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第20話 カモフラージュ

第20話 カモフラージュ


 昼休みになり、桜と喫茶ミラノの向っていると、

 道行人たちが、私の方を見る。

 晒し者じゃないのこれじゃ。


「おーおー。すごいモテ方じゃないの。羨ましいわねー」


「なんか、もう怒る気にもなんないわ」


「あら。残念。あんたの怒った顔、好きなのに」


 桜が私の背中に周り、顔をくっつけてくる。


「ちょっと、桜、何よ?」


「あんた、朝のこと覚えてる? 

 私はあんたの花婿候補は、年齢、性別不問って伝えたのよ?」


「どう言う意味よ?」


「つまり、私も花婿候補になれるってこと。私のこと嫌い?」


 え? どういうこと? 桜のことは友達と思ってるけど、

 桜は、私を好きってこと? 女の子同士なのに?

 私が驚いて、顔を赤らめていると、桜がケタケタと笑う。

 もう! またからかって!


「あははは。あんたをからかうと、退屈しないわね。

 おっ。あんたの花婿候補がきたわよ」


 宮元くんが満面の笑みで、走ってくる。

 やだ。宮元くん、桜の話を本気にしてる。


「やあ! 紗季ちゃん! 俺も当然参加するよ。

 どんなやつが来ても、俺が倒す。君は誰にも渡さない」


 宮元くんの言葉に、胸が高鳴る。

 やだ、宮元くん。そんなこと笑顔で言われたら、きゅんと来ちゃうよ。


「み、宮元くん。桜の言うことは本気にしないでよ? 

 私は、そんなことする気ないんだから」


「え? ほんと? 漣高校では、えらい騒ぎになってるよ? 

 俺の他のレベル8の奴らもなんか、行くみたいに聞いてるし。

 桜ちゃん、今朝のって冗談なの?」


「いいえ。魔神コシンの名にかけて誓うわ。本当のことよ。

 私は紗季のパートナー探しを魔王様から一任されてるの。

 私は紗季に仕えてはいるけど、この件に関しては、私に決定権があるのよ」


 宮元くんの目が爛々と光り、サイコエネルギーが空中に溢れ出し、

 パチパチと音を立てる。

 どうしよう。宮元くん、本気だわ。

 私には、横山くんっていう決まった相手がいるのに。

 でも、ちょっと嬉しいって思っちゃうけど……。


「紗季ちゃん、たしかに今の俺では、君に見劣りする。

 君に比べて実力がはるかに劣っているのは、わかってる。

 だけどね、今、ベル=ロッコさんとやっている取り組みが上手くいけば、 君の横に並ぶのに相応しい男になれる。まずは、手始めに、10日後、

 集まった男どもを叩き潰すことにするよ。

 それじゃ、沙紀ちゃんの顔見に来ただけだから、帰るね」


「え? ちょ、ちょっと、宮元くん!」


 宮元くんは、笑顔で走りさってしまった。

 まずいわ。宮元くんが、本気だしたら、死人が大量に出ちゃう。


「桜、どうにかしてよ。宮元くんが、人を殺めたらどうすんのよ?」


桜は、ふふと笑いながら、手を軽く顔の前で振る。


「なに言ってんのよ? あんたは、この前まで暗殺とかしてなかったっけ? そんな人が、人殺しがいけないなんて言っても、説得力ないわね」


「そ、それは、無理にやらされてたんでしょ? 

 好きでやってたわけじゃないわよ」


「ふーん。人類皆殺しにできる力を持つ破壊神が、

 言うセリフとはとても思えませんけど?」


「もう! 意地悪ばかり言わないで、助けてよ! 

 ホントに困ってるんだから!」


「そうね。考えとくわ。でもね、紗季。あんたも、宮元くんも勝手に、

 私が集まった連中を戦わせるって思ってるけど、

 私、一度でもそんなこと言ったかしら?」


 どういう意味だろ? 

 なんか、この頃の桜は何考えてるのかわからないし。

 言葉通りに取るなら、なにか違うことをさせるってこと?


「と、とにかく、変なこと止めてよね。私、絶対そんなの嫌だからね」


「へー。じゃあ、魔界に戻るんだ。いつにする? 明日? 

