第30話 ベル=ロッコ
第30話 ベル=ロッコ
次の日から、私は練習に参加した。
体を動かしていると、嫌なことも忘れちゃう。
入ってよかったかも。
部員の人たちとも、すぐに打ち解けて私は友達がたくさんできた。
私の初の大役は、3月の3年生の追い出し会でのマーチング披露時と決まった。
それから、一月経った。
追い出し会を1週間後に控え、
第二グラウンドで講堂のステージを見立てた20M四方のマス目に、
30名ほどの部員が入り、練習をする。
私は、指揮棒と動きで、動きにアクセントをつけるのが役目だ。
最後に指揮棒を高く投げ、バック宙しながら指揮棒をキャッチし、
敬礼すると、パチパチと拍手が聞こえた。
見ると、宮元くんがグランドに来ていた。
「すごいじゃん。めちゃ決まってたよ」
「そう? まあ、自分でもすごいって思うんだけどね。アハッ」
私がいたずらっぽく笑うと、宮元くんもあははと笑ってくれる。
時々、こうして練習を見に来てくれると、吹奏楽部の女の子たちは、
すごく羨ましいといってくれる。
でも、好意はありがたいけど、どうしても付き合う気になれない。
私は、宮元くんへの返事を延ばし延ばしにしてる。
はっきりと断って、宮元くんに居なくなられるのは嫌だという理由だ。
私は、自分勝手な女だ。
「もう終わりだろ? ちょっと寄り道していこうよ」
「うん。行こうか。ちょっと、着替えてくるね」
宮元くんと、駅前の喫茶店に行く。
二人で歩いていることが多くて、
最近は宮元くんと私が付き合ってるって思ってる人も多いみたい。
そろそろはっきりさせないと。
喫茶店に入り、テーブル席に着くと、宮元くんがバッジを見せてきた。
ネオ教会のバッジみたいだけど、金色だ。
「これね、幹部のバッジだよ。在学中に幹部になれたのは、僕が初めてさ」
「うわー。すごいねえ」
宮元くんは、少し不満気な顔をする。
「あーあ。すごいって思ってないでしょ?
まあ、破壊神の紗季ちゃんにとっちゃ大したことじゃないだろうけどさあ」
「そ、そんなことないよ。すごいって思ってるよ。ホントだよ?」
「本当にぃ? だったら、色いい返事をしてくれてもいいのになあ。
この間のバレンタインも何か、義理チョコって感じだったし。
ま、それはしばらく待つとして、
ベル=ロッコさんとの会食そろそろいいよね?」
一度はいいと言ったものの、目を潰した相手と会うのは気が引けて、
私は、会食を色々と理由をつけて断っていた。
ロギアンとの関係の手前、
ネオ教会の人とは正式に会えないと言っていたけど、
つい先日、ロギアンのサンドル委員長とネオ教会のベル=ロッコが、
笑顔で握手している写真が新聞に載っていた。
人材交流を図るとかなんとか。断る口実には、もう使えないわ。
「う、うん。でも、私と会っても、多分がっかりするだけだと思うよ。
何もわかってないから」
「まあ、破壊神としてのイザベロス=シオンと会いたいっていうのは、
表向きで、ホント言うと俺の夢中になっている女の子を、
一目見たいって言ってんだよね」
「え? 私のことどんな風に言ってるの?」
「そのままだよ。僕が交際を申し込んでるけど、
返事を先送りされてるって言ってる。ベル=ロッコさんは、
僕の親代わりだからね。
うまくいくかやきもきしてるみたいだよ」
うーん。ますます、気まずいわ。
目を潰した相手が、可愛がってる後輩の言い寄ってる相手って知ったら、
激怒されそう……。
私が断る口実を考えていると、横山くんは携帯を取り出し、
どこかにかける。
「あ、宮元です。はい。OKもらいました。はい。今度の土曜で。え?
統一政府にいく用事が? キャンセルしてくれるんですか?!
