転機
次々と降り注ぐ矢の雨に教皇軍は一気に算を乱し、混乱に陥った。
その横合いから軽装騎兵の一軍が、獲物に襲い掛かるごとき獰猛さで襲いかかった。
「!!」
レオナは呆然とその様子を見やった。
<....想いが通じた...>
「勝機!」
すかさずカインは血に濡れた黒剣を振りかざし叫んだ。
「ミルディア軍は我らの味方だ!正義は我らにあり!」
カインの叫びは不死騎団の士気をあげるには十分だった。
「ちっ!」
教皇軍を指揮していたミハイルはさすがに不利を悟ったらしく大きく馬を後退させた。
そのミハイルの前にしなやかな豹のようにミルディア軍第六天魔王キーナが立ちふさがった。
「どこにいくつもりや!」
キーナの曲刀が弧を描きミハイルの首元に襲い掛かった。
ギィィン!!
悲鳴のような音を立てキーナの曲刀はミハイルの首の寸前で弾き返された。
「!!」
キーナの剣を弾き返したのはミハイルではなくレオナだった。
「邪魔する気か!?」
キーナの鋭い眼差しがレオナを捉えた。
「違うの!この人はただ目が覚めていないだけ!」
レオナ悲痛な声が響く。
<....ミハイル殿はこの前までの私と同じ...>
「お...おのれ...」
ミハイルは血走った目でレオナを睨みつけた。
屈辱が身体中を駆け巡った。忌むべき異教徒と結託する裏切り者に情けをかけられた!?
「わ...忘れぬぞこの屈辱!」
ミハイルはそう吐き捨てるとその場を逃走した。
「待たんかい!」
後を追おうとしたキーナだったが馬の脚を止めた。
彼女の前にそっと割り込んだのはルイだった。
「キーナさん、僕たちの狙いはあの人じゃない...行かせて上げましょう」
「ちっ」
背後から飛んできた流れ矢を振り向きもせず弾き飛ばしながらキーナはため息をついた。
「来たか...」
カインは静かにルイに視線を投げた。
その視線に対しルイは静かに微笑みを返した。
「遅くなってすみませんでした」
「援軍非常に感謝する」
カインは静かに頭をさげた。
「僕らは....」
ルイは困ったように微笑んだ。