 それとも明後日?」


「ちょ、ちょっと、脅迫する気?」


「まあ、いいから、10日後を楽しみにしててよ。絶対退屈しないって」


 私は、不安を覚えつつも、ミラノに行ってハンバーグランチを堪能した。


 放課後。


 桜は、私の不安を他所に、バスケ部の練習に行ってしまった。

 しょぼんとして、廊下を歩いていると、横山くんが肩を力強く抱いてくれた。


「心配すんなって! 忘れたのか? 僕は、魔神と契約してるんだよ? 

 紗季を他の男に渡すぐらいなら、魔神の力を借りて、

 全員吹き飛ばしてやるよ。それで、もし人の命を絶ったとしても」


「横山くん……」


 私は、じーんとしてしまった。

 横山くんは、私を守ってくれるって言ってる。

 私を誰にも渡さないって言ってくれてる。

 彼を信じよう。私が好きになったこの人の言うことを。


「今日は、どっか寄る?」


「ううん。今日は止めとく。

 今朝のことで、なんかみんなジロジロみてくるし。

 ね? 後で、寮にいってもいい? こっそり、行くから」


「OK! 待ってるよ」


「うん。何か、御飯持っていくね。一緒に食べよう」


 寮に戻ると、壁は綺麗に直されていた。

 さすが、忍び。仕事が早いわ。


 私は衣装ケースから服を出す。

 こうして、改めてみると私は服をあまりもっていない。


 ジーパンとか、綿パンとか、動きやすい服が数着あるだけで、

 スカートが無い。


 制服で遊びにいくのもなんか嫌だし、こういうとき横山くんに、

 可愛いいって思ってもらえる服を揃えなくちゃ。


 そうだ。今度、くの一の人にお願いして、可愛い服を選ぶのを手伝ってもらおう。

 私は仕方なく、七分丈の綿パンと、Tシャツに、

 ピンクのカーディガンを羽織って、かつらをかぶる。


 鏡の前で、微笑んでみる。

 うん。いい感じ。これなら、きっと変に思われないぞ。


 私は、寮から近いコンビニに向った。

 コンビニ入口に置いてあるスポーツ新聞の見出しが目に入る。

 『花婿探しに人間界へ!!』の文字が踊っている。


 もう、やだなあ。変なことになって。

 でも、私は横山くん一筋だもん。

 いざとなったら、私が他の候補者を倒してしまおう。

 そうすれば、横山くんが全世界公認で、私の花婿候補ね。

 ん? 花婿候補? ということは、横山くんと結婚するの?

