ライアンの気付き
「ライアン様、私ちょっとキャロル達に挨拶に行って来てよろしいですか?」
「ああ、構わない。
何かあったら、呼んでくれ」
アンヌリーブと別れて、ワイン片手に少し考える。
なんだろう?この気持ちは…
全く知らない女性を見ているようだった。
あれは本当にアンジェリーナなのか?
私が今まで見てきて、記憶の中にあった婚約者はどこへいったのだろう…
今日の彼女は輝くように美しく、常に笑顔で嬉しそうだった。
あんなに魅力的なアンジェリーナを初めて目の当たりにして、気持ちがざわつく。
「ライアン殿下、今日は妹の為にありがとうございます」
そこへアンジェリーナの兄のウォルターが声をかけてきた。
「ウォルターか、お前の婚約より早かったな」
「私はいいのですよ ゆっくりで」
「なぁ ウォルター、アンジェリーナはいつから、変わったんだ?」
「おや? 殿下はイメージチェンジしたアンジェリーナを見たのは初めてなんですか?
学校では見かけてませんので?」
「あ、ああ このところ会っていなかったしな…
その前は私は遠征に行っていただろ?」
「まぁ 確かにそうですね…」
なんだか、自分が言い訳しているような気分になってくる。
確かに婚約解消前から、殆んどアンジェリーナと会う機会はなく、自分からもその機会を作らなかった。
アンヌリーブがこの国に来てからは、彼女の事など思い出しもしなかった。
アンヌリーブと婚約が決まってからは、アンヌリーブがアンジェリーナと仲良くなったと何度も話題にしていたが、全く興味もなかった。
一度、変わった男爵令嬢をいじめていると噂になったが、アンヌリーブとトーマスが全くのデマだと、憤慨していたっけ…
その時もアンジェリーナの事をいいとも悪いとも思わなかった。
ウォルターが少し考えてから、
「多分、アンジェリーナの誕生日の少し前からですかね。
本人は16になるから、大人っぽくしたいし、少し興味のなかったおしゃれを勉強していると言っていたと思いますよ」
「そうか…
誕生日パーティーは出席出来ないですまなかったな。
お前から改めてアンジェリーナに謝っておいてくれ」
「分かりました」
そう言ってウォルターは離れて行った。
確か、彼女の誕生日パーティーの出席の返事を忘れていた事をトーマスに咎められて…
そう言えば、この所アンジェリーナがお昼に来ないと気が付いたんだ。
それでトーマスに聞きに行かせたら、アンジェリーナに殿下の邪魔はもうしないと言われたっけ…
あの時、遠目にいつもと感じが違って不思議に思い、何度か呼び出したが、アンジェリーナはいつも何か理由をつけて応じなかった。
一度だけ、やっと呼び出しに応じたが、その時は前と変わらず厚化粧の無愛想なきつい顔をしていた。
だから、私の思い過ごしだと思ってその後はすっかり忘れていた。
もう何ヵ月も前から、アンジェリーナは変わっていたのに…
私だけが知らなかった、気が付かなかった。
婚約解消のずっと前から、アンジェリーナは私の婚約者であることをやめたのではないのか?
だから、外見を変え私との接触を断ったのだろうか?
母上の言動や態度がふいに思い出された。
きっと全てを分かっていた母上は、もう私達を結婚させる気はなかったのだな…
なんだか、全てが腑に落ちてしまった。




