最後のあがき
「風が出てきたな、そろそろ戻ろうか」
2人で会場へ足を向けました。
少し大回りして、中庭を抜け、正面入口の廊下へやってくると、会場入口の横で、護衛騎士と今日の実行委員をしている1年、2年生の有志の面々が1人の少女と揉めていました。
「どうしたの?」
私は1番端にいた1年の顔見知りの男子に声を掛けました。
確か伯爵令息だったかしら?
「え? アンジェリーナ様。
それがエノーム男爵令嬢が中に入れろと騒いで」
「え? ユーリアさん?」
見ると取り押さえられているのはユーリア・エノームだった。
「アンジェリーナ様、助けて!
私も卒業パーティーに参加したいのに、この人達が駄目だって言うのよ」
「パーティーに参加できないの?」
同じクラスのカーラ様が私の横へ来ました。
彼女も今日は有志として、働いてくれていたのですね。
「彼女、追試受けていなくて…」
「え? ユーリアさんあなた進級試験の追試受けてないの?」
「あんなの受けてないわよ。
私だって、ちゃんと試験受けたのに、何で1人だけ追試なんてしないといけないのよ!」
進級試験で成績が悪ければ、留年や退学になるところを学校側の温情でチャンスをもらっているって、この子分かっていないのだろうか?
「だから! 学校側がチャンスをくれたのに、それを捨てたのは君だろ!
もう退学処分になったんだから卒業パーティーに出れる訳がないだろ!」
と迷惑そうに言っているのは2年のベルン伯爵令息だ。
彼は部長会でも副会長をしていた。
多分今日の責任者だろう。
それはさておき、やっぱり退学になっちゃったのね。
留年じゃなく、退学処分になったのは、多分この前の謹慎も響いていたんだろうな。
「だって! 知らなかったもの。追試を受けないと退学だなんて誰も教えてくれなかったわよ」
なんと言うか、無知って罪だな。
「知らなかったんじゃなくて、知ろうとしなかったのではなくって?
あなたは貴族として知らなければいけない事も、覚えなければいけない事も全て無視し続けた。
そのツケが回ってきたのでしょう」
「そんな事言わないで、助けてよ!
友達でしょ?」
「友達? 私とあなたが?」
「そうよ!」
「あなたアンジェリーナ様の嘘の噂を流したり、散々迷惑をかけてきて、何が友達よ!」
カーラ様が憤慨して、声をあげました。
カーラ様とは挨拶位の仲ですが、アンヌとも仲がいいから、ちゃんと分かっていてくれたのですね。
「カーラ様の言う通りよ。
あなたと友達になった覚えはないわ」
「っ! くそっ! なによ!」
騎士が皆のやり取りに気を取られて手を緩めたのをみて、すかさずアンジェリーナにつかみかかろうとしたユーリア、その時横にいたヴォルフ様がユーリアの手を掴んだ。
「なっ! 誰よ!」
「人の婚約者に危害を加えようとしておいて、誰とはよく言う」
「婚約者!?」
「そうだ。 私の婚約者に手を出せば退学どころの話では終わらせないぞ」
そう言ってヴォルフ様は、騎士の方へユーリアを突き出した。
「さようなら、ユーリアさん次の学校では、ちゃんとお勉強してね。
次はちゃんとした貴族の令嬢としてのあなたと会えることを祈っているわ」
私達はその場を後にしました。