 きゃー、やだ。恥ずかしい。

 私が、頭を振っていると、コンビニに入ってきた人が変なものでも見るように通りすぎる。

 だめだめ。こんなところで、妄想に浸っては。

 さて、何を買っていこうかな。

 私は、サラダとパスタ、サンドイッチなどを買い物カゴに入れる。

 そうだわ。お菓子とジュースも買って行こう。

 あ、デザートもいるわね。


 会計すると、6000円を越えていた。二人分だというのに、

 ちょっと張り切りすぎたかな。

 男子寮の入口の前で、一旦立ち止まり中を覗う。

 寮管さんは、またテレビに夢中だ。

 私は、さっと管理人室前をすぎ、階段を上る。

 他の男子生徒に会うのは、まずい。

 2階の様子を覗う。よし。この階は、大丈夫そう。

 私は、そのまま3階へと上る。

 廊下を歩く気配がある。

 トイレにいったみたい。

 私は、階段から首を出して3階の様子を覗う。

 よし、いまなら大丈夫そう。

 私は、忍び足で奥の横山くんの部屋へと向かい、すばやくノックする。


 ドアが開き、横山くんが、笑顔で出迎えてくれた。


「さ、入って、入って」


「お邪魔しまーす」


 殺風景な部屋だけど、なんだか安心する。

 私は、テーブルに買い物袋を置く。


「おほー。また、いっぱい買ってきたねえ」


「うん。なんだかんだ、いっぱい買っちゃった」


「じゃ、早速食べようよ。お金はいくらかかったの?」


「お金はいいよー。特待生のお金が入ったし、なんか桜の話では、

 統一政府から資金がでるとからしいし」


「ふえー。僕の彼女は、すごいんだなあ」


 横山くんが、ペロリと舌をだす。


「もう、意地悪ー」


「さ、座ってよ」


「うん」


 私が足を崩して座ると、横山くんも隣にあぐらをかいた。


「もう食べる?」


「まだ、腹減ってないよ。紗季は?」


「うん。私も大丈夫だよ」


「そか。じゃあ、何して遊ぼうか? テレビゲームとか好き?」


「うーん。やったことないのよ。教えてくれる?」


「きっと楽しいよ」


 横山くんが、小さめの液晶テレビにスイッチを入れた。

 ニュース番組で、アナウンサーが今朝の記者会見のことを流している。

 私の顔が大写しになる。


「やだなー。またやってるー。コンビニのスポーツ新聞の見出しも、

 今朝のことだったんだよ?」


「大丈夫だって。僕がバーンとやっつけちゃうからさ」


「うん。頑張ってよ。ホントに」


 解説者が、私のことを綺麗だとか、魔界のプリンセスで、

 アイドルだとか言う。

 滝学園のガルメッツさんのインタビュー映像が流れる。


『シオン様は、我らの神です。滝学園からは、私と生徒副会長のカロンがでます。

 この機会に我らの力を人間界に示します。ひ弱な人間が何人きたとて、

 命を落とすだけでしょう』


 ガルメッツさんは、後方の壁を爪で引き裂いた。

 なんてことすんのよ。魔族が余計怖がられるでしょうに。

 てか、カロンさんって、女の子だよ?

 それなのに、出るの?


「おほっ。こいつすげえ筋力だね。人狼か。強そうだ」


 そう言って、横山くんがニコリと笑う。

 でも、ガルメッツさんの爪が横山くんの体を切り裂いたら? 

 私はどうしたらいいの?

