高校イベントといえば文化祭ですか!?その8
本作がついにブックマーク100件を越えました!
いつも見てくださっている方、本当にありがとうございます!
これからものんびりと更新して行きますので、にぎやかな高槻達をよろしくお願いいたします!
戸惑うような顔をする女子高生と対照的にすがるような視線を向ける小学生。
え?もしかして私が忘れているだけで、どこかで会ったことがあるパターン?
少年は私の手を取って、にっこりと笑った。
よく見ると、新芽みたいな黄緑色の髪(地毛?)に、整った顔立ち、なにより賢そうな目をした将来がすごく楽しみな美少年だ。
「やっと見つけた!ねえ早くお兄ちゃん達を探しに行こう!きっとぼくらを探してるはずだよ」
え?お兄ちゃん達って向井様達のこと?
聞いてないけど誰かが一緒に遊ぶって約束してたのかな?
「う、うん。そうだね?」
よくわからなけど向井様達と会えばわかるかな?
「お姉さん達ありがとうございました。ほらっ!お姉ちゃん、早く行こう?」
少年は女子高生にぺこりと頭を下げると、私の手を引いて歩き出す。
少し歩いて廊下の角を曲がり、女子高生達の姿が見えなくなってから少年は立ち止まり、きょろきょろと周りを見渡してから手を離した。
そしてバッと勢いよく頭を下げる。
「お姉さん、巻きこんでごめんなさい」
ええ?巻きこんだってなんのこと?
そんな風に謝らなくちゃいけないようなことされたっけ?
「えっと、謝ってくれてありがとう。でも君が何に対して謝ってくれているのかよくわからないから説明してくれますか?」
少し屈んで少年と目を合せるように下から顔を覗きこんだ。
少年はおずおずと顔をあげて話してくれた。
話を要約すると……
『少年のお兄ちゃん達と一緒に近所の高校生が通う高校の文武祭に来たら、急に女の子達が騒がしくなってどこかへと走り出した。
その時にお兄ちゃん達とはぐれて一人で探していたら、さっきの人達に絡まれて困っていた。
そこでたまたま通りすがりの私を見つけて知り合いのふりをしてもらった』
……ということらしい。
うん。この少年にすっごく同情するよ!
あの女の子達の勢い(特に小学二、三年生くらいのこの少年)は勝てないだろう。
お兄さん達とはぐれて怖かっただろうし、寂しかっただろう。
私だったら泣きじゃくってるよ。
前向きにお兄さん達を探すこの子は心強いな。
「そうだったんですね。なら君のお兄さん達はすごく心配しているでしょうね」
少年は驚いたみたいな顔をして、すぐに暗いものへ変化させた。
背後に『ずーん』って効果音が見えそうなくらいだ。
しまった!?落ちこませるつもりはなかったのに……。
ええっと……迷子になったらどうしたらいいんだっけ?
「あ!はぐれた時の待ち合わせ場所とか決めてました?」
「ロボット研究所の展示室です。でも僕一人でもいけます!」
少年は慌てて付け加えた。
意地を張りたいお年頃なのか。
それとも初対面の人を信用できないからか、きっぱりと断られる。
でも君みたいな子が一人でいると、またさっきみたいに絡まれると思うんだよね……。
次もいい人ならいいけど、変態だったら誘拐とかされそう。
「それならちょうどよかったです。私もそこにいくところだったんですよ。せっかくだから一緒にいきませんか?」
「えっ、でも、本当に僕一人でも大丈夫です」
「一人だとまた声をかけられますよ?それとも私のことが少しの間でも一緒にいたくないくらい嫌いですか?」
「お姉さんのこと嫌いじゃないです。でも迷惑でしょ?」
少年はおずおずと私の様子を伺う。
「迷惑だなんて思ってたらそんなこといいません。じゃあ少しだけ一緒に行きましょう」
立ち上がって手を伸ばす。
「わかりました。お姉さん、ありがとうございます」
今度は拒否されずに手をとってくれた。
「いいえ。あ、私に対して敬語は使わなくていいですよ。いつも通り話してください」
「僕だけ普通に話すのも嫌だからお姉さんもいつもみたいに話してくれる?」
“首をかしげる+上目遣い”の組み合わせは最強だと今、理解しました。
イケメンもいいけど、ショタもいいよね!
この子の場合、犯罪者ホイホイになっちゃうけど!
