国王オディロンの独り言
何だか昔の夢を見た…
起きた時、エリザベスは悲しみや怒り、やるせなさが混ざりあった複雑な気分に襲われていた。
もう20年近く経ったのに心の奥底では、まだ生傷のように疼いていたのね。
この気持ちだけは一生忘れないのだろう。
「昨日ライアンの事を考えていたからかしら…
それともオディロンをお茶に誘おうと思ったから?」
どちらにせよ今日は夫と話をしないとね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
王妃宮の応接室に来る度に緊張するようになったのは、王妃が妊娠したと知らせを受けたあの時からだった。
あの時のエリザベスの私を見る目を思い出すと心が凍りつく。
あの後、サリーナによって全てが知られていたと知った時、私の心臓は1度止まったに違いない。
だけど、それっきりエリザベスはその事に触れる事はなかった。
私に向けた冷たい眼差しもあれ以来見たことはない。
私達はとても仲の良い夫婦に見えているだろう。
実際、とても良好の関係を保っている。
だが、ライアンの話になると一気に緊張感が出てくる。
あれの出来の悪さがいけないのだが、エリザベスは笑顔で毒を吐く
嫌みを織り混ぜながら、説教をする
それを見るたびに私までびくびくしてしまうのだ。
今回のファンブール公国の王女との婚約の話をエリザベスが提案した時は、正直何か企んでいるのでは?と穿った見方をしてしまいそうになったが、モーリスと話し合った結果どちらの国にとっても最良の話である事は間違いなかった。
ライアンの気持ちを考えてもラフォール侯爵令嬢との婚姻より、王女との婚姻を望みそうだった。
私はこの話を進める事にした。
エリザベスが喜んでくれた事にも安堵した。
いつしか彼女の顔色を伺っている自分がいる。
やはり私の奥底にある罪悪感からそうなるのだろう。
その彼女が次に望む事はライアンをファンブール公国に婿として行かせる事だろう。
本心を言えば、ライアンが他国へ行ってしまえば悩みの種がなくなり、平穏な日々を送れるし、そうしたい。
ただ私自身の保身のために、ライアンが生まれた事をなかった事にするようで後ろめたいのだ。
私だって父として2人の息子はどちらもかわいいのだ。
これからこの扉を開いてエリザベスと向かい合い、そして笑顔で言われる事は分かっている。
そして私は、結局エリザベスの言う通りにするしかないんだ。
きっとそれが1番いいのだから…