 不安な私の頬に、横山くんの手が触れる。


「大丈夫だよ。僕は誰にも負けない。紗季を守り通すよ」


「うん」


 横山くんの顔が近付いてくる。私は目を閉じる。

 唇に横山くんの唇が触れる。

 唇から、電気が全身に走る。

 横山くんの私を想う気持ちが、唇から流れ込んでくる。

 私の不安は、かき消されていく。


 横山くんが、顔を放しニコリと笑ってくれる。

 私は、少し恥ずかしくて、少しうつむきながら、笑顔を作る。


「髪に触ってもいい? 紗季の髪、サラサラしてて好きなんだ」


 私はかつらを外して、髪をくるりと指で触る。

 横山くんの手が、私の髪を撫でる。

 すごく気持ちいい。なんだろう。この穏やかな気持ちは。

 いま、この時が、ずっと続いたらいいのに。


「真っ赤で、すごく綺麗だよ。夕日みたいだ」


「ホントに? 私は、なんか変な色で嫌なんだけど」


「そんなことないって。個性的で、すごく素敵だよ」


「うふふ。ありがと」


 横山くんが、くんくんと髪の匂いを嗅いでくる。

 吐息が、耳にかかってくすぐったい。


「やだ、もう。そんなにしたら恥ずかしいよ」


「だって、いい匂いだよ。紗季の匂い、すごくすきだ」


 横山くんの手が、私のウエストに触れる。

 私は、ビクンと体を震わせてしまう。


「ご、ごめん」


 私は、私の体から放れた横山くんの手を取って、ウエストに持っていく。


「ううん。びっくりしただけ。触って。嫌じゃなければ」


「嫌な、わけないだろう? 直に触れてもいい?」


 私が頷くと、横山くんがTシャツをまくって、手を入れてくる。

 暖かい。横山くんの体温を直に感じる。


「すごくウエスト細いね。力を入れたら折れちゃいそうだ」


 横山くんの手が上に上がってくる。私の心臓は高鳴っていく。

 彼の手がブラの後を撫でる。


「よ、横山くん……。私の、む、胸みたい?」


 横山くんが、ごくりと唾を飲み込む。私の目をじっと見つめてくる。

 私は、恥ずかしくて目を伏せてしまう。

 ああーん。なんで、変なこと言っちゃってるんだろう。

 でも、でも、桜が言ってた。

 封印がちゃんと働いてないのは、私が横山くんとエッチしてないからだって。

 だから、横山くんとエッチしてしまえば、完全に私は力を制御できるようになる。

 そうすれば、この変な騒ぎも収まるに違いない。

 それに、それに、横山くんになら、あげてもいい……。


「は、は、外すよ……」


 横山くんが、ブラのホックを外そうとブラを手で引っ張る。

 ドキドキする。任務で胸を見せたことはあったけど、その時は、

 こんなに胸が高鳴らなかった。

 こんなに緊張しなかった。こんなに期待に包まれなかった。

 横山くんは、息を荒くしながら、一生懸命にブラを外そうとしてくれている。

 私は、その手を握って止める。横山くんの手は震えている。


 自分の手を後に回して、ブラを外す。私の手も震えてる。

 カーディガンを脱ぎ、続いてTシャツを脱ぐ。

 横山くんが、私を凝視している。すごく恥ずかしい。でも、嬉しい。

 横山くんが、私を求めてくれることが嬉しい。

 いま、横山くんは、私だけを見ている。

 私の体だけを見てくれている。

 彼を独占できていることが、すごく嬉しい。

 私はブラを取って、手で胸を隠す。


「なんだか、やっぱり恥ずかしいな。私、胸小さいから、がっかりしないでね」


「し、しないよ。す、するもんか」


 私は思い切って、手を下に下ろす。

 怖くて、恥ずかしくて、嬉しくて、私は目をつぶってしまう。

 横山くんの視線を感じる。私の体をじっと見ている。

 熱い視線を、注いでくれている。

 目を開けると、横山くんが見たこともないぐらい真っ赤な顔をして、

 鼻血をだらだらと垂らしていた。


「きゃっ。横山くん! 鼻血でてるよ!」


「うおっ。刺激が強すぎたよ」


 横山くんは、上を向き、鼻を手で押さえる。

 私がテッシュを渡すと、鼻につめた。

 そのあいだも、私をちらちらと見てくる。


「綺麗だ……。すごく綺麗だよ。こんな綺麗な胸、今までみたことない」


「嘘。こんなに小さくてがっかりしたでしょ?」


「がっかりなんて、するもんか」


 横山くんが私を抱きしめる。横山くんの手が私の胸に触れる。

 ビリビリと胸から電気が流れる。

 胸が感じた心地よさを全身に伝えてくる。

 ジーンとした快感が、体を駆け巡る。


「あん……」


 やだ。なんか、いやらしい声が出ちゃった。

 私はびっくりして、手で口を塞ぐ。


「き、気持ちいい?」


「う、うん。こんなに胸が気持ちいいなんて知らなかった」


 横山くんの指が私の乳首に触れた。

 体がびくんと波打ち、衝撃が体を突き抜けた。


「ひゃん!」


 私は、びっくりして、横山くんの手をどけて、手で胸を隠した。


「え? 痛かった?」


 自分の手で、乳首を触ってみる。今の衝撃の余韻が残っている。

 ジンジンとして、硬くなってる。まるで自分の体じゃないみたい。


「ち、違うの。なんか、すごく気持ちよくって。びっくりしたの」


「僕もすごく気持ちよかった。柔らかくてすべすべして、

 こんなに気持ちいいものを触ったの初めてだ」


「真顔で言わないで、恥ずかしいわ」


「まだ、触ってもいい?」


「う、うん。あのね、横山くん。恥ずかしいから一回しか言わないよ」


「な、何?」


「私、横山くんになら、あげてもいい……」


