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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校イベントといえば文化祭ですか!?その10

 変態がいます。


 変態が苦手な方はご注意ください。 

「なにはともあれ。こうして無事に颯太と再会出来てよかったよ」


「うん!僕がお兄ちゃん達と会えたのは憩お姉ちゃんのおかげだよ」


「へえ、そうだったのか。えっと……憩ちゃん?颯太を助けてくれてありがとうな」


「い、いえ!?お礼なんてとんでもないです!ただの大きなお世話っていうか……むしろ!こんなに賢くて素直なイイ子と一緒にいられてご褒美でした!颯大くん、ありがとう!」

 

 実際、樋口くんは普通の子よりもずっと賢いから、一人でも比良吉様達と再会出来たと思う。


 ただたまたま少し困っているところに私がいたから頼って、ついでに行く先も同じだったから付き合ってくれたとてもいい子だ。


 そもそもはぐれた原因に心当たりがありすぎて、ちょっと罪悪感があったっていうのもあるし。


 それなのにお礼をいわれるなんてとんでもない。

 私がやったことは余計なおせっかいでしかないんだから。


「ふふ。憩ちゃんはいい子なんだね。リョーヘイはどうしてこんないい子を泣かせてたのかな?」


 私にいい子要素は何一つないですよ。

 むしろどうしようもなくダメな部類の人間の自覚があります。


 そんなことより!?

 今!?new様にお声をかけられた!?


 フォール様しか眼中に(精神的にも物理的にも)ないから、身内と認めた存在以外には必要事項とフォール様への愛しか喋らないと有名なのに!?

 

 いや勘違いするな、私!

 今のはただの世間話で私へ向けられたものじゃないから!


 何気にスルーしてたけど、比良吉様とフォール様の本名は“リョーヘイ”と“アキ”っていうんですね!

 

 あれ?比良吉様とフォール様・new様コンビってなぜに本名を呼ぶほど仲良しなんですか?


 樋口くん経由の繋がり?

 それともご近所さんとか?


「前に一度、あの時期に本屋で会ってね。そこで憩ちゃんに助けてもらったんだ。忘れられてるって思ってたんだけど、今も僕のファンでまた会えた泣くほど嬉しかったみたいなんだ」


 比良吉様はやや早口でそういった。


 だって!日本じゃ知らない人はいないといわれてる比良吉様に二度も!二度も!お会いできたんですよ!?

 それも顔まで覚えられていたら誰だって号泣しちゃいますって!


 ん?比良吉様を助けた覚えは何一つないですよ?


「なんだよ、そういうことか。俺の方からももう一回礼をいうぜ。憩ちゃん、ありがとな。おかげでリョーヘイは自由になれた」


 えぇえええ!?いや!?だから!?私は何もしてませんよ!?

 比良吉様の良さをご本人に語り、図々しくもサイン本をもらっただけですから!


「戸惑うのはわかってるんだけど詳しいことはいえないんだ。でも憩ちゃんのおかげでリョーヘイだけじゃなくて颯太も救われた。だから気持ちだけでも受け取ってくれないかな?」


 理由もわからずに気持ちだけ受け取れって、そんなこといわれても困ります。


「そういえば自己紹介してなかったね」


「はあ!?まだ自己紹介してねえのかよ!?なのに何で俺達のこと知ってんの?」


「颯太から聞いたってことはなさそうだね。やっぱりこの程度の変装じゃアキの魅力は隠せないよ」


 フォール様だけじゃなくて、new様の魅力も黒髪ウィッグとカラコン程度じゃ隠せてないですよ!?


「僕の本名は樋口良平りょうへい。親しい人からはリョーヘイって呼ばれてるよ。職業は知ってると思うけど小説家で作詞家で比良吉不二介と“シュガー”という名前で活動中だよ」


 え?は?うぇえええ!?

 比良吉様ってシュガー様だったの!?

 

 あー!だから皆さん仲良しなんですね!?


「リョーヘイは堅苦しいな。俺の名前は黒野原千秋(くろのはらちあき)だ。アキって呼んでくれよ。あとはそうだな……憩って呼んでもいいか?」


 本名をそれもあだ名呼びなんて恐れ多すぎますよ!?


 私のことは名前でも下僕でも眼鏡でもなんでもいいです!

 呼んでくださるだけで光栄ですから!


