2 狩りの練習
狩りの場面があります。
苦手な方はご注意を……。
『そっち行ったよっ!バズ』
俺達の狩りの場は草原。
草原に生息する草食動物を主に食べるのがチーターだ。
ガゼルの群れ中にいた幼い幼体を狙って、狩りをしている真っ最中。
母のサラが、草原の中を気付かれないように屈みながらタイミングを計る。
静かに射程距離に入るまで待ってから、最初からトップスピードで勢いよく走り出した!!
俺とウィンは、母と一緒になって子ガゼルを追う!
母は俺達に狩りが出来るように、子ガゼルを1度捕まえるが、甘噛みした後にサポートに回る。
『ウィン、バズ!仕留めなさい』
『はいっ』
俺達は手負いの子ガゼルを追い回す。
俺とウィンで左右から狙う。子ガゼルも必死で走って逃げながら、俺の方へと来た!
『今だっ!バズ』
ウィンに合図を貰い、獲物をロックオンする。
来たっ!ここで飛びかかって首にガブっとそればいい!
俺は子ガゼルに狙いを定めて飛びかかり、前脚で押さえ込んで、柔らかそうな喉元に八重歯をたてるよう噛みつこうとする。
だが、今まで日本人として生きてきて、動物を自分で殺生することに、どうしても一瞬抵抗を覚えてしまった。
必死に抵抗して『助けてっ、死にたくない!』と叫ぶ子ガゼルの姿に、押さえ込んでいて力が無意識に緩む。
『あっ!』
その一瞬で子ガゼルは俺から逃げ出し、一目散にまた逃げ出した。
『バカバズっ!何やってるんだよっ!』
ウィンが俺に苛立ちを向けながらも、逃げた子ガゼルを追いかけ、全速力で駆けていく。
『ご、ごめん!』
俺も、慌ててウィンと子ガゼルを追いかけるのに意識を戻す。
ガッ!!
俺の少し先で、ウィンが子ガゼルを仕留めたみたいだ。
急いでウィンのところに駆けつけると、母も横にスッと現れた。
ズル、ドサっ!
ウィンが噛み砕いた喉元から口を離し、子ガゼルを地面に降ろす。
『ウィン、よくやったわ』
サラはウィンを労うとともに、俺に向き直る。
『バズ!どうしてあの時に仕留めなかったの!』
『そ、それは……』
俺が元日本人で、転生者な為に、殺生することに躊躇したとは、言えないな。
『はぁ、…生きていくのに、獲物を獲らないと死んでしまうの。それに、いつライオンやハイエナが獲物を横取りにくるか分からないんだから…ほら、急いで食べましょう!』
サラは溜息とともに、俺達に自然の厳しさを教えてくれる。血の匂いを嗅ぎ付けて、他の動物が獲物を横取りする場合もある。それに、草食動物も毎日狩れる訳でもない。食べれる時に、食べることが大切だ。
目の前の子ガゼルをウィンとサラが齧り付く。何とも言えない血の匂いが鼻につく。
俺はさっきまで生きていた子ガゼルを眼下に見下ろし、黙祷する。
『いただきます』
そう言ってから、俺も食事を開始する。
さっきまで生きていた命をいただくことに、感謝を込めて、チーターになってからも、【いただきます】という挨拶は必ずしている。
ウィンからは、「なんだそれ?変なの」って言われるが、そこは俺の信念だ。
生まれたては母のミルクだったが、成長するにつれて、肉を食うようなった。最初は生肉に抵抗もあったが、そこは動物補正があるのか、ちゃんと美味しいと感じる。
俺も生きていくには、生き物の命を貰う必要があると分かってはいる。
俺の狩りの成功率は、未だにゼロだ。
いつかはと思うが、まだわりきれないでいる。
食べ終わって、巣床に戻る最中、遠くから何か音が聞こえてくる。
ブロロロロローーー!!
『何の音だっ?行ってみようぜ!』
ウィンが興味津々で、辺りを見渡し、音がする方に駆け出した。
これは…エンジン音!!!!
『ウィンっ!ダメだっ!』