ありがとうございます!」
宮元くんは、電話しながら笑顔で頭を何度も下げる。
まずいこれ、電話相手ベル=ロッコだ。
どうしよう。もう断れないよー。
電話を切ると、宮元くんは笑顔でニコリと笑う。
私は、愛想笑いを返すことしかできなかった。
土曜日となった。
朝から気が重い。
それに、会食に行けるような服を私は持っていない。
仕方ない。制服で行こう。
私が赤いブレザー姿で、廊下に出ると練習から戻ってきた桜と、
ばったり会った。
「あら。結局、制服で行くことにしたの?」
「うん。だって、会食に行ける服なんてもってないしさ。
今度、なんか買うわ」
「そうよー。だいたいあんた、統一政府からの話も断ってるでしょ?
ここに留まるつもりなら、会いに来るのには会うなり、
こっちから出向くなりしないと。
あいつらは、破壊神のあんたがどんな考えなのか、
不安でしょうがないんだからさ」
「それは分かるんだけどさー。なんか偉いさんと会うとか、
堅苦しいの苦手なのよ」
「私に任せっきりじゃなくて、そういうのにも慣れなさいよ。
今日もいい練習と思って、気楽に行ったらいいわ。
あんたをどうにかできるのなんて、この地上に居やしないんだし。
まっ、頑張りなさいよ」
桜は、そう言うとひらひらと手を振りながら、去っていった。
私は、ため息をつきながら、階段を降りた。
寮の門前に、リムジンが止まっている。
そのそばには、宮元くんが立っていて私に気付くと、手を振ってくる。
「やあ! 待ちわびたよ。うわっ! 今日も綺麗だー」
宮元くんは、手で顔を覆って、おどけて眩しいという仕草をする。
私は、クスッと笑ってしまう。
「昨日も会ったじゃないのー。もう恥ずかしいから行こう。早く」
リムジンに乗り込み、都市高速に乗り10分も走ると、
ネオ教会の支部が見えてきた。
うーん。最初に謝った方がいいだろうか?
それとも、気付かれないだろうか?
どうするのがいいかと迷っているうちに、
車はネオ教会のビルの前についた。
げっ。ベル=ロッコが笑顔で出迎えてるー。
もう、逃げられないよー。
宮元くんが、ドアを開け、車内の私を笑顔で見る。
えーい。行っちゃえ!
ドアから出ると、ベル=ロッコが笑顔で近付いて来た。
私は、緊張で顔がこわばってしまう。
ベル=ロッコは、おおっと言って、よろよろと後に下がる。
うわっ、もしかして目玉を潰した相手って気づかれた?
「こんな綺麗なお嬢さんだったとは。宮元! お前、
見る目があるじゃないか! アハハハハ!」
私が、キョトンとしていると、ベル=ロッコはささっと言って、
ビル内を先導する。
「すみませんな。わざわざお越しいただくなんて。
こちらから出向くのが礼儀なのに」
「いえ、私の居る寮って古いですし……」
「それにしても、あなたは素晴らしい!」
「え? 何がですか?」
「私はね、常に変革を求めておるのです。破壊神なのに、
人間界に溶け込もうとしているあなたは、魔神の改革者だ。
あ、魔神なら改革神か。アハハハハ!」
「いえ、そんな……。私は、人間として育ったので……」
「存じてますよ。忍びに育てられ、暗殺者として働いていた。
違いますかな?」
「え、ええ」
ベル=ロッコは、眼帯をしている方の目を指で啄く。
「そして、この目を潰してくれた。そうですよね?」
「は、はい。すみません……」
私が頭を下げると、ベル=ロッコは豪快に笑った。
そして、私の肩に手を置いた。
「それは、あなたの意思ではなかった。そうでしょう?