「僕の名前は多福新(たふくしん)だよ。シンって呼んで。アキの恋人で婚約者だよ。あと……」


 あばば!?三人の本名とか極秘中の極秘の情報を得てしまった!?

 他のファンに知られたら冗談抜きで殺されまっせ!?


 こうして同じ空間にいるだけで本来なら嫉妬で呪殺されるレベルだし!


「アキと同棲してて二十四時間ほぼほぼ同じ空気を吸って、同じ食事を摂って、一緒に寝る、相思相愛!イチャラブカップル!一秒だって離れたくないし、アキの物なら髪の毛から足の爪まで愛せ……ふぐぅ!?」


 アキ様がシン様の脇腹に強烈なエルボーを叩きこんだ。


 急所への一撃は吸血鬼にも有効なようで、新様は脇腹を押さえてしゃがみこんだ。


「気持ちわりぃこといってんじゃねえよ、この変態が!」


 ……さすがにリアルでいわれると気持ち悪かったです。


「それだけアキを愛してるってことだよ!その心底蔑むような目も素敵だよ!アキに見られているだけで背筋がゾクゾクしてすごく興奮する!」


 シン様は頬を赤くして潤んだ瞳でアキ様を見上げる。  


 場面だけ見たら恋愛ゲーのスチルなのに、台詞が全て台無しにしてますよ!?


 ……これが意識高い系の変態ですか。


 天は二物を与えないっていうのは本当だったんだ。


 シン様の容姿や美声、身体能力の高さとかの美点が、変態性で全てゼロに……いや秒単位でマイナス更新してるよ。

 

「滅べ、変態(シン)

 

 今日もシュガー様は容赦ないですね!?


 その凍りついた視線と声音を動画アップしたらドМホイホイですよ!?


 すごい量が釣れると思います!


 いつものやり取りに昂っていた気持ちが落ち着いた。


 ファンの皆様に殺されるのは怖いけど、せっかく教えていただいた好意を無下にする方が失礼だよね。


 今後、御三方を呼ぶことはそうそうないと思う。

 けれど仮に機会があれば場所を選んで呼ばせていただこう。


「シン、大丈夫?痛くない?」


 颯太くんは心配そうにシン様の側にしゃがみこんで、軽く肩をさする。


 颯太くん、天使か!?いや天使だ!どんな天使よりも慈愛に満ちた天使だよ!


 こんな変態に優しい言葉をかけるなんていい子過ぎるよ!


「憩ちゃん、僕もその意見に同感だよ」


「ああ、俺も。颯太の優しさがすごすぎる。こいつはトラックに跳ねられても死なないし、俺の攻撃くらいなんてことねえよ」


「二人して酷いよ!?そこまでいわなくてもいいんじゃない!?僕だって痛覚はあるんだから痛みは感じてるよ!ただアキから与えられるものはなんでも受け入れたいだけだよ!」


 レベルがカンストしてる変態すごいです!


「憩ちゃん、さっきから口に出てるよ!僕達のファンなんだよね!?なのに何で辛辣なの!?」


「え?あっ!失礼しました。確かに御三方のファンですが、シン様に限っては人間性よりアキ様ラブな設定に萌えさせてもらってましたから尊敬とかいうのはないです」


 冗談半分、本音半分でいってみれば。


「設定とかじゃないよ!?本気でアキが好きで!大好きで!愛してる!」


 目にも止まらぬ早さで距離を詰められ、両肩を掴まれた。


 シン様、力加減してください!

 強すぎて骨砕けるどころか、もげますよ!?


「冗談!冗談に決まってるじゃないですか!あんな重すぎる愛、本物じゃなかったらなんなんですか!」


 思いのまま叫べばシン様は『わかればよろしい』と、手を離して素敵な笑顔を見せてくださいました。


 ……シン様をからかう時は命がけっていう噂はほんとなんですね。


「シン、ツッコむとこそこでいいの?」


 ぼそっとリョーヘイ様が呟く。


 でもアキ様ラブなシン様には一切聞こえてないみたいですよ。

 

 あ、また突撃して反撃くらってます。


 なんかシン様は飼い主が好きすぎる犬で、アキ様は犬に振り回される飼い主みたいですね。


 うん。ぴったりすぎて笑えない。

  

 新はあれが素の態度です(笑)。

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