悲しい過去(2)
サリーナの事よりも、酔っていたとはいえ、自分の過ちを誤魔化した夫に腹が立った。
サリーナが妊娠したことを隠すために、世継問題を出して自分が浮気をして、子供が出来た事を正当化したんだ。
多分相談された宰相が知恵を貸したのだろう。
私は2人が信用出来なくなってしまった。
ライアンは私と夫の子供として、書類上は届けられている。
今さら事実を知ってもどうすることも出来なかった。
夫達を責め立てたいけど、役立たずの王妃にその権利はなかった。
失望と悲しみの中、公務だけを淡々とこなしていった。
が、すぐに心の限界は来た。
体調を崩してそのまま寝付いてしまった。
その後、体調が回復してもまたぶり返す、食欲もなく食事を取っても戻してしまうこともあった。
1ヶ月程して、侍女がその異変に気付いた。
すぐに医師がが呼ばれて、王妃の懐妊を告げる。
エリザベスは信じられなかった。
まさか自分が妊娠しているなんて…
あれ程苦しんだ時間はなんだったのだろう。
なぜ、今になって自分は妊娠出来たのか?
そんな疑問が浮かんだが、それよりも子供を授かれた事が嬉しかった。
至らない自分を責め続ける事はもうしないでいいのだ。
陛下には自分から報告するからと、その場にいる医師と侍女には安定期に入り落ち着くまで黙っているように頼んだ。
私はすぐに妊娠の事実を言うことをためらった。
まだ夫に対してこだわっている部分があったのだろう。
そうして妊娠6ヶ月を過ぎたある日、オディロンと宰相を呼んで話をした。
数年前のあの日とは逆に私から告げられた事実に、2人とも複雑な表情をした。
そんな夫に対して私はこう告げた
「ライアンはこの子と同じように分け隔てなく育てていきましょう。
でも、あなた方が私についた嘘も、傷付けた事実も決して忘れる事はないでしょう」
「エリザベス… 私は」
「そして妊娠を告げた時、真っ先に喜んでくれなかった夫の事も忘れないわ」
私は、オディロンの言葉を遮り言った。
オディロンは真っ青な顔で私を見つめていた。
私は何も言わず部屋を後にした。




