『壱百壱昼寝物語』
『壱百壱夜物語』
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
「お〜い。」
「お〜い。」
誰かが呼んで居る。
霧の中を蒼い円らな瞳の
青年が歩いて居た。
「おっ、居たじゃないか。」
「ジェフ。一体何時迄俺を待たせるんだい。」
そう云ったのは片目に眼帯を付けて、
大袈裟に古びた衣装を身に纏った大男だった。
「…。」
「さあ、行こう。」
「何処へ?」
「詰まらん事を云うな。」
「…。」
男は呆気に囚われ
聞き返した。
「貴様は誰なんだ。」
今度は大男が驚いた。
「これは驚いた。
今し方、お前が云ったんじゃないか。
この大洋を乗り越えて、
世界の海を渡り歩こうとね。」
「…。」
「どうしたんだ。」
「俺さまを、おちょくるのかい。」
「儂達は、世界に誇る大海賊じゃ無かったのかい。」
男は、
そういえば、そんな気もして来た。
「よし、行こう。」
「そう来なくっちゃ。」
軈て霧の合間に
港町が現れ、
桟橋には、
五隻の大帆船が舫って居た。
「船長、お帰りなさいませ。」
ブリッジを渡ると
十五人の海の男が
待ちかねて居た。
船のキャビンでは
ランプの灯りに照らされ、
チキンの蒸し料理の
香りに
皆満足気な笑顔で
明日の出港を語り合った。
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
「船が出るぞー。」
港には大海賊船の出港を祝って
数千人の人々が
歓呼の叫びが
響き合った。
風がどうっと吹き寄せ、
真っ赤な帆が
一斉に風を孕んで
はためいた。
「者共、行くぞ。」
「おおっ。」
真蒼な海に
真朱な帆の船が進む。
七つの海を船は行く。
嵐なんぞは
恐くは無いぞ。
デッキの上では
海賊共が
アコーディオンに合わせて
踊り出す。
祝砲だ〜
雷鳴が轟いた。
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
おやおや
老婆が感心した。
またあの夢を見て居るわ。