それに、私は目玉一つをいつまでも根に持つような小さい男ではないですよ」
その言葉に、私はホッと胸を撫で下ろす。
知ってたんだ。私が襲撃犯だって。
「本当にごめんなさい。そう言ってもらえると、気が楽です」
「いやいや。礼を言いたいのは、こちらですよ。
目を潰されたのも何かの縁でしょう。おかげで、
あなたにこうして会うことができた」
宮元くんが、急かしてくる。
「ベル=ロッコさん、早く会食場に行きましょうよ。お腹がペコペコです」
「全く少しぐらい我慢できんのか? すみませんね。コイツは、
能力はあるんだが、場をわきまえないやつでして」
「いえ」
私のお腹がぐーっと鳴った。
うわっ。恥ずかしい……。
「おや? ここにも我慢できない人がいましたか? アハハハ!」
ベル=ロッコって、非常な奴って聞いてたけど、情報と随分違うみたい。
忍びの情報が間違うことってあんまりないんだけどな。
「お恥ずかしい。朝食べてないものですから」
「では、行きましょう。お口にあえばいいのですが」
長テーブルに席が設けられていて、
スプーンやフォークやナイフがたくさん並んでいる。
うわー、これ本格的じゃないの。席につくと、スープが運ばれてきた。
うーん。どのスプーンを使ったらいいんだろう……。
私が戸惑っていると、ベル=ロッコが笑顔で言う。
「いや、私もテーブルマナーは苦手でしてな。
今日は、偉いさんもいないことだし、好きにさせてもらいますぞ」
ベル=ロッコは、スプーンを置き、皿を手に取って、口を直接つけた。
一気にスープを飲むと、私にウインクする。
だんだんと私の警戒心は、薄れてくる。
この人、本当にいい人かもしれない。
それに、忍びの時みたいに警戒しなくてもいいよね。
私を殺すなんてできやしないんだし。
「私、ベル=ロッコさんのイメージが変わりました」
「ほ? もっと堅物と思っておられましたかな?」
「ええ。ネオ教会のニューリーダーって聞いてましたので」
「なーに。私なんぞ、どうということはないんですよ。
私はただ、せっかく統一政府というものがあるにも関わらず、
ネオ協会だ、魔法院だ、ロギアンだといって、民族や考え方で、
区別するのはよそうと言っているだけなのです。
それが、既得権者たちには、面白くないのですよ。
で、私を危険人物のように言うんでしょうなあ。嘆かわしいことだ」
宮元くんが、ドンと机を叩く。
「紗季ちゃん、わかっただろ? ベル=ロッコさんは、
魔族と人間の垣根をなくそうとしているんだよ。
全てのことを受け入れることで、
人間を一段高いところに進めたいって思われてるんだよ。
自分の考え以外は受け付けない奴らとは、違うんだよ!」
確かに、こんな考えを持った人に私はあったことがない。
忍びは、忍びの復権のために、暗殺や破壊工作を行っていたし、
井上学園では魔法士こそが、世界を導く存在だと習ったし、
ロギアンの人たちは、人間を蔑んでいた。
漣高校の人たちにしても、井上学園の生徒とミラノで会うと、
鋭い目になっていた。
それがどうだ。超能力者の世にしようと目論んでいると聞かされていたベル=ロッコは、
皆で手を取り合うことを願っていたなんて。
「素晴らしい考えだと思います。
ベル=ロッコさんのような考えの方と今まであったことはありません。
もし、私にできることがあったら、言ってください。
喜んで協力させていただきます」
「おおっ。そう言ってもらえと、ありがたい。
破壊神イザベロス=シオンの賛同と得たとなれば、
私の命を狙う連中もおいそれと手を出せんでしょうからな」
ベル=ロッコさんは、そう言って眼帯を指で啄いて、ウインクした。
宮元くんは、何のことかわからず、私とベル=ロッコさんを交互に見る。
「なに? 紗季ちゃんとベル=ロッコさんは、
前からの知り合いだったの?」
「おう。なんだお前、知らなかったのか?
