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第四話 融合の儀

 一時間の仮眠の後、ドラセナは極秘裏にローレンス城近くの放牧地に移動した。

 小さいとは言え、今から星が落ちてくる。眩い光と相当な衝撃が予想される。

 予期せぬ事故を避けるためにも、ドラセナは家臣の誰にも告げずにここに来た。

 ──ケンタウロスになった後、全てを告げれば良い。これほどの説得力はない。

 そんな思いがあった。

 満月の夜で明るいが、見上げた先には瞬く複数の星がある。サロルド軍が今この瞬間も進軍しているのが嘘のように、平穏な夜空だった。

 地上に視線を戻す。眼前の放牧地には、暗がりでも視認できるほどの馬群があった。

「ピュー!」

 ドラセナは親指と人指し指を咥えて、指笛を鳴らす。

 馬のいななきがピタリと止む。ズシリズシリとドラセナの方に何かが近づいてくる。草を踏み締めて、堂々とした足取りで傍に寄って来たのは、愛馬・トゥレネである。

 暗がりでも、漆黒の馬体からは優駿特有のオーラが滲み出ていた。

 トゥレネはこの放牧地の群れのリーダーである。いや、このウマリティ王国全体の馬のリーダーと言っても過言ではない。

 ドラセナが人間から一目置かれるように、トゥレネも馬たちからは一目置かれた存在だった。

 実はこのウマリティ王国には馬房というものがない。放牧こそが馬本来の能力を最大限に引き出す──。そんな考えから採用されている。

 バシバシッとドラセナは傍のトゥレネの首筋を叩く。トゥレネは鼻をドラセナにすり寄せながら、

「ヒヒーン」

 と、いななく。

「ヒヒーヒン」

 トゥレネのいななきに放牧地の数千頭余りの馬が一斉に呼応する。

「よし、トゥレネ。よく聞いてくれ。これから、ここに小さいが星が落ちてくる。それでお前と俺は融合して、ケンタウロスになる。人馬一体となり平和の象徴に生まれ変わる。死ぬ訳でない。心配するな」

 トゥレネはまるでドラセナの言葉を理解しているように、何度も首を上下にさせる。

「少なからず、この放牧地にも衝撃はあるだろう。すまんが、他の馬を安全な場所に避難してほしい」

 トゥレネは大きく頷く。それから、いななく。数回のいななきが馬群の各方面から返ってきた後、馬たちは四方に散っていく。

「ありがとうな、トゥレネ」

 ドラセナはトゥレネの鼻筋を優しく撫でた。


 それから一時間、トゥレネと共に夜空を見上げる時間が続いた。

 ドラセナは実は、武勇だけではなく、占星術にも長けている。だから、分かった。

「そろそろだな」

 おもむろに腰の剣を抜いて、垂直に地面に突き刺す。それから鞘を使って、突き刺した剣を中心に、魔法陣を描いていった。

 一分ほどで魔法陣は完成する。その中心にトゥレネと共に移動し、またがる。馬上で目をそっと閉じて、祈り始める。

 ──ケンタウロスに転生を。

 どのくらいそうしていただろうか? その時、閉じた目の奥で眩い光がほとばしる。

 ──蒼い。来たぞ。

 ドラセナは、カッと目を見開いて、上方を見上げる。一心同体。トゥレネもカッと目を見開き、上方を見上げていた。

 ピカッ──。遥か空の彼方で何かが光ったのはその時だ。

 蒼き光。ドラセナとトゥレネに向かってくる。どんどんその光は大きくなってくる。

 瞬く間に放牧地一面が光に照らされ、ゴーーという地を揺らす轟音が鼓膜と体に感じたこともない振動をもたらした。

 ──あと数秒ほどでぶつかる。

 まるで昼のように辺り一面は明るかった。

「準備はいいかトゥレネ⁉︎」

 ドラセナは叫ぶ。

「ヒヒーン!」

 トゥレネはいなないて応じる。

 蒼き光の球体がぶつかる瞬間、ドラセナは目を瞑り、グッと奥歯を噛み締める。

「ドラセナよ、流星に願え!」

 その瞬間、神・ディファロスの声が確かに聞こえた。

 ドラセナは天に向かって力一杯叫ぶ。

「融合! 我をケンタウロスに!」

 その瞬間、凄まじい閃光と轟音がドラセナを包んだ。体感したことのないような衝撃だった。

 ──俺は死ぬ?

 転生するのに、そんなことを考える。

 ドラセナが意識を失ったのは、それからすぐのことだった。

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