 横山くんが、真剣な顔で私を倒してくる。

 私のズボンのベルトを外し、ホックを外す。

 ついに、しちゃうんだ。横山くんと。

 横山くんが、ズボンを脱がす。

 横山くんが、私の腿を撫でる。


「あのさ、け、経験ないから、上手くできるかわからないけど……」


「私もないよ……。だから、優しくしてね」


「紗季! 大好きだよ!」


 横山くんが、私をぎゅっと抱きしめる。

 幸せ。こんなに幸せな気分になれるんだ。

 好きな人と、エッチするってこういう事なんだ。

 クラスの娘が、話しているのを聞いた時は、

 なにいってんだろ? ってピンとこなかった。

 でも、今ならわかる。

 彼女もきっと、こんな幸せに包まれたんだ。


 横山くんが着ていたスウェットを焦りながら脱ぐ。

 もう。そんなに焦らないで。

 私は、もうあなたの物なんだから。


 横山くんが、ズボンも脱いでパンツ一枚になる。

 私とおんなじだ。きゃっ。股間が盛り上がってる。


「あの、横山くん。恥ずかしいから電気けして」


「え? う、うん」


 私は立ち上がり、ベッドに横になる。

 横山くんが電気を消す。


 私の横に横山くんが来て、自分のパンツを脱いでいる音がする。

 私は今から訪れるであろう、その瞬間を待つ。

 上手くできるだろうか。いや、上手くとかそういうことは、

 考えず、全身で横山くんを感じよう。

 体の反応に、自分の身を委ねよう。


「あ……」


「どうしたの?」


「アレ持ってないや」


「アレ?」


「ちょっと待ってて! 持ってる人知ってるから、もらってくる!」


「え? 横山くん、ちょっと」


 横山くんは、ズボンをバタバタと履くと、ドアの外に走り出てしまった。

 ああん。もうちょっとだったのに。まあ、いっか。待ってようっと。

 あれ? じっとり湿ってる。やだ、下着まで濡れちゃってるわ。

 はしたない子って思われちゃうかな。

 しばらく待っていると、廊下から話し声が聞こえてきた。


『誰よ? 俺がツラ拝んでやるって』

『止めてください。頼んますよ』

『まさか、1年の桜井じゃねえだろうな? 

 この前、ラブレターもってきてたろ?』

『ちょっと、江藤さん、お願いしますって』

『いいから、顔見させろよ』


 私は、びっくりして、布団を頭からかぶる。

 どうしよう。部屋に誰か来ちゃうの?

 この格好はまずいわ。横山くんが退寮になっちゃうかも。

 わたしが、カーディガンを急いできていると、ドアが開けられた。

 体操座りのまま、布団を身体にかけると、電気が点けられた。


「こんばんは。お嬢さん、わりーね。邪魔して……」


 部屋に入ってきた男性の顔が固まる。

 後にいた、横山くんを見る。


「江藤さん、顔見たでしょ? もう、出てってくださいよ。お願いしますよ」


「おまっ! これ、テレビでやってた破壊神じゃねえか!」


「そ、そうですよ。僕の彼女ですよ」


「バカ! 何言ってんだ! 下手したら、お前殺されるぞ!」


「いや、紗季はそんなことしませんって」


 江藤さんは、部屋に横山くんを入れると、ドアを閉めた。


「えっと、シオンさんだっけか? あんたも聞いてくれ」


 部屋に入ってきた時のおちゃらけた感じが消え、

 江藤さんは、真剣な顔をしている。


「いいか? 彼女は魔神だ。それも、最上級の力を持ってる」


「ええ。それは知ってますよ」


「2年の奴らは、お前らが付き合ってるって言ってたけど、

 俺は本気にしてなかった。魔族の女は、何人もの男を虜にするのが、

 常だからな。でもな、体の交わいは本気って証拠だぞ?」


「ええ、ですから、僕たちは真剣に付き合ってますって」


「話を最後まで聞け! 

 お前は、このことがどういうことかわかってないって言ってんだ!」


 江藤さんの迫力に、私も戸惑ってしまう。


「いいか? 彼女と深い仲になるってことは、

 世界を破壊できる力をお前も手に入れるってことだ。

 彼女の魔力をお前も持つってことだ」


「はぁ」


「真面目にきけ! いいか? 

 敵がいない彼女のウィークポイントがお前ってことだ。

 正面切って、彼女を倒せる奴なんて、この世には存在しない。

 彼女は、誰にも縛られず、自由だ。

 しかし、お前を誘拐したらどうなる? 

 彼女を意のままにするために、お前を殺すと脅されたらどうなる?

 彼女の力には、全世界が恐れを抱き、彼女の動向を全世界が見守っている。

 魔法院、ネオ教会、ロギアン、世界政府。

 彼女に言うことをきかせるために、あらゆる手段でお前を狙ってくるぞ。

 魔法院から、指令がでれば学校のやつだって、

 お前を狙ってくるに違いない。いつ寝首をかかれるかわからない。

 魔族の奴らは、自分たちの神を汚されたっていって襲ってくる。

 それとも、近づいてくる奴、彼女に全部殺させるか? 

 悪いことはいわない。やめとけ」


「でも、僕は真剣なんです! 紗季を本当に愛してるんです」


 江藤さんは、横山くんの肩に手を置き、じっと横山くんを見る。

 横山くんも真剣な顔で江藤さんを見る。

 江藤さんは、私の方をみた。


「シオンさん、あんたはどうなんだ? 

 あんたみたいに綺麗なら、他にも相手はいくらでもいるだろう? 

 別れてもらえないか? それともこいつが命を狙われるのをわかってて、 それでも付き合い続けるのか?」


 本当に、私と付き合っていたら、横山くんが危ないの?