テレパスのくせして。アハハハハ!」
「え? ホントですか? どこであったんです?」
「それは、内緒だよ。知りたければ、私の心を覗けるように精進しろ。
なあ、シオンさん。アハハハ」
私も釣られてくすりと笑ってしまう。
ベル=ロッコさんは、話題が豊富で、世界情勢から、
果ては街のパン屋さんはどこが美味しいという話まで、
楽しい語り口調で、人を飽きさせない。
最初は、愛想笑いを浮かべていた私も、
ついついそのペースに引き込まれ、自然と大笑いしていた。
こんなに心から笑えたのは、いつ以来だろう。
ホテルでの一件があった以来かもしれない。
8畳程の和室に場所を移し、こたつを三人で囲んで話していると、
ベル=ロッコさんの私の呼び方もシオンさんから、
沙樹ちゃんにいつの間にか変わっていた。
ベル=ロッコさんは、何か面白い話をすると、
私に抱きついてきたりする。
でも、いやらしい感じとか、嫌な感じは全然しない。
なんだか、ふざけあっているこの時間が、すごく楽しい。
きっと、お父さんがいたら、こんな感じがするんだろう。
「おっ。もうこんな時間か。晩御飯は何がいいかな?」
「え?」
腕時計を確認すると、時刻は20時を過ぎていた。
12時前にここに来たから、8時間以上話し込んでいたことになる。
「すいません。長居してしまって。お忙しいのに」
「いいんだよ。紗季ちゃん。宮元は、私の子供も同然だ。その彼女……、
いやまだ彼女じゃないか。
そう、親密な友達が会いに来てくれたというのに、
これ以上大事な用事などあろうはずがない。それも、
その友達がこんなに可愛い娘だったら尚更だ。アハハハハ」
宮元くんも食べていくように勧めてくる。
「紗季ちゃん、ベル=ロッコさんがああ言ってくれてるだから、
食べていきなよ」
「う、うん。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
私がペコリと頭を下げると、ベル=ロッコさんは私の手を上に、
手を重ねてきた。
暖かくて、大きな手。だんだんとその魅力に引き込まれてしまう。
「他人行儀な言葉だな。私たちはもう友人。そうだろう?」
「はい!」
宮元くんがにこっと笑う。
「ね? 来てよかったでしょ?」
「うん。誘ってくれてありがとう」
「ベル=ロッコさん、紗季ちゃんたら、
ずっとベル=ロッコさんと会うの渋ってたんですよ~」
「だって、こんなに楽しい方だなんて知らなかったもの」
それを聞いて、ベル=ロッコさんが眉毛を挙げて、ふふっと笑う。
「まあ、普通は偉いさんなんて、堅物がおおいからなあ。
私なんて、異端だよ。異端。アハハハハ!
そうそう、紗季ちゃんは、魔法院とか、
統一政府にも会ってないんだろ?
行きにくかったら、私も同席させてもらうよ?
どうだい? その方が気楽だろ?」
「え? そんな悪いですよー」
「ほら、またそういう事いう。若い子が遠慮しちゃいかんぞ。
私にしたって、他の勢力とは仲良くしていきたいって思ってるんだから。
今の機能していない統一政府ではなく、
真の意味で地上のあらゆる人々が手を取り合っていけるものを作りたいって思ってるんだから」
人種、思想の壁を超えて、みんなが協力しあえる社会が築けるなら、
こんなに素晴らしいことはない。
ベル=ロッコさんは、本当にそんな世界をつくろうとしてるんだ。
他の勢力に命を狙われたりしても、この人は決してくじけない。
片目を奪った私でさえも許して、受け入れてくれている。
なんて、大きな人だろう。
「ありがとうございます。では、お願いします」
「うん。いい返事だ。紗季ちゃんと一緒なら、
本当に世界を変えていけると私は思うよ。
そうそう、実は会わせたい人がいるんだが……」
ベル=ロッコさんが、宮元くんをチラリと見る。
宮元くんの目が鋭いものになる。髪の毛が逆立ち、
サイコエネルギーが高まってる。
「ベル=ロッコさん、あいつは、ちょっと……」
ベル=ロッコさんが、宮元くんの手を掴みじっと見つめる。
怒りの表情を見せていた宮元くんの表情が戸惑いに変わる。
「宮元、いつも言ってるだろう? 世界を変えるには、
我々が変わらねば。過去のいざこざは忘れ、許すことが大事なんだと。
それに、あの子は、お前に何をしたわけでもあるまい?」
「それは、そうですが……」
「紗季ちゃん、君の元友人が、君に許して欲しいと言ってるんだ。
ここに呼んでもいいかな?」
もしかして、横山くん? 私はドキンとして鼓動が早まる。
でも、ベル=ロッコさんの言う通りかもしれない。
許してこそ、先に進めるのかもしれない。
「はい。呼んでください。宮元くん、私なら大丈夫だから」
「うむ。いい返事だ。さすがは、破壊神だな。では、呼ぶよ」
ベル=ロッコさんが内線電話を取り、その人を呼ぶ。
横山くんと、話のはいつ以来だろうか。
でも、今なら、ベル=ロッコさんと一緒なら、
普通に話せそうな気がする。
障子がすっと開き、予想に反してショートカットの女の子が入ってきた。
入ってくるなり、私に向かって土下座する。
私は、わけがわからず少し混乱する。
「申し訳ありませんでした。お許しください」
「え? えっと、そのあなたはいったい?」
戸惑う私にベル=ロッコさんが、事情を話してくれた。
「紗季ちゃん、姫野さんだよ。君のクラスメートだったろう?
