表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season8 ― あリがとうの波紋 ―小さな会社の大きなアップデート ― 日常に寄り添う設計 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season8 ― あリがとうの波紋 ―小さな会社の大きなアップデート ― 日常に寄り添う設計 ―
2/8

第2章 現地調査 ― 手のぬくもりのある職場

たまきが大好きな文具の会社を訪ねる日。

見慣れたペンやふせんの向こうに、

“人の想いが生まれる現場”がありました。

[アークシステムズの移動中の車内/午前9時半]


海沿いの道を走る車内。

助手席のたまきは、書類をまとめながら何気なくペンを走らせていた。


「環、そのふせん……またかわいいの使ってるな。」


「あ、これですか?

 “ミライ事務用品”の新作なんですよ。」


「あー!この前、僕のPCに貼ってくれてた“お疲れさま”メモも、それでしたよね?」


「そうそう、それです。

 あのシリーズ、“気持ちを伝える文具”ってテーマらしいです。」


「へぇ……たしかにあれ、もらうとちょっと元気出るんだよな。」


「文具で元気もらえるの、環さんらしいですね。」


環は笑って

「文具って、誰かの手に届く小さな“やさしさ”だと思うんです。

 便利だけじゃなくて、気持ちまで動かせるっていうか。」


「……いいこと言うな。

 今日の打ち合わせ、それそのまま使えそうだ。」


「“文具で伝わるやさしさ”か……うん、いいキーワードですね。」


窓の外では、青空の下に街の看板が見え始めていた。

そこには淡いブルーの文字で――

『株式会社ミライ事務用品』


「着きましたね。

 ……なんか、ちょっとドキドキします。」


「好きな会社の現場に行けるの、楽しいだろ?」


「はい。たぶん今日いちばんテンション高いです。」


「環さん、頼もしい。じゃ、いきますか。」



◇◇◇



[ミライ事務用品・本社ビル]


扉を開けた瞬間、紙とインクのやさしい香りが広がった。

整然と並ぶペンとメモ帳の棚。

どれも見覚えのある色と形――


「あっ、これ……私、使ってます!

 このペンも、このメモも!」


事務課主任の青木結菜あおきゆなは嬉しそうに微笑み

「ありがとうございます!

 実はそれ、今いちばん人気なんです。」


「なるほど、これが“人の温度を残す文具”か。」


「デザインにもぬくもりがあるな。

 この会社、いい風が流れてる。」


光が差し込む窓辺。

色とりどりのペン先が、まるで笑っているように輝いていた。

――“日常を支える道具”たちに囲まれたその場所は、

まるでぽかぽか邸の延長線みたいに優しい空気で満ちていた。



◇◇◇



[ミライ事務用品・会議室]


木目のテーブルの上に、カラフルなノートやカタログが並べられていた。

会議室の壁には“文具で人を笑顔に”というスローガンが飾られている。


「うちは長く、FAXと電話で注文を受けてきたんです。

 ただ、最近は人手も減ってきて……」


「オンラインショップ化を、というお話ですよね。」


「はい。便利になるとは思うんですけど……」

少し言葉を選ぶようにして、青木は続けた。

「機械的になりすぎて、“ありがとう”の気持ちまで消えちゃうのはイヤで。」


「……すごく、わかります。」

たまきは自分の手帳を開いて、

そこに貼られた“ハート型のふせん”を見せた。

「私、これを使って2人にメッセージをよく書くんです。

 仕事の内容でも、ただの“ありがとう”でも。

 それだけで、少し空気がやわらかくなるんです。」


「あ、うちの“Heart Note”シリーズですね!」

嬉しそうに笑う青木の声に、部屋が少し明るくなった。


しゅうはやさしく微笑み

「……つまり、御社の強みは“人の温かさ”だ。

 それをシステムでどう表現するかが今回のテーマですね。」


なぎが続ける。

「注文ボタンを押すだけのサイトじゃなく、

 “人の気持ちが伝わる導線”を作ることですね。」


「そんなこと、できるんでしょうか。」

少し眉を寄せながら青木が聞くと、

すぐに凪が答える。


「できますよ。」

迷いのない声。

「僕たちがつくるのは、“使いやすさ”じゃなくて、“やさしさ”ですから。」


青木は一瞬、言葉を失って微笑んだ。



◇◇◇



[事務フロア/午後]


案内されて歩く通路の先、

一枚の紙が掲示板に貼られているのが目に入った。


「……これ、なんですか?」と環が立ち止まる。


「あ、それはお客様からいただいたFAXです。」


そこには、少し滲んだボールペンの文字。


 > “このメモ帳、娘が学校で使っています。

 おかげで毎日楽しそうに宿題をしています。ありがとう。”



凪は、静かにその文面を見つめた。

「……この“ありがとう”が、消えない仕組みを作りたいですね。」


「うん。こういう声こそ、残したいですね。」


「“温かさを記録する機能”か。」

柊は腕を組み、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。

「凪、設計図のページが増えそうだな。」


「はい。でも、いい増え方です。」

少し照れたように笑い、モニター越しの未来を思い描く。


光が射す窓辺。

カラーペンのインクがきらりと光った。

――人の手が生んだ色たちは、

 これからシステムの中で、新しい“ぬくもり”として生まれ変わろうとしていた。

青木さんの机の上にあった“手書きのメッセージ”。

それを見つめる凪くんの目が、少し優しくなっていました。

ここから、システムに“気持ち”を込める物語が動き出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