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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校イベントといえば文化祭ですか!?その5

 ちょっとラブコメっぽい雰囲気があります。

 運ばれて来たスイーツとかを見て、言葉を失った。


 深く考えないようにしようと思ったけど、実際にみてみると無理だ。


「…………いっちゃん、俺は夢でも見てんのか?」


 葉ちゃんも目の前の光景が信じられないみたい。


 むしろなぜ向井様達が平然としていられるのか不思議でしかない。


 南並さんや他の生徒が運んできてくれたそれは量が多すぎて、正義さんの机だけに収まらず、正面の城野様や隣のゆーくんの机にまで置かれている。


 どう見ても一人で食べる量じゃない。


 え?ここって喫茶店じゃなくてスイーツバイキング店だったっけ?


「関元様達は甘い物が嫌いなんですか?」


 スイーツを頼んだのは四分一様を除けば、私とゆーくんと葉ちゃんだけで、関元様達は紅茶やコーヒーといった飲み物だけ。


「いや嫌いってほどじゃないんだけど、正義を見てるとちょっと、ね……」


「いつものことだけど正義の食事を見てるとこっちまで胸焼けするわ」


 関元様は苦笑を浮かべ、葉山様は優雅にコーヒーを口に運んだ。


 確かに甘い物が好きな私でもドン引きするのに、あまり好きじゃない人が見たら食欲もなくなるだろう。


 四分一様が一人でバイキングに行ったら、そのお店は赤字になりそう……。


「……いただきます」


 四分一様は私達の視線を気にせずに、ナイフで一口サイズに切り分け、フォークで口に運び、ふっと表情を緩めた。


 幸せそうに味わい、次のスイーツに目を輝かせ、また口に運ぶ。


 うん。四分一様が幸せなら量がおかしいことなんてどうでもいい。

 

 むしろこんなにおいしそうに食べてもらえるなら作り手冥利に尽きる。


「はい。憩ちゃん、あーん」


 ゆーくんの声に振り返ると、一口大に切り分けたシフォンケーキを刺したフォークを私に向けていた。


 ご丁寧に添えてあった生クリーム付。

 

 え?ゆーくん、なにしてるの?


 こんな人前であーんって……それは爆発したいリア充がやることで、一介の腐女子の私がすることじゃないよ?


「憩ちゃん、どうしたの?早くしないと零れちゃうよ?」


 いやいや!?そんな熱っぽい顔で見られると別の意味に聞こえるんだけど!?


 しないよ!?絶対にしないからね!?

 他の席からリア充爆発しろって視線が飛んでるのに気づいてないの!?


「ほら……いいこだから、ね?口、開けてよ」

 

 潤んだ目、赤く上気した頬、薄く空いた唇からは熱い吐息。

 止めにはアダルティな雰囲気。


 あれ……ここって清駿高校だったよね!?


 蛇に睨まれた蛙みたいにゆーくんから視線が外せない。


 焦らすようにゆっくりと近づいてくるフォーク。


 あぁ、このままじゃ……。

 でも、いいのか、な。


 私は自然と口を開けて、出迎える準備をする。

 

「いっちゃん、こっち向いて」


 見計らったかのようなタイミングで聞こえた葉ちゃんの声にハッとして後ろを振り返る。


「なに葉ちゃ……ふぐっ!?」


 振り向き様に開いた口へ何かを詰められた。


「ヘンゼルとグレーテルのクッキーがあるちんの一番のしなんだってよ」


 葉ちゃんは悪戯っぽく笑って渦巻模様と市松模様のクッキーを指差した。


 ゆっくりと咀嚼するとバニラとチョコレートの味がする。

 葉ちゃんが私の口に入れたのは市松模様のクッキーの方らしい。

 

「憩、おいしい?もっと食べる?」


 四分一様もクッキーを食べながら、聞いてくれました。


 しっかりと噛んで飲みこんでから口を開く。


「美味しかったです。でももう十分です。ありがとうございました」


「ん。よかった」


 四分一様はこくりと頷いて、食事に戻った。

 

 あれ?あれだけあったスイーツが半分になってる……。

 き、気にしちゃだめだ。


 くるりと振り返ってゆーくんと向き合う。


「ゆーくん、私は自分で食べられるから先にそっちを食べて。私はこっちを先に食べるから」


 ゆーくんが何かいう前に白雪姫のアップルパイのお皿を手に取る。


 艶めく狐色のパイと甘く煮詰めた林檎がおいしそう。


「え、でも」


「いっちゃん、一口くれるか?なんか見てたら食べたくなってきた」


「うん、いいよ。……はい、どうぞ」


 アップルパイを半分に、それから一口大に切り分けて、フォークに突き刺して取っ手を差し出す。


「あんがと。なかなかうまいな。ごちそうさん」


「もう!葉ちゃんってば」


 葉ちゃんはフォークを受け取らずにぱくりと食べた。


 いくら葉ちゃんでもちょっと恥ずかしい。


 まあ、でもさっきのゆーくんのよりは恥ずかしくないからいっか。

 

 それからは深く考えずにじっくりと堪能した。

 

 注文したものはどれもお店のものと同じくらい美味しかった。


 食べ終わると、なぜかゆーくんが不機嫌だった。

 

 うーん。二人でシェアして食べるのは嫌だったのかな?

 

「ごめん、ゆーくん。でもゆーくんのおかげでおいしいものを二種類も食べられて嬉しかったよ」


「憩ちゃん、それほんと!?」


 不機嫌だった顔はどこへやら。

 

 両腕を掴まれたかと思ったら、ぐっと顔を近づけてくる。


「う、うん。そうだよ。一人だったらどっちかしか食べられなかった。だからありがとう」


 驚きながら、なんとかそういえば、ゆーくんはふにゃんと破顔した。


「憩ちゃんに喜んでもらえたならいいや」


 ゆーくん、その幸せそうな笑顔は反則だと思う。


 あんまりにも綺麗だから、教室中の視線を独り占めしちゃってるよ。


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