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「シャロン・・・」


優しく自分を呼ぶ声でシャロンは目をあけた。


「・・・・」

全身が火のように熱い・・・

シャロンは熱に浮かされながら必死に目の焦点を合わせようとしたが、自分に話しかけている声がルイであることをわかりつつもルイの顔を認識することが出来なかった。


「ルイ・・・」

「大丈夫かい?」


朦朧とする意識の中で自分の手を包み込むルイの手が心地よくシャロンはまた目を閉じた。

「きょうこう・・は・・」

「大丈夫。さっき捕まえた・・・」


目を閉じた闇の中でルイの声が心地よく響く。


「もうすぐ全部終わるよ・・・もうすぐ一緒に帰れるよ・・・」

「ルイ・・・」


シャロンは目を閉じたままルイの手を握り返した。

ポタポタと自分の手に落ちる水滴がルイの涙だと気づき、シャロンは弱弱しく笑った。


<・・いつもそう・・・ほんとに泣き虫なんだから・・>


自分の弱さを隠そうともしないルイのことが嫌で仕方なかった・・・

強さを追い求めようともしない惰弱な人間だと思っていた・・・

でもいつも自分はその優しさに甘えて救われていた・・・


「ルイ・・・」

シャロンはもう一度目を開いた。

今度は目に涙をいっぱいにためているルイが見えた。


「お願いが・・・あるの・・・」

「・・・?」


一言一言紡ぎだすたびに全身に激痛が走る。

しかしシャロンはそれをルイに悟らせないよう微笑んで見せた。


「もし・・・わたしが・・・しんだら・・・」

「シャロン!?」

「ルイ・・・きいて・・・」


動揺するルイの手をシャロンは懸命に握り返した。

この瞬間まで考えてもいなかったこと・・・

でも今は自分がルイに伝えるべきことがしっかりわかる・・・


「わたしが・・しんだら・・・」

「君は死なない!」

「ルイは・・・レオナと・・・けっこん・・・するの・・・」

「!!」

「きっと・・むこうから・・このはなしを・・・いってくる・・から・・・」


シャロンはルイの後ろにたたずむもう一人・・・レオナの気配を感じていた。


「これで・・・もう・・・せんそうは・・・」

「シャロン!僕は君と・・・」

「わかってる・・・もしも・・・の・・話・・・」


シャロンは笑顔を浮かべてルイを安心させようとしたが、うまくいかなかった。

<・・だめ・・・泣いては・・>


そう思えば思うほどシャロン自身も涙を止めることが出来なかった。

感覚でわかる・・自分は恐らく生きられない・・・


この優しい青年と一緒にいられない悲しみよりも、自分の死でまた消えない悲しみを背負わせることが辛かった。

何故もっと早くからこの青年のことを理解し寄り添ってあげられなかったのか・・・

自分の愚かさが呪わしかった・・・


「レオナ・・・」

「・・・・」

「お願い・・・ね・・・」


朦朧とする意識の中で、もう一つの手がシャロンの手に重なった。


これでいい・・・


シャロンはまた眠りに落ちていった・・・






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