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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校といえば文化祭?

 正義視点です。

 憩が葉に文化祭に来るように誘われ、蓮の提案で俺達も行くことになった。


 今まで一度も清駿高校の文化祭に行ったことがない。


 俺達の評判は聞かなくても悪いってことは知ってる。


 だからハナに迷惑がかかったら嫌で、行こうと思ったことがなかった。


 でも行きたいなって思わなかったわけじゃない。


 中学で俺達はまともに文化祭に参加できなかった。

 

 他校でもいいから文化祭の雰囲気を味わいたい。


 葉は俺達のことを知っているのに、快く一緒に来てもいいといってくれた。


 出来ればハナと一緒に回りたかったけど、当日はクラスの出し物で忙しいらしい。

 それなら仕方ない。


 清駿高校に行くと予想通り、校門で先生に止められた。


 でもハナの友達『奈緒』の彼氏『陸』が助けてくれた。


 ちょっと口が悪いけど、俺達の悪口は一言もいわなかったし、怖がったりすることもなかった。

 すごくきれい顔の、すごくいい人だ。


 陸に案内されて、葉と合流した。


 二人は顔を見合わせていい争いをしていた。


 けど、葉は本当に嫌いな人には話しかけることすらしないってハナから聞いてる。

 なんだかんだいいながら嫌いじゃないと思う。


 奈緒と陸と別れて、歩真のクラスから行くことになった。


 歩真達に会うのはお花見以来だ。


 わくわくしながら、少しだけの不安を胸に抱えて辿りついたのは、世界的に有名な童話の元にしたコスプレ喫茶だった。


 特に驚いたのは白雪姫の格好をした蛍と、王子様の格好をした歩真。


 二人ともよく似合っていたけど、伝えるのはやめておいた。


 特に蛍は女装が似合ってるといわれても嬉しくなさそうだった。


 それなのに葉が調子に乗って、蓮に叱られた。

 まあ、痛そうだけど本気で怒ってないから大丈夫。


 歩真に案内された席は机が四つずつ向かい合ってて、憩の隣に誰が座るかでもめた。


 けっきょく、じゃんけんを勝ち抜いた葉と筧が隣に座った。


 憩がほっとしてるのは喧嘩せずに済んだからかな?


 先に拓哉達に決めてもらってからメニューを開いた。


 俺が大食いだから、一緒に食べると見てるだけでお腹いっぱいになるらしい。


 体が大きいから仕方ない。


 メニューには甘い物しかなかった。

 でも他にも飲食店はあったから、落胆するほどじゃない。


 おいしそうな物を選んで注文すると、拓哉が確認してきた。


 最初のお店で食べ過ぎたら、他のお店の料理が食べられなくなるから控えめしないと。


 でもなんで憩がすごく驚いているんだろう?


 歩真や他の生徒が運んできてくれたそれは量が多すぎて、俺の机だけに収まらず、正面に座る涼や隣の筧の机にまで置かれている。


 憩が甘い物を何も頼まなかった拓哉達を見て、不思議そうな顔をする。


 でも湊と蓮から理由を聞いて納得したらしい。


 驚かれるのには慣れてるからいいや。

 それより冷める前に食べよう。


「……いただきます」


 両手を合わせてから、ナイフとフォークを手に取った。


 まずは目の前のパンプキンパンケーキ。


 ナイフで一口大に切って、フォークで口に運ぶ。


 パンプキンの優しい甘さが口に広がり、噛む度にふわふわの生地がメープルの甘さと絡み合う。


 うん。すごくおいしくて手が止まらない。


 おいしい物を食べられる幸せに浸っていたら、筧が予想外の行動に出た。


「はい。憩ちゃん、あーん」


 一口大に切り分けたシフォンケーキを刺したフォークを憩に向けていた。


 憩は急停止したロボットみたいに動きを止める。


「憩ちゃん、どうしたの?早くしないと零れちゃうよ?」


 筧は逃がさないといわんばかりに熱い視線を憩に送る。


「ほら……いいこだから、ね?口、開けてよ」

 

 筧は焦らすようにゆっくりと憩へフォークを近づける。


 憩は親鳥から餌をもらう雛のように自然と口を開けて、出迎える準備をする。


 俺の正面と斜め前の飲み物が入っていた紙コップが、ぐしゃりと本人達の怒りを受けて形を歪めた。


 すぐに危機を察知した湊と蓮が二人を止めるため腰を上げかける。


 どんな理由があっても他校で暴れるわけにはいかない。

 

 けれどそれは葉のアイコンタクトで止められた。


 『俺に任せろ』と頼もしい視線を俺に向ける彼女に賭けてみよう。


 葉がクッキーを渡すようにアイコンタクトする。


 俺は素直に手の届く位置にクッキーを置く。


 すると、葉は素早く一枚を手に取って口を開く。

 

「いっちゃん、こっち向いて」


 憩は葉の声にハッとして後ろを振り返る。


「なに葉ちゃ……ふぐっ!?」


 振り向き様に憩の開いた口へクッキーを詰めた。


「ヘンゼルとグレーテルのクッキーがあるちんの一番のしなんだってよ」


 葉は悪戯っぽく笑って渦巻模様と市松模様のクッキーを指差し、ごまかした。

 

「憩、おいしい?もっと食べる?」


 俺もクッキーを食べながら、憩にクッキーを勧める。


「美味しかったです。でももう十分です。ありがとうございました」


「ん。よかった」


 俺はこくりと頷いて食事に戻った。

 

 拓哉と涼の怒りは落ち着いたらしい。


「ゆーくん、私は自分で食べられるから先にそっちを食べて。私はこっちを先に食べるから」


 筧が何かいう前に憩は白雪姫のアップルパイのお皿を手に取る。


「え、でも」


「いっちゃん、一口くれるか?なんか見てたら食べたくなってきた」


 葉がわざと筧の言葉を遮る。


「うん、いいよ。……はい、どうぞ」


 憩はアップルパイを半分に、それから一口大に切り分けて、フォークに突き刺して取っ手を葉に差し出す。


「あんがと。なかなかうまいな。ごちそうさん」


「もう!葉ちゃんってば」


 葉はフォークを受け取らずにぱくりと食べた。


 憩はちょっと顔を赤くして唇を尖らせた。

 恥ずかしかったらしい。

 

 筧は憩に見られていないことをいいことに、氷のように冷たい目で葉を睨んでいた。


 憩が食べ終わると、さすがに筧が不機嫌だった。


 でも憩が一言、二言いえばすぐにご機嫌になる。


 転校してから一か月くらいだけど、相変わらず、筧はわかりやすくて、感情の起伏が激しくて、憩だけが大切だ。


 正義と葉コンビの活躍によって、拓哉と涼の暴走を回避できました(笑)


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