「うん。わかった。そういえばまだ自己紹介してなかったね。私の名前は高槻憩。憩って呼んでね?」
内心の高ぶりを心の奥へ厳重に抑えて、普通の笑顔を見せる。
「僕の名前は樋口颯大だよ。憩お姉ちゃん」
くっそかわえぇええええ!?
なにこの子。私を(萌え)殺す気ですか?
もう鼻血どころじゃなくて、吐血しそうなレベルのかわいさだよ!?
恥ずかしそうに目をそらしつつ、でも嬉しそうにほんのり頬を赤くして、笑うとかもう……犯罪レベルで可愛い。
この子を家の子にしたい(真顔)。
「憩お姉ちゃん?」
樋口くんは不思議そうに私を見上げる。
ハッ!?
今なんてことを考えたんだろう!?
誘拐、ダメ!絶対!
煩悩を振り払って目的地へと歩きだす。
あ、もちろん葉ちゃんに連絡とってからだよ。
世間話をしながら、しばらく歩いていると小さな泣き声が聞こえてきた。
声のする方を見ると学ランの少年二人とセーラー服の少女があのお化け屋敷の前にいた。
あー、あれはトラウマレベルの怖さだよね。
「……ひっく、うえっ……こ、この学校怖いよぉ。吸血鬼もいるし、もう帰りたい」
泣いていたのは少女ではなく、黙っていれば物語の王子様のような金髪碧眼の少年だった。
慰めてあげたくなるような、さらに苛めたくなるような、どちらにしても危うい雰囲気だ。
「こんな作り物で一々恐がって泣くなんてお兄ちゃんは相変わらずカッコ悪い!私は全然怖くなかったのに!」
少女は癖一つない腰まで伸びたストレートの黒髪で少年と同じ碧眼だ。
顔立ちが似てるのに、性格は真逆みたい。
腰に手を当て仁王立ちで、兄と呼んだ少年を睨みつけている。
「おい。仁奈。仁志はこういうものが苦手なんだからあまりいってやるな」
かすかに赤みかがった黒髪の少年は赤茶色の目を不機嫌に細めて苦い笑みをこぼす。
この人は兄妹の友達なのかな?
「優希はお兄ちゃんに甘過ぎる!だからいつまでたってもお兄ちゃんが泣き虫で弱虫なんだよ!」
仁奈と呼ばれた少女は怒りの矛先を優希くんへと移す。
仁志くんはピタリと泣き止み、がっくりとうなだれる。
妹にこんなはっきりといわれたら、恐怖よりもずっと情けなくて落ちこむよね。
「仁奈!兄に向かってそのいいかたはないだろ!」
優希くんは雷のように声を荒らげる。
硬派な見た目通り、友情に篤いタイプなのかな?
仁志は期待に顔をあげて目を輝かせた。
ヤバい!このシチュエーション!?
友情から始まる恋!?
「いくら本当のこととはいえはっきりといわれたら仁志は傷つくぞ!」
違った!?止めを刺しただけだったよ!?
優希くんは天然なの!?
一昔前の硬派ヤンキーみたいな格好なのに!?
なにこの子達おいしいよ!
気づいたら立ち止まっていたみたいだ。
歩き出そうと思って振り替えると、樋口くんはさっきの三人組を見ている。
その顔はどことなく寂しげで、繋ぐ手に力が入った。
樋口くんはキョトンとした顔で私を見上げる。
「樋口くんのお兄さんはどんな人ですか?」
「僕のお兄ちゃんはなんでも知っててすごく優しいんだよ!あと有名な小説家で日本だけじゃなくて世界でも人気があって、書いた小説がたくさん映画化とかされてるんだ!」
樋口くんはキラキラと目を輝かせて、自慢のお兄さんがどんな人物であるか教えてくれる。
こんな美少年で、素直に尊敬してくれる弟とか2次元にしかいないと思ってたけど、現在にもいたんだね。
さらっといってるけど、何本も映画化されるほど人気のある若手小説ってあんまりいない。
それも世界的な知名度がある人っていえば、我らが神“比良吉不二介様”しか思い浮かばない。
でも、樋口くんと比良吉不二介様は兄弟というより、親子っていった方がいいくらいの年齢差だ。
だから樋口くんがいってる人は私が知らない人なんだろうなあ。
失礼だけど、樋口くんがこんな風に尊敬する人を見てみたい。
きっと容姿も性格もカッコよすぎて、息を忘れるくらいのイケメンだろう。