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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校イベントといえば文化祭ですか!?その9

 ※憩が暴走しています。

 それはお化け屋敷を通りすぎて、目的地への道のりをたわいない話をしながら、歩いていた時だった。

 

「颯大!」


 廊下の先から、その人は人混みをかき分けながらこちらに向かって走ってくる。


「お兄ちゃん!」


 名前を呼ばれた樋口くんも私の手を振り払い、その人へと向かって行く。


 そしてすぐにたどり着いた二人は、どちらともなくお互いを抱きしめた。


 樋口くんの表情は私といた時とは違い、自然で柔らかいもので、その人の腕の中が何よりも安全な場所だといわんばかりだ。


 だから私はいわれなくても、その人が樋口くんのなんでも知ってるすごく優しい自慢のお兄さんだとわかった。

 

 仲のよい兄弟が迷子になった後、無事に再会した心暖まる場面。


 私は衝撃で息を忘れていた。


 樋口くんのお兄さんの容姿がかっこいいから“程度”の理由じゃない。


「あのね、お兄ちゃん。憩お姉ちゃんは僕が困っていたら助けてくれて、ここまで案内してくれたんだ。すごく優しい人だよね」


 樋口くんがお兄さんから少し離れ、私を紹介してくれた。


 だけど私は挨拶どころじゃなくて、無意識に握りしめていた襟元に力が入る。


 なんで?どうしてあなた様がここにいらっしゃるんですか!?


 胸がつまり、疑問は声にならない。


「あなたは……っ!?“また”助けられましたね。ありがとうございます」


 “比良吉不二介“様は驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んでくださった。


 もう二度と会うことはないと思っていた。


 なんの特徴のない。

 平凡で数多くいるファンの一人。


 しかも三ヶ月前に会っただけの一般人の私のことを覚えているなんて。


 そんな傲慢なこと夢にも思わなかった。


 あぁ。この方は小説家としてだけではなく、人間的にも素晴らしい。


 いやもはや人間を超越してる。

 比良吉様はまさに神だ。


「憩お姉ちゃん、どうして泣いてるの?」


 樋口くんが心配そうに私を見上げる。

 

 比良吉様も同じような表情をされていた。


 頬に触れて、泣いていることに気づいた。

 

 あれ?私、いつの間に泣いてたんだろう?


「だ、大丈夫です。これは樋口くんのお兄さんが比良吉様だって知らなくて、会えて嬉しいといいますか、光栄で、感動しちゃっただけですから」

 

 服の袖で乱暴に涙をぬぐう。


 嬉し泣きってほんとにあるんだね。

 二人に心配かけたくないのに、次から次に涙が出てきて止まらない。


 向井様にはきっとあきれられると思う。


 でも葉ちゃんなら絶対私と同じようになってる。

 

 幸いにもここは人通りの少ない場所。


 だけど、比良吉様にいつまでも私なんかのぐじゃぐじゃの泣き顔を見られたくない。


 涙ってどうやって止めるんだっけ!?


「おー!颯大、見つかったか!」


 背後から近づいてくる聞き覚えのある声にピタリと涙が止まった。


 成長前の少年のようなこの声は!?


 ……いやいや、落ち着け私。

 まさかこんなところにいらっしゃるはずがない。


 あ、そっか。

 比良吉様に会った衝撃で幻聴が聞こえているんだね。


「って!?連絡ねえから来てみればなんで女の子泣かしてんだよ!?」


 あれ?やけにはっきりとした幻聴だなぁ。


「リョーヘイが女の子を泣かすなんて珍しいね」


 ん?後から聞こえた爽やかなこの声はまさか……まさかの!?


 いやいや、声のそっくりさんはけっこういるし。


 声真似動画とかよく見てるし。


 でもさすがにあの二人のレベルのイケメン声真似主はいないよね。


 さてさてこのそっくりさんはどんな顔をされてるのかな?


 後から思えば、この時の私は比良吉様との出会いにかなり混乱していたんだと思う。


 大して期待せずに振り替えって、今度は心臓が止まった。


 軽い変装ごときでは二人のイケメンっぷりは障子に写る影よりも、隠せていなかった。


 振り替えた先にいたのは、今や世界的人気歌手のフォール様とnew様が立っておられた。


 葉ちゃん、神はここにいたよ。


「いや僕も泣かせるつもりはなかったんだけど……えっと憩さんっていったかな?大丈夫かな?」


 あ、比良吉様がなにかおっしゃってる。

 答えなきゃ。


「今……死んでもいいです」


「突然なにいい出してんだ、この娘!?」


 おぉ!フォール様はツッコミもできたんですね!?


 いつもの天然で可愛らしい感じとのギャップがいいです!


「なんかよくわからないけど、アキがいつでも魅力的なのは同感だよ」


「俺は天然じゃねえよ!あと可愛いっていうな!」


「アキ、ツッコむとこそこなの?」


 ああ!このやり取りはまるでフォール様とnew様とシュガー様の会話みたい!


「憩お姉ちゃん、死なないで。お姉ちゃんが死んだら僕には悲しいよ……」


 いつも間にか側にいた樋口くんが私の手をとって、潤んだ瞳で見上げる。


 最大の萌え(トドメ)キタ!


 あまりに立て続けの萌えにショック死してしまいそう!


 おかげで心臓が今までにないくらい仕事して、すさまじい勢いで体温が上昇してるよ!?


 これ以上の幸せとかないから、このまま楽園に身をゆだねてもいいかな……。

 

 あぁ、ここが楽園やったんや……。


 憩が後半に考えていることは口からただ漏れです(笑)。

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