 もし、そうなら、できない。

 私は、彼の命を危険にさらしてまで、一緒にいたいとは思わない。


「私は、その……」


 それ以上、何もいう事ができない。

 本当は、横山くんと別れたほうがいいんだろう。

 でも、私は彼を失いたくない。

 私は、唇を噛んで下を向くことしかできない。


「横山、やりたいんなら、俺が誰か紹介してやる。

 人間の女で我慢しとけ」


「江藤さん、やるとかやらないとかじゃない! 

 僕と紗季は愛し合ってるんだ。絶対に別れない!」


 江藤さんは、しばし横山くんをじっと見て、ふっと笑った。


「全くよー。信じられねえアホだな。

 まっ、だからお前は憎めないんだけどな」


「江藤さん、力を貸してもらえませんか?」


「あ? 俺が、可愛い後輩を見捨てるようなダサい奴に見えるか?」


「ありがとうございます! 助かります!」


「おいおい。勝手に喜ぶなよ。まだ何するとも言ってないんだからよ」


「紗季、江藤さんは、家が近所で、小さい時から世話になってるんだ。

 信頼出来る人だよ」


 私は、布団を取り、頭を下げた。


「坂野紗季です。よろしくお願いします」


「イザベロス=シオンさんだろ? 知ってるって。

 つうか、服着てくれよ。目のやり場に困るわ」


 そう言って、江藤さんは後を向く。

 私は、下が下着のままだったことを思いだし、ズボンを履いた。


「すいません。もう大丈夫です」


 江藤さんが、振り向いて、あぐらをかいて座る。

 それを見て、横山くんが同じように座る。

 私も、横山くんの横に座った。


「横山、もしかして、好きな子に告白できないって言ってたのは、

 この子のことか?」


「はい」


「そうか。またお前は、えらいのに惚れちゃったな。

 まあ、お前らしくていいけどさ。

 シオンさん、あんたにも、もう一度、確かめたい。

 こいつのことは、本気か?」


「はい。横山くんのこと本当に好きです」


「はー。破壊神にここまで言わすかね。お前も隅に置けないな。

 さて、シオンさんが本気だって分かれば、お前は狙われるよ。

 殺されやしないだろうけど、取引の材料にはされるだろうね。

 完全無欠であるはずの破壊神のウィークポイントだからな。

 でだ、横山は、今日からシオンさんの情夫の一人ってことにしてもらう。

 まずは、学校の奴らの目を欺こう。魔族なら普通のことだし、

 変に思うやつはいないはずだ。

 俺が、信頼できるやつ何人かに頼んでみる。

 もちろん、俺もその中の一人ってことにしよう。いいな?」


「江藤さん、具体的にはどうするんですか? 

 紗季を他の男に触らせたりしたくないんですけど」


「わかってるって。校内で金魚の糞みたいに連れて歩くだけで十分さ。

 ときたま、シオンちゃんを恍惚の表情で見つめればそれでOKだろ。

 シオンさんもそれでいいかい?」


「はい。ご迷惑をかけてすみません」


「いいっていいって。可愛い後輩のためだしよ。

 それに、破壊神に恩をうっときゃ、魔法院にも入りやすいだろ?」


 江藤さんが、いたずらっぽくあははと笑う。

 横山くんは、いい人たちに囲まれてるんだね。

 何だか、私も嬉しいよ。


「すみません。江藤さん。面倒を引き受けてもらって」


「気にすんなよ。お前と俺の仲だろ? 

 まあ、もっと力つけるまで、シオンちゃんと深い関係になるのは我慢しときな。

 就職決まってからでも、遅くないだろうが?

 学生で、できちゃったなんてことになったら、大変だぞ」


「はい」


 江藤さんは、いきなり息を荒げながら、目を見開き肩を怒らす。

 どうしたのいったい?


「シオンちゃん、聞いてよ。

 さっきこいつったら、こんな顔してさ、ご、ゴムありませんか! 

