男声でとんでもないことをいわれた。


 さっきまでの高い裏声はどこへやら。

 お腹に響きそうな低い声と殺意に満ちた目が正面から向けられる。


「ひっ!?」


 あまりに怖くて泣きそうだ。

 でも泣いたって状況は変わらない。

 むしろ悪化するのは経験でわかってます。 


「まあいいわ。初めて会ったわけだし、今回は特別に許してあげるわ。でも次いったらぶっ殺すわよ?」


 少しの理不尽さを感じながらも私は頷いた。


 もう二度と葉山様をお姉様と呼ぶまい。


「全くリョウにマサキもこんなちんちくりん一人捕まえられないなんて使えないわねえ」


 おね……いや葉山お兄様は私を見下した。


 確かにモデルのような向井様や葉山お兄さん達に比べたら私なんて中学生みたいなものだ。


「ちんちくりん……」


 これでも胸は平均なんですけどね。


 あれか、色気がないからか。

 なんて自分で考えて悲しくなった。


 自分を磨くよりも好きなキャラ達を愛でる方が楽しいんだからしょうがない。


「なに落ちこんでるのよ。うっとおしいわね」


「……すみません」


 私は小さな声で謝る。


 辛辣な人だと思う。

 自分に正直な人だともいえるけど、もっとこうオブラートに包んでほしい。


「素材は悪くないんだからもう少し手入れすればいいんじゃない?」


「へ?」


 驚いて俯いていた顔を上げる。

 私の声を勘違いした葉山様が不機嫌そうな顔で続けた。


「だーかーら目元とか口元だけとか部分だけでもいいからメイクしてみたり、服装を変えてみれば?だいたいちゃんとお肌の手入れしてるの?」


「そんなの私には似合いませんよ」


「ろくにやってもないくせになにいってんのよ」


 図星です。ごめんなさい。


「あんたにならそうねえ……こういうのはどうかしら?」


 葉山様は枕元に置いていた雑誌を手に取ると、見開きのページの服を示した。


 保健室にそういう雑誌は置いてないから多分葉山様の私物。


 うわっ!?指長っ!?細っ!?形綺麗!?


「……で。ちょっと話聞いてるの?」


 葉山様の手に見惚れていて聞いてませんでした。

 テヘペロっ!


 結果、容赦なくデコピンをされました。


 地味に痛い。


 葉山様が指していたのはパステルカラーで大人しいけど上品な服。


 さすが葉山様。チョイスがおしゃれです。


「ちょっとおしゃれすぎませんか?私はこのくらいの方が好きです」


 背景と同化するような服の方が保護色みたいで着ていて落ち着く。


「なにそれ!地味すぎるわ!せめてこれくらい着飾りなさいよ!」


「いえ服がもったいないですよ」


 こういう服は似合う人が着てこそ輝く。

 私のような地味子には豚に真珠もいいところ。


「あんた……普段どんな服を着てんのよ」


 そんなドン引きしなくてもいいじゃないですか。


「ジーパンとTシャツとかです」


 季節の変わり目なんかでワゴンセールしているあの安い物。


 千円でシャツを二枚も買えるだなんてお得だよね!


「……あんたって本当に女捨ててるわね。いっそ清々しいわ」


 そこまでいうほど酷いですか!?


「酷いわよ。小学生以下ね」


 確かに最近の小学生はおしゃれだけども!


「私のことはどうだっていいんです!大事なのはその人に服が合っているかってことなんです!例えばこの人!」


 私はふるふわパーマをかけた草食系男子を指差す。


「ピッタリと体の線を強調するような服を着てますけど、この人ならカーディガンにシャツみたいなゆるい服が似合います!」


 葉山様ははっとした顔で草食系男子を凝視する。

 

 え?もしかしてこういう顔が好みなんですか?


 ハッ!?だったら葉山様は攻め!?

 攻めなのですね!


 葉山様 ✕ 草食系男子ですね!

 私、わかります!


「確かにあんたのいう通りね。こういうタイプにはこの服は似合わないわ」


「そうでしょう!?そうでしょう!?」


「こっちの男はどう思う?」


 葉山様は次のページの肉食系男子を指差した。

 

 肉食系男子も好きなんですか?


「え?この人ですか?この人は……」


 そんな感じで話が続き、気がつくと加東先生が帰ってくるまで盛り上がっていた。


「お前ら保健室で何してんだ?」


 先生は不思議そうな顔をしていた。

 珍しい組み合わせだからと思う。


「先生は白衣にスーツに眼鏡ですね」


「そうねえ。あえて変えるなら白衣をコートにするのはどうかしら?例えばグレーのダブルボタンのトレンチコートとか?」


「いいですね!先生がかっこよく見え……ったい!」


 先生にファイルで頭を叩かれた。

 ひどい。人間の(略)。


「俺はいつでもかっこいいんだよ。お前ら下校時間はとっくに過ぎてるぞ。面倒を起こす前にさっさと帰れ」 


 先生は心配しているのか、面倒を起こされたくないのかよくわからないことをいって、私と葉山様を追い出した。


 多分、どっちも本音なんだと思う。


 まあ時間も過ぎたし、全速力で帰って『不良と風紀委員長の秘蜜の淫らな午後』を見よっと。


 エンディングも好きだけどオープニングがいいんだよね〜♪


「ねえ」


 葉山様に呼び止められて振り返る。 


 何かしたかな?

 あ!?馴れ馴れしくしすぎた!?

 すみません!もう二度とお話することはないと思うのでお許しください!


「あんた、センスは悪くないわよ」


「へっ?」


 呆然とする私を置いて、葉山様はいなくなった。

 

 その後、葉山様の言葉が耳に残って離れず、家に帰って『不良と風紀委員長の秘蜜の淫らな午後』を見ても、内容が頭に入らなかった。

 

 主人公は自分を輝かせるよりも人を輝かせる方が好きです。

 

 久々に主人公が妄想しました(笑)

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