悲しい過去
20年近く前…
ルフェーヴル王国 王妃宮の一室
「エリザベス、少しいいかい?」
夫である、オディロンは宰相のモーリスと共に王妃の部屋を訪れた。
「陛下、どうかしましたか?」
2人の突然の訪問に、怪訝な顔で答える。
「モーリスとも話していたんだが、そろそろ世継の事を考えねばならない。 私達は結婚してもうすぐ3年になる。
その間にそなたに妊娠の兆しがない事を周りの者が心配し出している」
「そ、そんな…」
エリザベスは悲痛な顔をして、うつ向いてしまった。
「すまない、そなたが1番気にしている事は知っている。
私もこのような事は言いたくなかった」
「私もお二人の仲のよさを知っていますし、このような事を進言しないといけない事が辛いのですが…」
と宰相のモーリスも顔を歪めながら言いにくそうに言ってきます。
「このまま世継が出来ないことは、この国の危機になってしまいます。
側妃様を置くのが、王妃様の気持ち的に無理ならば、陛下が世継をお作りなる事だけは、お許し願いたい」
そう言って頭をさげられた。
王妃は涙をこらえ
「子供を授かる事の出来ない私には、否と言う資格はありません」
そう言って部屋を出ていかれた。
それを見ていた、オディロンはため息を吐き出した。
「モーリス なんとかなったな」
「ええ 王妃さまには気の毒ですが、仕方ありません」
そう言って2人も部屋を後にした。
その数ヶ月後、宰相から密かに陛下に子供が出来た事を知らされた。
安定期に入った頃、王妃の自分が懐妊したと発表すると言われた。
その間に私は出産が済むまで、数人の侍女意外は接触を断つように言われ、この事実を知る身の回りの世話をするのは、宰相モーリスの妻マリアだけになった。
マリアと妊婦の振りを装い、数人の侍女たちの目も誤魔化した。
何も知らずに、私の懐妊を喜んでくれる、両親や多くの貴族、侍女たち。
皆を騙している事と、本当は妊娠出来ない惨めな自分を思い知らされている地獄のような日々だった。
ある日マリアが出産が始まったと連絡が来たからこちらも準備しましょうと言った。
そして、いつの間にか生んだはずもない赤ん坊が部屋にいる。
今思えば、よくこんな事が出来たと思う。
この後も、誰1人疑うこともなくライアンは私の息子になっていった。
この時赤ん坊の乳母になったのが、本当の母親だったと後から知った。
その娘はサリーナと言った。
ある日手紙が置かれて彼女はいなくなっていた。
自分はオディロンの侍女だったが、ある時酔ったオディロンと男女の関係になってしまった。
そのたった1回の過ちで妊娠してしまい、オディロンに許しを乞い、城を出ようと思ったが、説得されて子供を生んでほしいと頼まれた。
この数年、王妃様によくしてもらい、本当の事が言えずとても心苦しかった。
そう手紙には書いてあった。
不思議とサリーナには怒りや憎しみは沸いてこなかった。
多分、彼女も私と一緒で被害者だと思ったからだ。