 緊急事態なんです! って部屋にきやがったんだよ。

 なんつう必死さだっつうの。あははは」


 横山くんが、頭をかく。耳まで真っ赤にしてる。

 うふふ。可愛い。


「江藤さん、勘弁してくださいよ~。まいったなあもう」


「さてと、それじゃお前らが付き合ってるって知ってるのは、

 他に誰がいる? この寮のやつで」


「岩井、三池、白石、三木谷、南、山崎、伊野です」


「そうか。岩井は、横山と仲いいよな。じゃあ、一人は岩井、

 三木谷は口が軽いからパスして、あとは~」


「あの、白石くんを入れてください」


「ん? シオンちゃん、白石と面識あるの?」


「はい。友達です。きっと力になってくれると思います」


「そうか。じゃあ、白石も入ってもらおう。

 俺、今から岩井と白石に話ししてくるわ。

 俺がいなくなったからっていって、続きすんなよ。二人共」


 江藤さんが、部屋を出て行ってから、私たちは笑いあった。


「えらいところ、見られちゃったね。まあ、でも良しとするかな」


「え? 何が?」


「だって、紗季のおっぱいも見れたしさ」


「もう、変なこと言わないでー。恥ずかしいわ」


「いや、マジで綺麗だったよ。さっきの紗季、可愛かった」


「横山くんったらー。きゃっ」


 横山くんが、私を抱き寄せ、頬に触れてくる。


「安心してよ。僕は簡単に死なないって。魔法防御にも磨きをかけて、

 誰が来てもやられないようにするよ」


「うん。でも、気を付けてね。

 横山くん無しじゃ、私も生きてる意味ないんだから」


 横山くんが私を抱きしめてくれる。大きな胸。それに暖かい。

 こんなに思ってくれてる人がいて、私は幸せ。


「やん」


 横山くんが、カーディガンの上から胸を触ってきた。

 もう、さっきダメって言われたばかりなのに。


「よ、横山くん、ダメだよ。さっき怒られたばかりじゃないの」


「うん。触るだけ。気持ちよくってさ。ダメ?」


「だ、ダメじゃないけどー。恥ずかしいよ~」


「いいじゃん。付き合ってるんだし。服めくってもいい?」


「ほらー。エスカレートしてるじゃん。

 そのうち、我慢できなくなっちゃうよ。もう、御終い。また今度ね」


 私が手をどけると、横山くんはうんと頷いてくれた。

 本当は、私だってさっきの続きしたいんだ。

 ずっと、横山くんに触れられていたいんだ。

 でも、わかってね。横山くん。私とエッチして、

 命を狙われるようなことになるなら、対策を考えておかないと。

 きっと、桜なら何か方法を知ってると思うわ。


 私たちが、ご飯を食べていると江藤さんが白石くんと岩井くんを連れて戻ってきた。


「こいつらには、俺から話しといたから。

 明日から、シオンちゃんの周りをうろつくぜ。

 しばらくはこれでごまかしきくだろ。そのあいだに、

 何か対策考えようや」


「ごめんね、白石くん。岩井くん。変なお願いしちゃって」


「いいって。坂野さんのためなら、たとえ火の中、水の中ってな。

 なあ、白石」


「う、うん。僕も頑張るよ。変な奴らがよってこないように警戒しと……」


 あれ? どうしたんだろ。突然、白石くんが固まっちゃった。

 白石くんの視線の先をたどると、私のブラが落ちていた。

 私は、焦って背中に隠す。


「な、なんでもないのよ。気にしないで」


 白石くんが、顔を天井に向けて、鼻を押さえた。

 ぽたぽたと鼻血が流れる。


「あー、もう童貞どもはこれだから! ほら、もう挨拶すんだら行くぞ。

 二人の邪魔なんて野暮な真似は、俺の専売特許だ」


「ちょっと、江藤さん、なんすかそれー。

 俺、坂野さんとクラスメートなんですからー、

 もうちょっと会話を楽しみたいですよー」


「いいから、こいって。ほら、白石も鼻血を洗面所で洗え。

 じゃ、シオンちゃん、また明日ね。

 横山、俺たちに、今度なんか奢れよ。じゃ」


 ドアが閉められ、3人の足音が遠ざかっていく。


「横山くん。素敵な人たちね」


「うん。そうだね。僕にはもったいないぐらいの友人たちだ」


「あーあ。でも、失敗しちゃった」


「何が?」


「白石くんに下着見られるんだったら、

 もっと可愛いのしてくればよかった」


「ちょっと、僕以外に見せるの止めてくれよ」


「じゃ、横山くんに見てもらうように、可愛いの買っとくね」


「うん。期待してるよ。でもさ、やっぱ生乳の方が僕は好きだけどね」


「もう、エッチ。でも、大好き……」


 私は横山くんにキスして、抱きしめてもらった。 

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