戦の前の日常
宇宙船ジョンでの生活は予想以上に快適だった。
結局ジョンで過ごしながら登校日を迎えた。
「じゃあ行ってくる」
美蘭に一言かけてジョンを出た。
あれから僕らは無意味に意気投合し仲良くなった。
人間が仲良くなるのにドラマなんて必要ないらしい。
通学路が非常に懐かしく思える。
いや、この三日が濃すぎただけかな?
まさか宇宙人に拉致されて、奴隷にされかけたと思いきや奴隷だ出来て、家を追い出され、家を作って壊した。
あぁ、なんてゴールデンウィークなんだ・・・・・・。
まあいい。
全て終わったことだし。
でも、奴隷って呼び方が気に食わない。
もっといい言葉があると思うけどな。
「ん?なんだ啓、今日は珍しく一人で登校か?」
同じクラスの山田太郎正直鬱陶しい。
僕の通う高校と苗未のか通う中学は正面どうしだから普段は一緒に登校しているのだが、今回は苗未が恐ろしいのでやめておいた。
「悪いか?」
「いやいや啓君。君がいるせいで俺たち男子は苗未ちゃんに近づくこともできなかったんだぜ。それが今日はない。これつまりチャンス!」
「今の苗未には近づかない方がいいぞ?」
「へ?」
そう言っていると苗未は一人で登校していた。
その周りには誰も近づかない。
まるで台風の目って感じだ。
「なんか苗未ちゃん今日は笑顔が怖いんだけど何したんだ?なんか近づける感じじゃない」
「まあ・・・・・ね・・・」
生返事で返した。
本当のこと話すわけにもいかないしね。
そこに勇気ある男子生徒が苗未に近づいた。
あれは中学生か?
「川島〜今日放課後一緒にカラオケ行かない?」
誘われた苗未はというと僕を見ていた。
そしてそのままにっこり笑って、
「ごめんね。今日はやることがあるからまたの機会に」
そう言うと僕の方に歩いて来て、
「あら、川島先輩おはようございます。
ご気分はいかがですか?」
すごい怒気を込めた一言だった。
冷や汗が止まらない。
「放課後お話があるのでうちに来て下さいね」
それだけ言って先に行ってしまった。
その時の周りの静けさは異常だった。
「啓お前本当に何したんだ?」
教室に入ると太郎が話しかけてきた。
「あそこまで怖い苗未ちゃん初めて見たぞ?」
「いろいろあったんだよ・・・・」
頭の中にはそのいろいろが浮かぶ。
「なんで遠い目してるんだ?」
そこで担任が入ってきたので話が中断された。
僕の今の状況を聞いて彼は何を思うのだろうか?
授業は存外早く終わった。
まあ大体ゴールデンウィーク明けはテストばかりだから時間は早く流れる。
存外早く放課後になった。
苗未に家まで来いと言われているのだが僕は未だに教室にいた。
「面倒だな〜」
なんで自宅を締め出されないといけないんだろうか?
でも考えればハーレムアニメの主人公宅には大抵家族がいない。
きっとこういうことが起こるのを危惧してるのだろう。
「何が面倒なんだよ?」
太郎が近づいてきた。
「これから苗未の相手だ」
「あ〜。まあ、頑張れ!お前ならなんとかなる。根拠はないけど」
「明日僕が来なかったら死んだと思ってくれ」
「おう、苗未ちゃんは任せてくれ」
「まず僕の死を嘆いてくれ」
「面倒だな〜」
さて、行こうか。
僕は太郎を無視して華麗な回れ右を決めて教室を出ようとする。
「無視するな〜」
何も聞こえませんでした。
さよなら。
僕は我が家という魔王城へ向かった。