第4章 ぽかぽかUI ― 温かさをデザインする
環が夜通し考えたデザイン案。
文具を愛する気持ちが、そのまま画面の中に広がります。
“買う”ではなく“手元に届く”――彼女らしい優しい発想です。
[アークシステムズ・オフィス/翌日午前]
窓から差し込む光が、白いデスクに反射している。
環はノートパソコンの前で、
何枚ものスケッチを並べながら色とフォントを調整していた。
「すごい……環さん、もうここまで仕上げたんですか?」
「昨日寝る前に少しだけ……って思ってたら、
気づいたら夜が明けてました。」
「“好きなこと”やってる時って、時間止まるよな。」
「はい。
それに、文具って見てるだけで楽しいから……
その感じをそのまま画面にしたいなって思ったんです。」
「文具の“空気”をデザインする……いいですね。」
環は照れたように笑い、モニターを向けた。
そこに映っていたのは、淡いパステルカラーのサイト画面。
背景には、やさしく滲むペンのインクを思わせるグラデーション。
ボタンは手書き風のフォントで、
“買う”ではなく“あなたの手元に”と書かれている。
「……これは、温かいな。」
「“買う”って言葉が少し冷たく感じたので、
“手に届く”にしたんです。
文具って“誰かの手で作られて、誰かの手に渡る”ものでしょう?」
「確かに……この言葉だけで、優しさが伝わりますね。」
「環らしい発想だ。
理屈じゃなくて、ちゃんと“心”で設計してる。」
「ふふ……ありがとうございます。
あと、ここ。購入完了画面に“今日のひとこと”欄を入れてみました。」
モニターには、小さな吹き出しが表示されていた。
> “新しいノートには、まだ見ぬあなたの言葉が眠っています。”
「うわぁ……これ、読んだ瞬間ぽかぽかしますね。」
「見てるだけで、やさしくなれるUIだな。」
「文具って、ただの道具じゃなくて、
“誰かの一日をちょっと明るくする魔法”だと思うんです。
その魔法を、画面の中にも残したい。」
「……まったく、うちの事務担当は詩人だな。」
「ほんとです。
“ぽかぽかUI”、この名前でプロジェクト進めましょうか。」
「えっ、それ名前にするんですか?」
「決まりだな。
“ぽかぽかUIプロジェクト”――いい響きじゃないか。」
3人の笑い声が重なり、
窓の外の風鈴が小さく鳴った。
――優しさをデザインする。
それはきっと、技術よりも心に近い仕事なのかもしれない。
文具って、人の毎日を支える小さな魔法。
その魔法を、環がちゃんと形にしてくれました。
次回、システムはついに動き出します。