姫野さんはね、お父さんがネオ教会で働いていて、お母さんは魔法士なんだ。
彼女のお父さんとは、昔からの知り合いなんだよ。
魔力があるということで、井上学園にいっていたらしいが、先ごろ、
退学して娘が塞ぎ込んでいるとお父さんに相談されてね。
漣高校に入学したいというので、理由を聞いたら、
君の元カレと間違いを犯したというじゃないか。
彼女は、いま自分の軽はずみな行動をすごく悔いているんだよ。
どうか、私に免じて許して上げて欲しい」
姫野さん。横山くんとエッチしてた人。
私と仲のいいフリをしながら、影で横山くんとエッチをずっとしてた人。
私の心が、ざらついてくる。私の爪がずずっと伸びていく。
でも、それ以上、心は乱れなかった。
息を吐くたびに、私の心は落ち着いてくる。
深呼吸してから、土下座を続ける姫野さんに声をかけた。
「姫野さん、顔を上げて。もう何とも思ってないから」
姫野さんは、顔を上げる。
「あんなことをした私を許してくれるの?」
「うん。姫野さんだって、学校辞めたり辛い目にあったんだしね。
もういいよ」
姫野さんは、その場に突っ伏して嗚咽を漏らしだした。
姫野さんも私と一緒で、すごく苦しかったんだ。
私はこたつから出て、姫野さんの手を取る。
「姫野さんも辛かったんだね。もういいよ。全部忘れるから」
「ありがとう。坂野さん。私、私、無理矢理、横山くんに押し倒されて、
その時の映像を隠し撮りされてて、それをネタにずっと、
言うとおりにさせられてたの。辛かったの。苦しかったの。
それに、坂野さんを裏切ってることがすごく嫌だった……」
「辛かったんだね……。もう、大丈夫だから」
姫野さんに釣られて、私も涙が出てしまう。
ベル=ロッコさんが、だんとこたつを叩いた。
「しかし、その横山という奴は、見下げ果てた奴だな。
彼女の友達に手を出して、しかもゆするなどと」
宮元くんが、それに同意する。
「ええ。最初から胡散臭い奴と思ってたんですよ。紗季ちゃんのおかげで、 魔神と契約できてるし、最初から力を目的に近付いたのかもしれない」
「うむ。考えられんことではないな。井上学園に入ったのなら、
感知能力が高いということは十分考えられることだし」
「もう、いいんです。その話は止めましょ」
「うむ。そうだな。では、4人で楽しい晩御飯を楽しむとしようか?」
それから、4人でお寿司を食べた。
会話は、それまで通り楽しかったけれど、何か私は引っかかった。
横山くんが、映像をネタに人をゆするなんてことをするだろうか?
私が見る目がないのかもしれないけど、
とてもそんなことする人には見えなかった。
私の力を抑えるために、命をかけてくれていた。
横山くんが、そんな卑劣なことをするとは、どうしても思えない。
私の中で、その疑念は消えなかった。




