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神託

大陸の中でも巨大な版図を有する大国・・・・


ゼメキア教国は、ゼネウスという唯一神を信奉する政教一致国家である。

国の統治を行うのは教皇イカロス4世、そして実質教皇の元で国家の政治を行っていたのは名門アークス家出自の大将軍カイン・アークスとその妹である衛将軍レオナ・アークスの二人である。


わずか28歳と26歳のこの兄妹は、見る見るうちに出世を遂げこの要職につくやいなや一気に版図を拡大し、その天才的な軍事手腕を世に知らしめた。


また内政においても比類なき才を見せ、ゼメキア教国はまさに隆盛の極みともいえる時代にあった・・・


「・・・・・」

ゼメキア教国の王都ベルニアの王宮の執務室・・・

カイン・アークスが内政報告を部下から受けている。

その知性をたたえた鋭い視線を書類から外さずカインは静かに部下の報告を聞き終えた。

「ごくろうだったな、これで今年の冬の食糧備蓄は問題あるまい」

「はっ、閣下の政策のおかげです」

「・・・・・・」


カインは執務室の入り口に視線を投げた。

慌しい足音とともに部屋の扉が開けられた。

「その様子だと命令が下ったようだな・・・・レオナ」

カインは入ってきた妹レオナ・アークスを見やっていった。

「ええ・・・・ミルディア侵攻の命令が下ったわ」


レオナ・アークスは美しい金髪をかきあげ興奮気味に言った。

「ゼネウスの神から神託が下った・・・異教徒の国、ミルディアを滅ぼせと」

「・・・・・・ミルディア・・・・」

カインは静かにつぶやいた。

<・・・・これで冬の食糧備蓄を一気に食い潰すわけか・・・>

カインの顔に自嘲的な笑みが浮かんだ。

「ミルディアには天魔王と呼ばれる7人の師団長あり、その下にも精鋭があまたひしめいている。簡単に滅ぼせと信託が下ったが、実際はそんなに楽な仕事ではない」

「でも神託よ?教皇様が言ってたわ。私たちにはゼメウスの神のご加護があると」

「・・・・」

カインは妹の顔を見やって少しため息をついた。同じ兄妹でもカインとレオナのゼメウス教への信奉度合いは全く違う。カインの本質は徹底した現実主義者だった。

今の国力でミルディアに全面戦争を挑んだところで、勝算は五分五分。

仮に制圧できたとしても戦争の痛手から回復するには数年かかるだろう・・・・


「教皇様!」

レオナがはっとして床にひざまずいた。カインもゆっくりとレオナに習う。

部屋に入ってきたのは教皇イカロス4世だった。

「カインよ!話は聞いたか?」

イカロスが甲高い声で言った。

「・・・・は・・・」

カインは苦々しく頷いた。教皇イカロスは驚くほど小男である。

その小男が最高位の紫の法衣を着て自分を見下ろしている・・・・

カインはため息が出る思いだった。

「神託がくだったとか・・・・」

「そうじゃ!西の異教徒の国ミルディアは呪われておる!呪われた異教徒に死の救済を与えよとのゼメウス神よりの神託じゃ!」

「しかしながら・・・・・」

カインは静かにイカロスを見上げた。

「今年の冬は厳しいものになると予想され、今からの食糧備蓄が必須・・・そんな中での遠征は・・・」

「カイン!!」

甲高い声がカインをさえぎった。となりで跪いているレオナの肩がびくりと震えた。

「何度も言わせるな。これは神託じゃ。食糧のことは心配ない。神はわれらを見捨てたりはせぬ」

「・・・・・・」

カインは小さくため息をついた。

この男に何を言っても無駄だろう。ミルディアの全土制圧を目指さず一部版図を制圧すれば納得するだろう・・・・


こうしてゼメキア教国のミルディアへの侵攻が決まった・・・・



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